銀行の破綻処理をなぜ急ぐのか(EJ第1244号)
2003年11月29日に地方銀行大手の足利銀行が破綻処理されることになりま
したが、今回の破綻処理にはあまり表面には出ていない特色があります。
りそなのときは、監査法人が銀行に対して引導を渡すかたちになりましたが、今回は
監査法人が一度承認した3月期決算を金融庁が否定しているのです。足利銀行の3月期
決算は、債務超過であるというのです。その経過を追ってみます。
5月23日に、足利銀行は3月期決算を発表します。監査法人と繰延税金資産につい
て意見衝突があったようですが、その時点では、一応承認しているのです。監査法人と
してもりそなのことが頭にあって、今度は監査法人として引き金を引きたくなかったの
でしょう。しかし、自己資本比率は4%台となり、国内で銀行業務を営む最低ラインに
落ちたのです。
8月1日に金融庁は、収益向上を求める業務改善命令を発動します。これに基づき、
足利銀行は業務改善計画を金融庁に提出すると、金融庁は9月に立ち入り検査に入った
のです。この時点で金融庁は、足利銀行を破綻に追い込むカウントダウンをしてきたの
です。しかし、自民党の総裁選と衆院選をにらんで、少しテンポを遅らせています。
危機感を感じた足利銀行は、9月19日に2004年度中に、600億円の増資計画
を盛り込む経営健全化計画を発表し、抵抗しようとします。しかし、金融庁は再び11
月11日に立ち入り検査に入り、債務超過の判断を下して検査を終了します。
これに対して、足利銀行側は異議申し立てを宣言しますが、金融庁は、11月27日
に「足利銀行は3月末時点で既に債務超過である」との検査結果を通知し、29日に一
時国有化の措置がとられることになったのです。
EJ第1225号で述べたように、預金保険法第102条第1項には、第1号〜第3
号措置があります。
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第1号措置 公的資金注入による自己資本増強の措置
第2号措置 破綻処理に伴う預金全額保護などの措置
第3号措置 破綻金融機関に対する特別危機管理措置
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りそなのときは、第1号措置でしたが、足利銀行の場合は債務超過なので、第3号措
置――すなわち、長銀や日債銀のときと同じ措置がとられることになります。
足利銀行の経営内容については、多くの問題点があることは、わかっているものの、
なぜ政府は、かくも性急に銀行の破綻整理をするのでしょうか。まして、足利銀行の場合、貸出金4兆円の約50%が県内向けであり、地元経済への影響は非常に大きいものと思
われます。
リチャード・クー氏は、週刊『エコノミスト』誌/12月2日号で、インタビューに
答えて次のように述べています。
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小泉政権が掲げる「構造改革」という言葉に日本の国民は、
思考を停止させられているのではないか。経済が低迷する現状
や通常のマクロ経済政策が効かないことを「構造問題」と一言
で片付ける。さらに飛躍して、サプライサイド(供給)に手をつ
ければ、問題は解決するかのような、きちんとした検証を踏ま
えない論理があまりに多いように感ずる。
――リチャード・クー氏
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銀行の不良債権問題を小泉政権が推進している根拠は、日本の銀行が不良債権を大量
に抱えているために、それがネックとなって自己資本比率が低下している――そのため
に、信用力があって、面白い投資プロジェクトを持っている借り手に対して資金を貸し
出せないでいるというものです。
しかし、この根拠は、クー氏の考え方に立つまでもなく、明らかに間違っています。
なぜなら、もし、この根拠が正しいのであれば、銀行の貸出金利は上昇していなければ
ならないはずです。信用力があって、銀行として資金を貸し出せる企業が多くあって資
金が不良債権のために限られているのであれば、資金の争奪戦が起こって銀行の貸出金
利は急上昇するからですが、現実には、そうなっていないのです。
事態は逆なのです。企業が借金返済をしているために、企業からの資金需要が銀行の
資金供給力よりも先に落ち込んでしまい、その結果、わずかにある資金需要を求めて銀
行が熾烈な競争を展開したために超低金利になってしまったのです。
クー氏にいわせれば、ある日神様が姿をあらわして、日本中の不良債権穂をゼロにし
てしまったとしても、日本経済が良くはならないというのです。ボトルネックになって
いるのは資金供給ではなく、資金需要の方にあるからです。
逆に神様が日本中の企業の過剰債務の方をすべてゼロにしてくれたら、企業には借金
がなくなるのですから、日本経済はあっという間に明るくなるはずです。問題の本質を
完全に取り違えているように思います。
日本のエコノミスト、学者、政治家の中には、わかっている人はいると思います。そ
んなに難しい理屈ではなく、誰でもわかる話だからです。しかし、それを口にしにくい
「空気」がある――とクー氏はいいます。小泉首相の掲げる「構造改革」というカンバ
ンが、まるで水戸黄門の印籠のように人々の抵抗力を奪っているかのようです。
「構造改革」と「積極財政」――このように2つを並べてしまうと、明らかに「積極
財政」の方が形勢不利です。既に大借金をしているのに、また赤字国債を発行して公共
事業をやるというイメージになってしまうからです。それで、みんなが「構造改革」を
唱えているのです。
しかし、今までの小泉改革で借金は減っているどころか、増えているのです。野党の
いうように小泉改革で実績として何かが大きく改善されたものがあるでしょうか。
・・・[バランスシート不況/12]
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