INTEC JAPAN/BLOG

このブログは、異文化研修の教育機関(株)インテック・ジャパンの情報発信用です。(株)イー・メディアとの提携により、同社のドキュメント・レポート「Electronic Journal」をウィークデイの毎日お届けします。
「Electronic Journal」は様々な情報を400字詰原稿用紙7枚にまとめて配信する日刊メールマガジンです。

<< 新視点で財政出動を再考する(EJ第1242号) | トップ | 銀行の破綻処理をなぜ急ぐのか(EJ第1244号) >>

2007年05月14日

金融政策は限界に達している(EJ第1243号)

 昨日のEJで、現在、マクロ経済学の世界は、マネタリストが完全支配していると述
べました。このマネタリズム――何でもお金の動きで経済を説明しようとするのですが
最近それが限界に達しつつあります。
 「貨幣数量説」というのがあります。お金が世間に回るようになれば、景気は良くな
るという考え方です。少し踏み込んで説明することにします。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       MV=PT
       M ・・ マネーサプライ  P ・・・ 一般物価水準
       V ・・ 貨幣の流通速度  T ・・・ 取引量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 貨幣数量説の考え方は、「MV=PT」という式に集約されます。Mはマネーサプラ
イ――お金がどのくらい世間に出回るかをあらわしています。Vは貨幣の流通速度――
人々がどのくらいの頻度でお金を使うかをあらわしています。
 続いて、Pは一般物価水準――個別の物の値段ではなく、消費者物価とか企業売物価
といった広い意味での物価のことです。そして、Tは取引量――物やサービスの取引を
した回数や量です。これは、財やサービスの総量ですから、GDPに置き換えることが
できます。P×Tは実際の経済活動をあらわしています。
 MV+PTではMを増やせばTかPが増えることになります。したがって、世間に出
回るお金を増やせば物価が上がるか、お金の回りが良くなることをあらわしています。
 しかし、この考え方は、いくつかの点で問題があります。マネタリストは、お金の動
きが原因で経済活動は結果として生ずると説くのですが、景気が良くなって経済活動が
活発になるから、お金が回り始めるともいえるわけで、原因と結果の関係がはっきりし
ないことです。現在、日銀が長年にわたって金融緩和をしているのに景気は一向に良く
ならないのを見ても、この説には疑問があるといえます。
 添付ファイルを見てください。これは、マネーサプライと経済活動(実質GDP)と
の関係を時系列でプロットしたものです。見てわかるように、1996年まではマネー
サプライとGDPはリンクしていますが、1997年以降になると、マネーサプライが
増加してもGDPはそれにリンクせず、悪くなっていることを示しています。
 ところで、マネタリズムといえば、通貨の番人である中央銀行――すなわち、日銀の
働きに期待が集まります。よく竹中大臣が日銀に対して「引き続き量的緩和をお願いす
る」といいますが、「金融緩和」とは具体的には何でしようか。
 金融緩和とは、中央銀行による民間への資金供給のことをいうのです。民間から国債
や社債、その他の金融資産を買い上げて、その支払い代金として、現金――ハイパワー
ドマネーを払い込む行為をいうのです。
 しかし、中央銀行に売れるような金融資産を持っているのは、銀行などの金融機関で
すから、金融緩和というのは、中央銀行が民間銀行から国債を買い、その代わりに現金
を手渡すことを意味するのです。銀行から見れば、今まで保有していた国債が同価値の
現金に変わるだけのことなのですが、日銀が買い手となることで、そうでない状況に比
べて、その資産価値が上昇することを狙ったものです。
 ここで重要なのは、中央銀行は、こういう金融資産の購入を通してしか民間に資金を
供給できないことです。つまり、中央銀行が手当たり次第に財やサービスを購入するこ
とはできないということです。そういう意味において、中央銀行は直接資金を民間に供
給することはできないのです。
 その点政府は、何でも財やサービスを購入すること――戦闘機であっても、飛行機で
あっても、土地であっても、政府は何でも購入できるのです。政府がこういう財やサー
ビスを購入する行為のことを「財政政策」といいます。
 中央銀行は金融機関にしか資金を供給できないのに対して、政府は財政支出によって
経済一般に直接資金を供給できるのです。そのため、最近では一部のマネタリストが日
銀は企業から株式や土地などを積極的に買うべきであると主張していますが、これは実
際にいま必要なのはさらなる財政出動であることを自ら認めているようなものです。
 竹中大臣のテレビなどの発言を聞くと、次の3つの主張をしています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      1.企業は80年代以降借金体質、借金を減らすべきである。
      2.政府は財政赤字が巨額であり、負債を減らす必要である。
      3.しかし、日銀にはよりマネーサプライを増やして欲しい。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 はっきりしていることは、これら3つのことが矛盾しているということです。マネー
サプライというのは、実体経済(一般企業や個人)の中に資金を流通させることをいい
ます。
 しかし、日銀は、金融機関には資金を供給できますが、その資金を実体経済の中で循
環させてマネーサプライにするには、企業が銀行からその資金を借りて使う必要がある
のです。ところが、企業も政府もお金を借りないのですから、日銀が供給した資金は金
融資産を日銀に売却した金融機関の中にとどまってしまうことになります。
 現状は、実際にそうなっているのです。日銀が公開市場操作によって資金供給を試み
てみても、資金需要があまりにも落ち込んでいるので、しばしば日銀の資金提供が計画
の水準まで達しないことが起こっています。
 もはやこれ以上、日銀の金融緩和には、何も期待できない限界に達しているといえま
す。金融政策は明らかに行き詰っており、それだけ財政政策が求められていることにな
ります。                 ・・・ [バランスシート不況/11]

fcoW.jpg

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://www.intecjapan.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/314

コメントを投稿

カレンダー