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2007年04月02日

H−ⅡAに何が起こったのか(EJ第1352号)

 日本のロケットの失敗の原因について述べる前に、世界の主力ロケットの最初の10
機の残した実績を見ておくことにします。括弧内の年号は初打ち上げの年を示していま
す。
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      デルタロケット  (米/1960)・・ 10機中1機失敗
      アトラスロケット (米/1960)・・ 10機中5機失敗
      タイタンロケット (米/1960)・・ 10機中1機失敗
      プロトンロケット(ソ連/1965)・・ 10機中4機失敗
      ゼニットロケット(ソ連/1985)・・ 10機中2機失敗
      アリアン1 〜4(欧州/1979)・・ 10機中2機失敗
      アリアン5   (欧州/1996)・・ 10機中2機失敗
      長征1〜4   (中国/197O)・・ 10機中2機失敗
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 平均すると、約20%の失敗率なのです。日本については、H−ⅡとH−ⅡAは、そ
れぞれまだ10機打ち上げていませんが、失敗率は次の通りです。
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       H−Ⅱ  ・・・・・ 7機中2機が失敗/28.6%
       H−ⅡA ・・・・・ 6機中1機が失敗/16.7%
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 これで見ると、日本の失敗率がとくに高いというわけではないのです。しかし、日本
の場合、H−Ⅱにいたるまでに、次のようなロケットを打ち上げ、高い成功率を示して
いるのです。
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       N−Ⅰ  ・・・・・ 7機中1機が失敗/14.3%
       N−Ⅱ  ・・・・・ 8機すべてが成功/   0%
       H−Ⅰ  ・・・・・ 9機すべてが成功/   0%
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 この高い成功率を新聞報道などで、日本の宇宙技術は高い信頼性を達成していると書
いているため、H−ⅡとH−ⅡAの失敗が大きな失敗のように感じられるのです。
 しかし、この新聞論調は正しくないのです。というのは、N−ⅠからH−Ⅰまでのロ
ケットは、米国からの技術導入を受けて開発されているからです。これらのロケットの
ベースになったのはボーイング社のデルタロケットなのです。
 デルタロケットは1960年の初打ち上げ以降、2003年12月までに301機を
打ち上げ、17機が失敗――失敗率6%という94%の成功率を誇るロケットなのです。したがって、H−Ⅱ以前のNASDAの輝かしく見える実績は、米国の技術に負うとこ
ろが大きかったのです。
 したがって、H−Ⅱ以降は日本が独自に技術開発を進めたのであり、H−Ⅱ/H−Ⅱ
Aロケットの失敗率は、十分予測されるリスクの範囲内といえるのです。けっして日本
の技術が他の先進国に比べて劣っているわけではないのです。
 それでは、H−ⅡAロケット6号機の事故原因は何かについて考えてみることにしま
す。なお、本日現在時点でも、事故原因の発表は行われておらず、今までに明らかにな
った事実に基づき述べることになります。
 打ち上げは2003年11月29日午後1時33分、種子島宇宙センターからです。
ロケットの先端に搭載されていたのは、情報収集衛星(IGS)の第2弾です。しかし
ロケットが打ち上げられてから10分53秒後、地上からの指令破壊コマンドにより、
H−ⅡAロケット6号機は破壊されたのです。
 その理由は、打ち上げ後100秒ほどからロケットは予定の軌道から外れていき、衛
星を正常の軌道に投入できないことが明確になったからです。
 ちなみに、情報収集衛星(IGS)とは要するに偵察衛星のことで、次の2組の衛星
を2回にわたって打ち上げ、4つの衛星によって地球上のすべての地点を最低1日に1
回観測できる体制を整えようというのです。
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       1.光学衛星   IGS−O 光を使って地上を監視
       2.レーダー衛星 IGS−R レーダーで夜間の監視
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 最初の1組は、2003年3月28日にH−ⅡA5号機で打ち上げられ、成功してい
るのです。したがって、同年11月29日の6号機による打ち上げが成功していれば、
4つの衛星がすべて揃っていたのです。惜しいことをしたものです。
 失敗の原因は、H−ⅡAロケットに2基装着されている固定ロケットブースター(S
RB−A)のうち、左(L)側の1機は燃焼後うまく投棄されたものの、右(R)側の
1基が投棄されずに残ってしまったことにあるといわれています。SRB−Aは燃え尽
きたあとも重さが10トンもあり、そのため予定通りの加速ができなかったのです。
 ロケットは打ち上げ直後からさまざまなデータを地上に送ってくるようになってい
ます。これをテレメトリ・データというのですが、このデータによると、打ち上げ後6
2秒から、問題のSRB−Aノズルの表面温度を監視するセンサーの測定値が一気に上
昇して測定不能になっていることがわかったのです。異常はすぐに周囲の温度センサー
に波及し、打ち上げ後70秒からは、反対側にあるSRB−Aのノズルの舵角が推力を
変更しようと増加したのです。
 分析の結果、ノズルに発生した穴か亀裂から燃焼ガスが噴き出し、その反動を打ち消
すために、反対側のSRB−Aの舵角が大きくなったものと思われます。
 実は、SRB−Aのノズル――開発時から問題が生じていたのです。地上燃焼実験で
は、5回中3回にわたってノズルの周りに問題が発生しています。これはノズルのかた
ちに問題があり、変更する意見も出ていたのですが、予算と時間の関係でそれは不可能
なことだったのです。               ・・・[日本宇宙開発/07]

SRB-A.jpg 

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