番号が移動していない11首(EJ第1284号)
12月20日(水)から、14回にわたって百人一首の謎の解明に取り組んできまし
たが、本日でその第1部は終了します。そして、しばらくしてから、続きをやりたいと
考えています。最終結論は実に驚くべき結果になります。百人一首については、図書館
の本も含めてほとんどの本を手に入れており、それらを総動員して謎の解明に取り組ん
でおります。
古今伝授が示唆した「百人一首の五歌」は、「百人秀歌」にはすべて入っています。
しかし、百人秀歌は百人一首の歌をほとんど取り込んでいますが、その順番は大きく変
動しており同じ歌でも歌番号はそれぞれ違うのです。冷泉家の場合、それでいながら、
なぜ、5首の合計が一致するのでしょうか。
もし、数を一致させる作業が百人一首と百人秀歌が作られた後で行われたとしたら、
数を一致させようとすると、かなり面倒な作業になります。しかし、最初から百人一首
と百人秀歌が一体のものとして作られているとしたら、その作業は容易です。百人秀歌
の番号の順番が大きく変わっているのは、そのためではないでしょうか。
それはさておき、そのように歌番号が変化している百人秀歌において、ぜんぜん歌番
号が移動していない歌が、11首あるのです。ほとんどの歌が移動しているのに、移動
していない歌がある――それだけできわめて暗示的です。「移動しない」ことによって、
後世に何かを伝えたい――そういう意図があるのではないでしょうか。その11首をご
紹介しましょう。
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1.秋の田のかりほの庵の苫をあらみ
わが衣手は露に濡れつつ ・・・・ 秋
2.春過ぎて夏来にけらし白妙の
衣干すてふ天の香具山 ・・・・・ 夏
3.あしびきの山鳥の尾のしだり尾の
ながながし夜をひとりかも寝む ・ 秋
4.田子の浦にうちいでてみれば白妙の
富士の高嶺に雪は降りつつ ・・・ 冬
19.難波潟みじかき葦のふしの間も
「逢はで」この夜を過ごしてよとや
20.わびぬれば今はたおなじ難波なる
みをつくしても「逢はむとぞ思ふ」
32.山川に風のかけたるしがらみは
流れも「あへぬ」紅葉なりけり
44.「逢ふことの絶えて」しなくばなかなかに
人をも身をもうらみざらまし
77.瀬をはやみ岩にせかるる滝川の
われても末に「逢はむとぞ思ふ」
84.「ながらえばまたこのころやしのばれ」む
うしと見し世ぞ今は悲しき
85.「夜もすがら物思うころは」明けやらぬ
閨のひまさへつれなかりけり
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これら11首は、最初の4首とそれ以外の7首に分けることができます。最初の4首
は季節を詠んでいる歌であり、残りの7首は「心情」を詠んでいる――すなわち、恋心
の移り変わるさまを詠んでいるのです。
恋の心情を詠んだ7首については、それぞれ解説本を参照して確かめていただきたい
のですが、一言でいうと「片想いの心情」を詠んでいる歌といえます。
ところで、百人一首には「逢う」という言葉を詠み込んだ歌があと3首あるのです。
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43.「逢ひみての後」の心にくらぶれば
むかしは物を思はざりけり
56.あらざらむこの世のほかの思ひ出に
今ひとたびの「逢う」こともがな
57.「めぐり逢ひて」見しやそれともわかぬ間に
雲がくれにし夜半の月かな
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これらの3首は先の移動しない11首中の7首が「逢いたい」「逢えぬ」「逢うこと
が絶える」「生きていれば逢える」というように、逢いたいが逢えない心情を歌ってい
るのに対し、上記3首は、「逢った後の」「逢う」「めぐり逢う」など、逢ったあとの
心情を詠んでいます。明らかに違うのです。
万葉集などを見ると、恋の歌には次の2つがあるのです。
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1.不逢帰恋 → 逢わずしてかえる恋
2.逢後別恋 → 逢ってのち別れる恋
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このように分類すると、移動しない11首のうちの7首は明らかに「不逢帰恋」であ
り、移動している3首は「逢後別恋」ということになります。とても偶然とは思えず、
定家は明らかにていねいに歌を選り分けているのです。
百人一首の歌の意味の分析については、多くの学者や研究家が挑戦しています。中で
も百人一首の成立論において新説を発表している織田正吉氏の研究は、実にユニークで
す。織田氏は、百人一首の歌は共通する言葉によっていくつかの歌群に分かれるが、そ
れらは、最終的にはすべてつながり合ってしまうと述べているのです。これらの歌群の
ひとつに「逢う」の歌群があるのです。
こぼれ話ですが、百人一首をテーマとして取り上げようとしたとき、実は最初に探し
たのはこの織田氏の本なのです。しかし、なかなか見つからず、結局、梅木氏の協力に
より、練馬図書館から借りてもらったのです。しかし、百人一首には、その織田氏でも
気がついていない驚くべき秘密が隠されているのです。以上で百人一首の第1部は終り
です。 ・・・ [百人一首/15]
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