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2007年04月10日

日本の気象衛星は今後どうなるか(EJ第1358号)

 「ひまわり」についてもう少し詳しくいうと、2つの不幸が重なったといえます。ひ
とつは、H−Ⅱロケット8号機の打ち上げ失敗で、「ひまわり5号」の後継機として考
えていた「運輸多目的衛星(MTSAT)」が無駄になったことですが、もうひとつつ
いていないことがあるのです。
 実は、代替衛星MTSAT−1R――2003年3月打ち上げ予定――を米スペー
ス・システムズ/ロラ−ル社に発注していたのですが、さんざん製造が遅れたうえ、2
003年7月に同社が倒産してしまったのです。何ということでしょうか。
 なぜ米社に発注するのかというと、日本は1989年の対米交渉「スーパー301」
によって、実用衛星については国際調達することを米国に約束させられているからで
す。
 ロラール社は、衛星の引渡しに当たって3000万ドルの追加経費や補償金の支払い
をを請求するなど、無理難題を気象庁に申し立ててきており、今年の1月時点において
は、この問題は解決のメドが立っていないのです。
 さて、気象衛星というと、誰でも天気予報のための衛星と考えていますが、実は次の
3つの意義があるのです。
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          1.天気予報の高精度化
          2.国際貢献/アジア・太平洋地域
          3.安全保障面での貢献
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 第1は「天気予報の高精度化」のためです。
 日本の気象衛星は、東経140度の太平洋上で運用されていますが、最大の目的は天
気予報の高精度化です。台風がどこにいるのかをリアルタイムで把握して、台風に対す
る素早い備えを可能にし、気象被害を大幅に減少させることに貢献しています。
 第2は「国際貢献」のためです。
 日本の気象衛星は、アジア太平洋地域に対して行う国際貢献でもあるのです。「ひま
わり」シリーズの画像は、日本だけでなく東南アジア各国やオーストラリアのような南
半球の国でも受信されていたのです。
 日本は、国際貢献の一環として、受信したデータをもとに天気図を作成し、「ひまわ
り」に搭載した通信装置による衛星ファクシミリ通信「ウェザーファクス」を無料で配
信するという実用性の高いサービスを行っていたのです。こういうサービスは日本とい
う国の威信を高めることに貢献していたといえます。
 第3は「安全保障面での貢献」のためです。
 気象衛星は安全保障面でも重要な働きをします。天候は戦争に大きな影響を与えるの
です。したがって、米国は気象衛星には大変力を入れており、次の3つを組み合わせて
運用しています。
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         1.静止気象衛星「ゴーズ(GOES)」
         2.極軌道気象衛星「ノア(NOAA)」
         3.軍事用極軌道気象衛星 「DMSP」
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 「ゴーズ(GOES)」は米国の気象庁に当たる海洋大気庁が運用しているのですが
開発時にはアルファベットで呼ばれ、打ち上げに成功すると数字に改称されるのです。
例えば、最初のGOESは開発時は「GOES−A」ですが、打ち上げ後は、「GOE
S−1」と呼ばれています。
 GOESは、1975年10月の打ち上げからスタートし、1986年の「GOES
−G」で打ち上げに失敗――直ちに地上予備機を打ち上げて「GOES−7」としたの
ですが、ここで設計を大幅に変更しています。
 そして新設計の「GOES−8」は1994年4月に打ち上げられ、2001年7月
の「GOES−12」まで、打ち上げが終わっています。このうち「GOES−9」に
ついては、日本の気庁が借りており、細々と気象観測をやっていますが、次の打ち上げ
のメドは立っていないのです。
 ところで、これほど頻繁に静止軌道に衛星を打ち上げていたら静止軌道がいっぱいに
なってしまうのではないかという疑問がわいてきます。静止軌道は、気象衛星だけでな
く、通信衛星や放送衛星なども使う衛星が密集した宇宙の特等席なのです。
 したがって、そこを用済みの衛星で埋めないように、寿命がきた衛星は最後の推進剤
――これは必ず残しておく必要がある――を使って静止軌道よりも少し高い軌道に移し
て、そこで動作を止めて廃棄するのです。これを「デオービット」というのです。
 「ひまわり5号」については、デオービットに必要な最後の推進剤を残しながら、機
能を絞って最後の最後まで運用を続けたことになるのです。
 さて、今後日本の気象衛星はどうなるのでしょうか。
 国土交通省(事故後運輸省から名称変更)と気象庁は、次世代気象衛星「MTSAT
−2」を2005年に打ち上げる予定で、三菱電機に発注しています。この衛星はロラ
ール社に発注した「MTSAT−1R」が打ち上げられる前提で発注されたのですが、
現在ではこれが本命になってしまっています。
 心配なのは、現在米国から借りている「GOES−9」がそれまで持つかということ
です。というのは、この「GOES−9」は、1995年の打ち上げでとっくに設計寿
命が切れており、いつ機能を停止しても不思議はないという代物だからです。
 もし、「GOES−9」が機能停止になると、東アジア・太平洋地域で、静止衛星に
よる気象観測の空白を作ってしまう恐れがあります。気象衛星の機能喪失は、単に日本
の天気予報の精度が落ちるだけのことではなく、この衛星を利用しているアジア・オセ
アニア地域の国々に多大な迷惑をかけることになります。日本の気象衛星は日本だけの
ものではないのです。
 現在の状況は、気象衛星計画の初期の段階で予備機を持つことの重要性を運輸省が理
解しなかった点にあるといえます。        ・・・ [日本宇宙開発/13]

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