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2007年04月11日

テポドン発射は衛星打ち上げである(EJ第1359号)

 1998年8月31日――この日は何の日だと思いますか。
 北朝鮮(朝鮮民主主義共和国)が「テポドン」を太平洋に向けて発射した日です。テ
ポドンは日本の上空を飛び越えて太平洋に落下しています。思えばこの日を境にして日
本が北朝鮮に対する姿勢を一段と強化することになるのです。
 9月4日になって、北朝鮮中央通信は、それを「光明星1号」の打ち上げであると発
表したのです。日本政府やマスメディアはこれを頭から信じようとはせず、「北朝鮮の
言い訳である」として、あくまでミサイルの実験であるとして報道し、現在でもその考
え方を変えていません。
 本当に衛星が打ち上げられたのであれば、衛星は27Mヘルツの電波を送信しており
それを受信できるはずです。しかし、世界中のアマチュア無線家が電波の受信に挑んだ
にもかかわらず、「光明星1号」の電波は受信されなかったのです。
 ところが、米政府は9月12日になって「衛星の打ち上げである可能性が高い」と発
表したのです。米国の北米防空司令部(NORAD)には軌道上の物体を監視するレー
ダーがあり、軍事機密以外の軌道上物体の軌道情報を公開しているのです。現在、そこ
にはテポドンは「1998−F04」と記録されています。これは次のことを意味して
いるのです。
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         1998−F04 F=Failure
         1998年に起きた4番目の衛星打ち上げ失敗
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 もちろん文部科学省もこのことは知っているはずですが、何もコメントしていません
し、日本政府もマスコミもあくまで「ミサイルの発射実験」という態度を変えていない
のです。いつもであれば、他の国ならばいざ知らず米国が発表することにはすぐ追随す
る日本がこの問題に関しては頑なな態度をとっているのは不思議な話です。
 米国の発表だけではないのです。9月17日には韓国の国家安全保障会議がやはり衛
星の打ち上げであると発表したのです。
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      2段式のミサイルの「テポドン」に第3段を載せて衛星の打ち
      上げに使用し、この第3段が着火せずに衛星の軌道投入に失敗
                    ――韓国国家安全保障会議の分析
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 松浦晋也氏は、テポドンは次の2つの理由から、衛星の打ち上げであると主張してい
ます。
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        第1の根拠:ロケットを真東に向けて打ち上げている
        第2の根拠:金正日総書記の祝賀行事に合わせている
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 第1の根拠は、「ロケットを真東に向けて打ち上げている」ことです。
 発射基地は、ハンギョンプクド・ムスダンリであり、そこから真東に向けて打ち上げ
られています。非力なロケットで大きな衛星を打ち上げる場合は、ロケットの到達速度
に加えて地球の自転速度を最大限に利用する必要があるのですが、そのためには北朝鮮
の場合、この位置から真東に向けて打ち上げるのがベストであるといえます。
 もし、単なるミサイルの実験であれば、真東である必要はないのです。まして日本を
恫喝するのが目的であれば、関東の上空を通過するように打ち上げたり、札幌や仙台な
どの大都市の上空を通過するなどのもっと効果的な方法がいくらでもあります。
 第2の根拠は、「金正日総書記の祝賀行事に合わせている」ことです。
 テポドンの打ち上げは8月31日ですが、9月9日には金正日総書記の国家最高指導
者就任の祝賀行事が行われているのです。こういう場では何らかの方法で国威の発揚を
はかるものですが、そのために日本を恫喝する――これは明らかにおかしいです。その
点、衛星の打ち上げの方がはるかに効果的です。
 祝典にはマスゲームが行われたのですが、その中には衛星が登場しているのです。お
そらく祝典前には「光明星1号」を打ち上げるという前提で衛星のマスゲームを何ヶ月
もかけて練習したものと考えられます。
 それでは、当時の日本政府(小渕恵三首相)は本気でミサイル実験と信じていたのでし
ょうか。
 そんなことはないと思います。どちらにせよはっきりした事実は出ないのですから、
ここは衛星の打ち上げよりもミサイル実験で押し通した方が得策という計算をしたと
考えられます。というのは、ちょうど当時日本政府は「偵察衛星」の開発をひそかに
検討していたからです。しかし、表面に出すと国民の反発を招くので「情報収集衛星」
として検討していたのです。
 こういう事実があります。1998年8月25日、自由民主党の科学技術・情報懇談
会の席上、三菱電機の谷口一郎社長が講演しているのです。演題は、「多目的精密観測
衛星について」――谷口社長はここで日本独自の偵察衛星の必要性について熱弁を振る
っているのです。
 そして、31日のテポドン発射――これを境に状況は一変してしまいます。9月1日
の自民党総務会では、日本も偵察衛星を持つべきであるという意見が出され、北朝鮮脅
威論が加速したのです。同じ1日にテレビに当時民主党の菅直人代表が「日本は自前で
偵察衛星を持つべきである」と発言し、小渕首相はそれに対して「強い関心」を表明す
るといった具合です。
 したがって、日本政府は衛星打ち上げよりもミサイル実験で押し通す方が得策と考え
たのでしょうが、本当は衛星打ち上げの方がミサイル実験よりも衝撃的なのです。衛星
打ち上げというと平和的に聞こえますが、本質は軍事目的の実験そのものなのです。
                        ・・・ [日本宇宙開発/14]

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