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2007年02月27日

有機ELの光る原理に迫る(EJ第1096号)

 EJ1095号で示した有機ELの構造を再現しておきます。
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         ●背面電極(陰極)
         1.電子注入層
         2.電子輸送層
         3.発光層 ← ここが光る
         4.ホール輸送層
         5.ホール注入層
        ●透明電極(陽極)
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 光る原理を簡単にいうと、陽極から「ホール」(+)、陰極から「電子」(−)が注入
され、発光層において「ホール」と「電子」が「再結合」することによって「励起状
態」になり、元に戻ろうとするエネルギーが働いて発光する――こういう原理です。
 この「励起」という現象は、学校でいうと、中学校の理科で教えることになっている
のです。EJ1094号で蛍光灯の原理を説明しましたが、これはインターネット上で
見つけた中学校理科の学習指導要領を参照したものなのです。
 しかし、励起の話に深入りすると、話がかなり難しくなるのでこの程度でやめること
にしますが、有機分子の次の2つの状態をあらわすことばについては覚えておいてくだ
さい。
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        有機分子の電子状態安 定 ・・・ 基底状態
        有機分子の電子状態不安定 ・・・ 励起状態
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 ところで、発光層を二つの層で取り囲む5層のかたちになっているのはなぜでしょう
か。
 有機ELは、発光層には有機物質を使っていますが、発光層以外の、たとえば電極な
どには、アルミなどの無機材料が使われています。有機物の層と無機物の層の接合面は
具合がよくないというか、相性がよくないのです。たとえば、人肌と岩石を強引に接合
させようとするに等しいのです。
 有機ELのプラスの電極――陽極は、ITOと呼ばれる透明な電極を使っています。
ITOというのは次の意味です。
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             ITO=Indium Tin Oxside
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 ITOは、インジウムとスズの酸化物であり、液晶などでも使われています。ITO
は有機材料とは相性が良くないので、「ホール輸送層」との間にバッファとして「ホー
ル注入層」を入れています。そもそも「発光層」に「ホール輸送層」を加えて、2層化
するというアイデアは、コダックのタン氏が考えたものなのです。5層構造は、これを
基にして「発光層」と一体であった「電子輸送層」を独立させて誕生しています。
 これに対して陰極側は不透明であり、アルミなどの金属が使われています。これも当
然のことながら、有機材料とは相性がよくないので、やはりバッファとして「電子輸送
層」との間に「電子注入層」を入れています。
 こうすることによって、電子やホールの注入効率が向上し、それが素子の発光効率の
向上につながっていくのです。しかし、すべての有機ELが、このような5層型である
ということではないのです。実際には、材料に何を使うかによって、単層型もあれば3
層型、4層型もありうるのです。
 EJ1093号で、有機材料には、低分子系の材料と高分子系の材料の2つがあるこ
とを説明しましたが、高分子系の材料を使うときは層が少なく、低分子系の材料のとき
は、多層型になると考えてよいのです。
 ここでもうひとつややこしい話をしなければならないのです。それは、有機ELでい
う「発光」には、次の2種類があるということです。
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        1.蛍光(けいこう)fluorescence
        2.燐光(りんこう)phosphorescence
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 蛍光は、人間の目に見える可視光線です。蛍光灯しかり、蛍光ペンしかりです。しか
し、燐光は、極低温では観測されても常温では観測されることはほとんどないのです。
 さて、有機分子からは蛍光と燐光という2つの光が出てくるのですが、その割合は次
のようになっています。
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             「蛍光」:「燐光」=1:3
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 このように燐光の方が圧倒的に多いのです。人間の目に見える光が出る割合は全体の
25%なのです。すなわち、1つの電子とホールのペアから、0.25のフォトン(光
子)しか出てこないのです。これでは、あまりにも効率が低過ぎるといえます。
 電子から光子への変換効率が25%――かつてこれは有機ELの限界と考えられてい
たのです。しかし、それは、蛍光しか発しない有機材料を使う場合のケースです。
 もし、燐光を発する有機物質を使い、それに何らかの工夫を加えることによって、常
温で燐光を出すようにできれば、光への変換効率の革命を起こすことになります。
                           ・・・[有機EL/07]

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