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2007年04月25日

リチャード・クーの理論に注目(EJ第1233号)

 このレポートは、2003年11月17日〜12月12日までの19回にEJで取り上げたものです。当時日本経済は不況であり、リチャード・クー氏によるとそれは「バランスシート不況」である、と。小泉政権は経済の舵取りを間違えており、このまま行くと日本経済は崩壊するといい切っています。
 しかし、小泉政権の最終段階で景気は回復基調にあり、クー氏考え方は否定されたようにみえます。しかし、クー氏の理論は一聴に値するものであり、改めてその主張を振り返ってみることにします。
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 総選挙が終わりましたが、結局自民党は勝ちはしなかったものの、民主党に負けなかったのです。民主党は、議席を増やしましたが、野党の票を食っただけに終わったからです。
 これで小泉政権は存続することになりますが、心配なのは日本経済のこれからです。なぜなら、驚くべきことに、小泉首相自身が「自分は経済のことはわからない」と明言しており、経済政策をこれから先も間違え続ける可能性があるからです。そうなったら、日本経済は確実に崩壊します。本当に竹中大臣に日本経済を丸投げしておいて、大丈夫なのでしょうか。
 11月4日のEJ第1224号でリチャード・クー氏(野村総合研究所主席研究員)の「バランスシート不況論」をご紹介しましたが、クー氏の考え方によると、小泉政権のとっている経済政策は完全な間違いであり、このまま「構造改革という名の緊縮財政」を続けて行くと、その先には大恐慌が待っている――このように、クー氏はいっているのです。
 最近リチャード・クー氏は、自らの「バランスシート不況論」を次の本にまとめ、小泉政権の経済政策が間違っていることを指摘しています。
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    リチャード・クー著 楡井浩一訳
    『デフレとバランシート不況の経済学』
    徳間書店刊/¥1800円
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 この書の推薦者の中で注目すべきことは、中曽根康弘元首相の名があることです。本書は、今までの経済学の常識を破る誠に有意義な本ですが、何しろ483ページもあるので読破するのが大変です。そこで、これから、しばらく、クー氏の理論を下敷きにして、日本経済再生の処方箋を探っていきたいと考えます。誰にもわかるように書きますので、経済に興味がない人もぜひお付き合いください。
 1990年は「失われた10年」といわれています。しかし、2003年になっても経済は一向に回復していません。つまり、既に「失われた15年」になっており、小泉政権の経済運営がさらに続くと「失われた20年」になる恐れすらあります。
 「経済が回復する」とは、一体何でしょうか。
 「経済が回復する」とは、簡単にいうと、経済が持続的に成長することです。「経済が成長する」とは、GDP(国内総生産)が前の年よりも増加することをいいます。
 GDPというのは、「国内総生産」という文字にとらわれるとわかりにくくなりますが、GDPは国内で使われたお金の合計のことです。個人がものを買ったり、家を建てたり、企業が機械を導入して工場を作ったりすると、GDPは増えるわけです。そして、それが毎年、前の年を上回るというかたちで持続すると、経済は順調に成長していくわけです。
 日本経済は、現在、回復の途上にはありますが、それは小泉政権の経済運営の成果ではなく、リストラをはじめとする企業サイドの血の出るような努力の結果なのです。こういうときにこそ、国としての迅速、適切、大胆な経済運営が求められるのですが、おそらく、それは期待できないと思われます。
 経済とは「お金のまわりの状態」のことであり、日本中のお金のまわりが良くなると、景気が良くなるのです。現在、よくいわれることは、国民は年金など先行きに心配なことが多いと、貯蓄に走り、お金を使わなくなって、国の中のお金のまわりが悪くなるといわれていますが、個人の所得がすべて消費に回ることなくそのかなりの部分が貯蓄されるということは良いことなのです。
 リチャード・クー氏は、かつての日本経済には次の2つの車輪があって、その両輪が実にうまいタイミングで回転して経済を成長させてきたといっています。
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    第1の車輪 ・・・・・ 個人家計の高い貯蓄率
    第2の車輪 ・・・・・ 企業の投資効率の高さ
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 個人が消費を抑えて貯蓄すると、それらの貯蓄された資金が金融機関や資本市場を介して企業に供給されるのです。企業はその資金を使って前例のないほどの規模で新商品の開発や設備投資に使う――これらがうまく回転して経済を発展させてきたのです。
 1980年代末までの日本の企業投資比率や借金依存度は、世界的に見て、非常に高かったのです。1980年代の初期には、日本企業の自己資本に対する借入比率は、米国の平均的な借入比率の5倍以上に達していたのです。
 それが一体どうなってしまったのでしょうか。
 結論からいうと、個人の貯蓄率の高さと企業の投資比率の高さの両輪のうち、企業の投資効率の高さの方が壊れてしまったのです。それでは、貯蓄率の高さの方は大丈夫なのかというと貯蓄率は依然として健在なのです。
 貯蓄率は、1999年を頂点としてここ数年は下がり気味であることは確かですが、それは、所得と雇用の低下によるものなのです。所得が落ちたり、失業してしまった人たちは貯蓄を取り崩さなければ、生活をしていけないので、当然のことなのです。経済が好転すれば今まで通りの貯蓄率の高さは維持できるのです。
 それでは、個人消費の方はどうかというと、この10年間の消費はフラットで変わっていないのです。国民が本当に将来の財政赤字や年金制度に不安感を抱いているのなら、消費は落ちて貯蓄が増えているはずですが、統計データで見る限りはそういうことになっていないのです。
 問題は企業の行動にあるのです。企業本来の目的は、家計が供給する豊富な資金を使ってシェアを伸ばすことであるのに、企業はそれを使わず、一斉に借金返済に走っているのです。その結果生じているのが「バランスシート不況」なのです。現在、これを説明できる経済理論はないといわれます。     −− [バランスシート不況/01]

リチャード・クー氏の本.jpg

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