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2007年03月29日

地球を回る軌道について知る(EJ第1350号)

 ロケットについてさらに詳しく知るには、地球を回る軌道についての知識が必要にな
ります。知っておいても損はないと思いますので、今朝は地球を回る軌道の話からはじ
めることにします。
 最初に大事なことですが、「軌道を回るのに動力はいらない」ということです。宇宙
空間には抵抗になる空気がないので、ロケットは動力なしで飛び続けるからです。映画
「スターウォーズ」で、宇宙船がロケットを噴射し続けているのを見ますが、推進動力
としての噴射であればそれは必要ないのです。
 もうひとつ重要なことは、「地球を回る軌道は楕円形をしている」ということです。
そのため、次の3つの数値によって軌道の性質が決まるのです。
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      1.近地点高度 ・・ 軌道の地表に一番近いところの高さ
      2.遠地点高度 ・・ 軌道の地表に一番遠いところの高さ
      3.軌道傾斜角 ・・ 赤道に対して軌道が傾いている角度
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 しかし、後で述べるように、静止軌道は円軌道であり、例外として覚えておいてくだ
さい。人工衛星がよく使う地球を回る軌道には、次の4つの種類があります。
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             1.地球低軌道
             2.静止軌道
             3.極軌道
             4.静止トランスファー軌道
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 第1の「地球低軌道」というのは、軌道傾斜角に関係なく、高度約300〜600キ
ロメートルの軌道のことです。この軌道は主として有人宇宙活動に使われます。スペー
スシャトルやソューズ宇宙船、国際宇宙ステーションなどは、この軌道を利用している
のです。
 第2の「静止軌道」というのは、赤道上空3万6000キロメートルの円軌道です。
この軌道に入る衛星は、地球を24時間で周回します。なぜ、静止軌道といわれるのか
というと、衛星が空の一点に静止したように見えるためなのです。
 静止軌道には、通信衛星、放送衛星、気象衛星など、おなじみの衛星はほとんどこの
軌道を利用しています。そのため、静止軌道は過密状態です。
 第3の「極軌道」は、軌道傾斜角90度付近を通る軌道であり、地球を南北に回りま
す。この軌道は、軌道高度や傾斜角を慎重に選定すると、地球全体をなめるように回る
ことができるので、高度700〜900キロメートル付近で地球観測衛星が利用してい
るのです。
 H−ⅡA6号機で打ち上げに失敗した情報収集衛星――軍隊のある他の国では「偵察
衛星」と呼ぶ――は、この軌道に打ち上げられる予定だったのです。
 第4の「静止トランスファー軌道」とは、地表からロケットが静止軌道に衛星を投入
するために入る途中の軌道のことです。これは楕円軌道で、その特徴は次の通りです。
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        近地点高度 ・・・・・    200キロメートル
        遠地点高度 ・・・・・ 3万6000キロメートル
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 つまり、地球に一番近いところはわずか200キロメートル、遠いところは3万60
00キロメートル――これは静止軌道と交差することを意味しています。添付ファイル
の図を見ていただきたいと思います。
 静止衛星を打ち上げるときは、静止トランスファー軌道の近地点高度に打ち上げ、あ
とは軌道に乗って遠地点高度まで行き、そこで衛星の持つロケットエンジンを噴射して
静止軌道に入るという方法をとるのです。そういう意味で静止トランスファー軌道は静
止軌道に衛星を投入するための途中の軌道――そのように呼ばれるのです。
 地球を回る軌道について、たったこれだけの知識があるだけでH−ⅡAロケットのこ
とが一層良くわかるようになります。H−ⅡAロケットは、地球低軌道に約10トンの
ペイロード(人工衛星など)、静止トランスファー軌道には4トンのペイロードを打ち
上げる能力があるのです。さらに、赤道上空3万6000キロの静止軌道に到達できる
質量を勘案すると、静止軌道に2トンのペイロードを投入できる能力があります。
 H−ⅡAは、そのために固体ロケットブースターSRB−Aに加えて、オプションと
して小型の固体補助ブースターを2基ないし、4基装着することができるようになって
いるのです。通常は2基ですが、4基つけると静止トランスファー軌道へ5トンのペイ
ロードの打ち上げが可能なのです。失敗したH−ⅡA6号機は、補助ブースターを4基
搭載していたのです。
 ちなみに失敗したH−ⅡA6号機は、固体ロケットブースターSRB−Aのうちの1
基が燃焼終了後も投棄できなかったことが失敗の原因とされています。燃え尽きたSR
B−Aは10トンの重量があり、そのために予定通りの加速ができなかったのです。
 このSRB−A――これは、名前こそH−Ⅱロケットに使われた固体ロケットブース
ター「SRB」と同じですが、中身はまったくの新規開発なのです。各種の新機能が装
備されているのですが、皮肉なことにそれが仇になって失敗が起こったのです。
 考えてみるまでもなく、われわれはロケットという「乗り物」について、ほとんど何
も知らないといえます。ロケットは自動車や列車とどこが違うのでしょうか。そういう
基本的なことを知ることによって、その開発に当たってどこが難しいのかが具体的にわ
かると思うのです。明日のEJでは、改めてロケットというものについて考えてみたい
と思います。                  ・・・ [日本宇宙開発/05]

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