INTEC JAPAN/BLOG

このブログは、異文化研修の教育機関(株)インテック・ジャパンの情報発信用です。(株)イー・メディアとの提携により、同社のドキュメント・レポート「Electronic Journal」をウィークデイの毎日お届けします。
「Electronic Journal」は様々な情報を400字詰原稿用紙7枚にまとめて配信する日刊メールマガジンです。

<< 地球を回る軌道について知る(EJ第1350号) | トップ | H−ⅡAに何が起こったのか(EJ第1352号) >>

2007年03月30日

ロケットはどのような乗り物か(EJ第1351号)

 今朝は「ロケット」というものが、どのようなものであるかについて考えてみたいと
思います。ロケットには次の3つの基本的特徴があります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       1.短時間の間に桁外れに巨大なエネルギーを必要とする
       2.真空宇宙で加速するためのものを全部持つ必要がある
       3.エンジンも機体も使い捨てにして1回使う方式にする
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 第1は、ロケットが「短時間の間に桁外れに巨大なエネルギーを必要とする」という
ことです。
 自動車(列車)や航空機をロケットと比較してみましょう。普通の自動車や列車は、
最大でも時速400キロメートル以下、航空機ならば、どんなに速くてもマッハ3以下
で運用されます。
 仮に自動車を時速360キロメートルとし、航空機をマッハ3として秒速を概算する
と次のようになります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      自動車時速360キロメートル ・・ 秒速 100メートル
      航空機時速マッハ3 ・・・・・・・ 秒速1000メートル
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 これに対して、ロケットはどんなに遅いロケットでも次の速度が必要なのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      ロケット ・・・・・・・・・・・・ 秒速7900メートル
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 どうでしょう。航空機の約8倍、とにかく桁外れの速度なのです。それに加えて空気
抵抗などがあるので、軌道に出ていくためには、秒速で10キロメートルの速度は不可
欠であるといわれています。毎秒10000メートルの速度です。
 第2は、ロケットが「真空宇宙で加速するためのものを全部持つ必要がある」ことで
す。物理学の法則ですが、質量を同じとすれば、速度の2乗と必要なエネルギーは比例
します。したがって、速度が2倍になれば、加速するためのエネルギーは4倍になりま
す。同様に10倍の速度を得るためには100倍のエネルギーが必要ですから、ロケッ
トは戦闘機の100倍、F1レーシングカーの10000倍のエネルギーが必要になり
ます。
 しかもロケットは、これほどのエネルギーを何もない真空の宇宙空間で出さなければ
ならないのです。これは、大変なことなのです。なぜなら、地球上の乗り物は、すべて
乗り物それ自体ではない外部のもの――空気なり、地面なりを利用して、推進力として
いるからです。
 自動車はタイヤを回転させ、それで地面を押して前進しますしジェット機は、前方か
ら空気を吸い込んで、勢いよくそれを噴き出すことで前進します。いずれも乗り物本体
の外側のものを利用して前進するのです。
 しかし、ロケットの場合は、何もない宇宙空間の中で加速するのですから、外側のも
のを一切利用できないのです。したがってそういう推進力を全部ロケットの内部に持っ
ている必要があるのです。具体的にいうと、燃料と酸化剤――2つをまとめて「推進剤
(プロペラント)」といいます。
 宇宙ロケットは、静止トランスファー軌道から静止軌道に入るように、軌道に乗る推
進力だけでなく、宇宙空間の中でも加速する必要があり、さらに地球に戻るための推進
力も必要なのです。したがって、ロケットにはたくさんのプロペラントを搭載しておく
必要があります。
 しかも、プロペラントを多く搭載すると重量が増し、それもろとも加速する必要があ
るので、そのバランスが難しいわけです。このプロペラントの量と到達できる速度の関
係について精力的に研究した人が「ロケット工学の父」といわれるロシアのコンスタン
ツィン・ツィオルコフスキーであり、有名な式があるのです。
 ツィオルコフスキーの式に基づいて、単段式ロケットのプロペラントを計算すると、
本体の89%がプロペラントであるという結果が算出されます。
 H−ⅡAのような2段式ロケットの場合は違ってくるのですが単段式ロケットでは、
ロケット本体の89%がプロペラント(推進剤)であって、残る11%が本体と打ち上
げるペイロード(人工衛星など)ということになるのです。
 自動車を例にとると、重量の90%が燃料で、残る10%が搭乗者と自動車本体の重
量ということになるのです。そんな乗り物はあり得ないでしょう。しかし、ロケットは
そこまでやらないと宇宙には出て行けないのです。
 第3は、ロケットは「エンジンも機体も使い捨てにして1回使う方式にする」必要が
あるということです。
 一言でいうと「限界設計」ということです。例えば、H−ⅡAロケットの第1段で使
われているLE−7Aエンジンは、10回の起動と停止が行えるという条件で設計され
ています。つまり、11回目は壊れてしまっても仕方がないという設計です。そして使
い終わったら使い捨てにするのです。
 使い捨てという設計は、仕事を終えた機体を回収して検査をすることができないこと
を意味しています。したがって、いつまで経っても一発勝負から脱却できないのです。
ロケットはそういう乗り物なのです。
 地球を回る軌道に打ち上げるロケットの開発がはじまって、既に半世紀近くになりま
す。その間の技術革新の速度を考えると、ロケットの事故率はもっと下がっても良いの
ですが、そうなっていません。それには、ロケットという特異の乗り物の特質が深く関
与しているのです。
 しかし、それにしても日本のロケットは少し落ち過ぎる感じがします。それには、ど
のような原因があるのでしょうか。次にその問題について考えます。   
・・・[日本宇宙開発/06]

PbgHw^cBIRtXL[.jpg 

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://www.intecjapan.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/56

コメントを投稿

カレンダー