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2007年03月07日

国と地方と企業がひとつの目標を目指す(EJ第1102号)

 日本が有機ELをテコにして復活する――このことを実現するには、基本的な条件と
して、国内に量産工場を持つ必要があります。そして、その工場で日本人が、日本の装
置を使って、日本の材料を使って有機ELを生産し、その結果、生まれた製品が良く売
れる――こういう状況が整うことが必要なのです。
 しかし、現在の状況を考えると、こういう状況が整うことは、夢のまた夢なのです。
企業は量産工場を労働賃金が安いところに作ろうとします。城戸先生のいる山形県など
は、国内では賃金が安いのですが、現在では、中国、タイ、ベトナム、フィリピンの方
がもっと安く上がるのです。そのため、国内の企業は東北地方に工場を建設するという
意識は低いのです。しかし、それでは液晶でたどった道と同じ道を有機ELもたどるこ
とになるのです。それでは、どうしたらいいのでしょうか。
 それは、国と地方(県)と企業が1つの目標に向って進むことしかないのです。とり
わけ国の責任は大きいのです。国は本当に分かっているのでしょうか。
 国は、道路建設などで土建業には多くの支援をしますが、製造業の支援には力を入れ
ていません。どうしてなのでしょうか。ものづくりは日本が世界に誇るべき伝統である
はずです。現時点で日本は、有機ELにおいて世界一の技術が結集した状態にあるので
す。有機ELを本当の意味で日本のものにする絶好の機会が、いま訪れているのです。
その事実を政府は、経産省は、きちんと認識しているのでしょうか。
 かつて半導体事業を「産業のコメ」として育てたように、有機ELについても、国が
リーダーシップを持って、「次世代の産業のコメ」として育て上げるべきです。それが、きちんとした目標のない、資金のバラマキをしているので、有機EL国家プロジェクト
に回せる予算が年間でたったの10億円なのです。話にならないのです。だから、日本
には戦略がないといわれるのです。
 地方(県)も有機EL産業誘致に一工夫すべきです。かつて青森県は、液晶産業を誘
致しようとして、面白いアイデアを提案しています。
 青森県は、陸奥湾に面した地域を工業用地として提供し、そこに青森県の負担で工場
を建設することを提案したのです。そして返済はリース形式でやるので、企業は銀行か
らお金を借りる必要はないのです。しかし、青森県は結局三重県に破れてしまいました
が、このアイデアは有機ELにも適用できるのです。
 城戸教授は、この青森方式を山形県で採用するよう県に要請しています。彼の構想は
こうです。山形県が用地を提供し、そこに有機ELの総合研究所を作ります。最近は不
景気で研究所を閉鎖する企業も増えているので、県として研究所を作ることは意義のあ
ることです。
 それに加えて県は貸し工場を建設し、それを進出企業に安く提供する。さらに、進出
企業に関しては5年間免税とし、必要な装置や機材についても県が負担して導入し、あ
とからリース形式で返してもらう――こういう方式が考えられるのです。
 山形県には、東北パイオニアの米沢工場があって有機ELを生産しています。既に述
べたように、この東北パイオニアは、有機ELの関連企業の中で群を抜いている優秀な
企業です。何しろこの工場では、パネルの量産技術において、その歩留まりは95%以
上という優秀さなのです。
 その東北パイオニアの米沢工場の道路一つ隔てた向かい側に旭硝子ファインテクノ
のITO基板の工場があり、そして有機ELのメッカともいうべき城戸教授のいる山形
大学があるのです。
 このように、山形県には、基板工場はある、量産工場はある、基盤研究をする大学が
あるのです。そこに最先端研究所ができて貸し工場があれば、確実に有機EL関連企業
が集まるに違いない――これが城戸教授の主唱する「山形有機エレクトロニクスプロェ
クト」なのです。
 この「山形有機エレクトロニクスプロジェクト」では、ディスプレイの他に、新会社
を設立して有機ELの白色パネル(照明)を量産する計画もあるとのことです。有機E
Lの白色パネルが量産されて低コストで市場に出てくると、非常に明るいので、確実に
蛍光灯を駆逐していくはずです。「線」の照明から「面」の照明に変わっていくわけです。
 そして、こういう白色パネルを中小企業が作れるような環境を整えることが第2段階
です。つまり、新会社によって白色パネルを部品として安く出荷できるようにするわけ
です。これは、究極の中小企業対策になるはずです。これによって中小企業が育ってい
くことになります。
 東北パイオニアのケースを見てもわかるように、有機ELの材料やパネルがきちんと
作れるのは日本のメーカだけです。それなら少なくとも有機ELの材料メーカだけは、
世界中からの注文殺到で発展するのではないかと誰でも考えます。
 しかし、これもかなり疑問なのです。有機ELの材料メーカのトップはあの出光興産
ですが、それ以外に20社以上の国内メーカがひしめいているのです。最近の国内メー
カは、発展しそうな市場があると、われもわれもと進出して、結局どこもかしこも利益
が出なくなってしまうのです。これでは、優秀な製品を継続して作り出していくという
ことが難しくなります。
 また、これは、「他社のやらないものをやる」という日本の企業スピリットが弱くな
ってきたことを示す証拠であるということができます。だからこそ、他社が開発したも
のであっても、安易に進出を図ろうとするのです。
 有機ELについて、主として城戸教授の著書を中心にいろいろご紹介してきました。
感じたことは、やはりこういう「ものづくり」は日本人に向いているということです。
しかし、それに国策がうまくフィットしないと、せっかくの技術が本当の意味で日本の
ものにならないのです。有機ELが、半導体や液晶の二の舞にならないよう国として、
地方として対策を講ずるべきです。           ・・・[有機EL/13]

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