政治・行政における理工系素養の不足(EJ第1361号)
1998年の多目的情報収集衛星の予算総額は最終的には衛星からのデータを受信
する地上局を建設するための費用が加わったため、2500億円に増加しています。
これほど巨額の官需となると、メーカはそれを獲得しようとして必死になります。し
たがって、仮にプロジェクトチームのメンバーから相当無理な注文が出ても、否定的な
返事はまずできないと考えられます。したがって、メーカは何でも「できる」という返
事を返すことになるのです。
したがって、それが無理かどうかの本当の判断は、メーカにいろいろな角度から質問
することによって、その応答から発注側自身が判断しなければならないわけです。その
ために発注側としては、ロケットや衛星、それに宇宙軌道に関する相当詳しい知識を持
っている必要があります。
こういう知識は、単に理工系だからわかり、文科系だからわからないというのではな
く、勉強することによってはじめて身につく知識なのです。勉強しなければ、たとえ理
工系でもわからないのです。現代のように高度に科学が発達した世の中では、文科系の
人も理工系的素養を持たないと、正しい政策判断ができない時代になっているといえま
す。
そういう意味で、中山太郎座長を中心とする情報衛星プロジェクトチームの防衛族議
員たちは、そういう知識の上に立って政策の判断をしたのでしょうか。結果は、最初の
2機は打ち上げられていますが、残る2機は昨年11月29日のH−ⅡA6号機の打ち
上げ失敗で、当初の計画は達成されていないのです。
企業へのコンピュータの導入期に、さかんにいわれた次のことばがあります。
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自らコンピュータを使う必要などない。コンピュータを使える
人間を使えればよいからである。
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私は大企業の情報システム部門に10年以上在籍した経験がありますが、その経験を
通じてこのことばがウソであることを実感したのです。結局自分がコンピュータを使え
なければ、コンピュータを使える部下を使うことなどできるはずがないのです。
この発想はコンピュータを使う人間を一段低く見ています。コンピュータは下々の者
が使うマシンであって、一段上にいる経営者はとくに使う必要がない――そういう考え
方ですが、これは完全に間違っています。むしろ、重要な政策判断を下す経営者ほどコ
ンピュータを自ら使いこなす必要があるのです。
コンピュータが使えるようになると、その分だけ自らのパワーが増すことになります
コンピュータを使うことによって、従来はできなかったことができるようになっている
はずです。そうすると、そのパワーアップした能力をベースにものごとを考えるように
なり、新しいアイデアや智恵が出てきます。
したがって、コンピュータを使える人とそうでない人との間には考え方に大きな差が
生ずるのです。つまり、コンピュータが使えない人は、コンピュータの力をベースに物
事を発想する「コンピュータ頭脳」ができていないので、現代の経営に対応する良い智
恵やアイデアが出てこないのです。
日本の場合、政治も行政も理工系的素養が決定的に不足していると考えます。日本で
は、自分ができない難しいことは、専門家の仕事であるとして、それから逃げる傾向が
あります。そのため理工系的知識が不足するのです。つまり、文科系の人から見ると理
工系の人はすべて「専門家」なのです。
しかもこの「専門家」ということばも必ずしも相手を尊敬して使うことばではなく、
難しいことの好きな「技術屋」という意味で使うことが多いのです。しかし、理工系の
学部を出て企業に就職した人のほとんどは、その技術やノウハウを企業に入社してから
一から勉強して覚えたといっているのです。
そういう国において、先端技術の粋を集結しなければならないロケットや衛星を製作
するのは非常にリスクがあります。結局はどんな無理なことでも「できる」といわざる
を得ないメーカを信じて、すべてを丸投げせざるを得ないからです。このあたりに、次
々とロケットの打ち上げに失敗したり、衛星が機能を停止する原因の一端が潜んでいる
のではないかと考えます。
ここに興味深いデータがあります。最近宇宙開発で目覚しい進歩を遂げている中国の
指導者の最終学歴と専門分野を示したものですが、驚くなかれ全員が理工系です。ほと
んど全員が文科系の日本と際立った差というべきでしょう。
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氏名 役職 出身校 専門
胡錦涛 国家首席 精華大 水利工学
温家宝 首相 北京地質学院 地質学
呉邦国 精華大 電子工学
賈慶林 河北工学院 電気工学
曽慶紅 北京工業学院 自動制御工学
黄菊 精華大 電機工学
呉官正 精華大 自動制御工学
李長春 ハルピン工業大学 工業企業自動化
羅幹 フライブルグ鉱山冶金大 機械鋳造
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日本の科学技術庁長官は現在の町村信孝長官で59代ですが、そのうち、理工系出身
の長官は次の4氏のみです。
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第19代 西田信一 札幌工業大学土木建築科
第27代 前田正男 山梨高工機械科
第39代 宮崎茂一 東京帝大工学部土木工学科
第56代 有馬朗人 東京大学理学部物理学科
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ちなみに、総理大臣については、第56代の岸信介首相以降、現在の小泉純一郎首相
まで、理工系出身者はゼロです。 ・・・[日本宇宙開発/16]
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