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2007年04月23日

コロンビア事故に見るNASAの驕り(EJ第1367号)

 国際宇宙ステーション――ISSの話をもう少し続けます。
 1998年11月20日に最初のモジュール「ザーリア」が打ち上げられます。計画
では、続いて「ズヴェズダ」が打ち上げられ、このモジュールには乗組員が居住するた
めの設備が用意してあるので、乗組員がそこで作業する予定になっていたのです。
 しかし、「ズヴェズダ」の製造は財政難から大幅に遅れ、やっと2000年7月12
日に打ち上げられたのです。それでもこの時点では、2007年にはISSは完成する
計画でスケジュールは進んでいたのです。しかし、ここで米国は飛んでもない事故を起
こしてしまいます。スペースシャトル「コロンビア」の空中分解事故です。これによっ
てスケジュールは、完全に白紙に戻ってしまったのです。ISSの話とは少し離れます
が、この事故について少し述べることにします。
 2003年2月1日のことです。「第113飛行通番:STS−107」コロンビア
は、宇宙飛行の最終段階となる帰還時の滑空飛行中に米国本土のテキサス州上空で空中
分解し、乗員全員が死亡したのです。
 この悲しむべき事故の前後の事情は、それこそ映画が一本できるほどドラマチックな
ものだったのですが、いずれにせよ、米国は日本と違って事故後直ちにNASAから完
全に独立した調査委員会を設置して、徹底的な事故調査をするのです。そして、けっし
て同じ原因の事故を2度と起こさないようにしているのです。
 その点、事故を「不具合」とぼかして責任を回避し、徹底的な調査をせずに、同じ原
因による事故を何度でも起こす日本とは、あまりにも対照的であると思います。
 この事故では、打ち上げ時に外部燃料タンクの発泡性断熱材でできている「バイポ
ッド・ランプ」が落下して、コロンビアの左翼前縁部の耐熱パネルに衝突、数ヶ所に損
傷と亀裂を発生させていたことが問題となっています。
 この発泡性断熱材の落下のことは、打ち上げ時にわかっていたのです。しかし、責任
者であるリンダ・ハム博士とNASAジョンソン宇宙センターのロン・ディモットモア
計画部長は次のように発言して、何の手も打たなかったのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       「コロンビア」の飛行安全には支障はない。今回のミッシ
      ョンで、バイポッド・ランプの落下は、問題になることでは
      ない。今回も、いつもの通りでいく。
           ――リンダ・ハム博士の打ち上げ9日目のコメント
       「コロンビア」の耐熱タイルに衝突したとしても、柔らか
      い素材なので、まったく問題ない。
                   ――ロン・ディットモア計画部長
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 しかし、事故調査委員会の2003年5月28日の中間報告によると、バイポッド・
ランプの落下による衝突で左翼前縁部に生じた亀裂から、大気圏再突入時に超高温の大
気が侵入してアルミニウム合金などの機体構造材を、溶かして燃やしたことが空中分解
の原因であると、リンダ・ハム博士らの主張を否定したのです。
 ところで、打ち上げ直後にバイポッド・ランプの落下はわかっていたのですから、本
当に何とかできなかったのかという疑問が生じますね。この疑問について、以下、宇宙
アナリストで工学博士である中富信夫氏の意見を参考にして書くことにします。
 結論からいうと、打ち上げから2分7秒以内であれば、救出できたと中富信夫博士は
いうのです。打ち上げ後、2分7秒後には高度47キロメートルに達し、2基の固体ロ
ケット・ブースターは燃焼を終って分離します。それからさらに加速して宇宙に出てい
くのですが、それまでであれば、乗員と機体は問題なく救出できるというのです。
 といっても別に困難なことではないのです。2分7秒以内に飛行管制官ないし管制責
任者が機長に対して、次の命令をすればよいのです。
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       Mission Abort/MA ミッション放棄モードを選択せよ!
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 MAは「スペースシャトル飛行管制マニュアル」に定められている手続きなのです。
要するに、機体に亀裂が生じた場合のリスクは、宇宙に出て大気圏に再突入するときが
危ないのですから、宇宙に出ないで帰還させればよいのです。そうすれば、乗員と機体
を無傷で地上に帰還させることができるのです。しかし、そういうことには冷静に対処
できるはずのNASAの責任者たちは、それができなかったのです。チャレンジャー事
故から17年経過する間に驕りが生じたとしか思えないのです。
 中富博士は、これについて次のようにいっています。
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       「貧すれば鈍する」というか、「第113飛行通番:STS
      −107」の「102コロンビア」でのミッション経費520
      億円のうち、370億円ほどをムダにすることを恐れて、ある
      いはミッション・アボートを発動した自身の地位(飛行管制官
      並びに飛行管制責任者)を、何らかの責任を問われて失うこと
      を恐れる保身のあまり、「誇り高き宇宙飛行士たち」と「10
      2コロンビア」と「築き上げてきたNASAの栄光」と「アメ
      リカ(コロンビア)の誇り」等々のかけがいのないものを「す
      べて失う愚を犯す」ことになったと考えられる。
         ――中富信夫著、『日本の衛星はなぜ落ちるのか』より。
           光文社刊
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 宇宙開発と事故は付きものです。要は失敗からいかに学ぶかなのです。この点は失敗
から学ぶことの下手な日本はもっと肝に銘ずるべきです。それにしても、日本は、米国
のISSに完全に振り回わされています。日本の提供するモジュール「きぼう」は既に
完成し、既に米国に出荷されているのです。    ・・・ [日本宇宙開発/22]

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