金融危機の4つのカテゴリ(EJ第1247号)
米国は、1989年のS&L(貯蓄貸付組合)の破綻処理のあと、今までの検査体制
に不備があったとして、各銀行検査機関が一斉に厳しい検査体制を敷いたのです。銀行
検査が厳しくなると銀行は、不良債権の処理に追われ、その反動で貸し出しに慎重にな
り、それが貸し渋りに発展していくものです。現在の日本もそういう状況にあります。
この頃の米国でもこの厳格検査が裏目に出て、1991年から1993年にかけて、
全米の銀行が自己資本問題に直面し、それが原因で、全国的な貸し渋りが始まったので
す。そのため、米国民はそのときの不況を「検査官不況」と呼んだほどです。
時の米国大統領はブッシュ大統領(父)でしたが、時期がちょうど湾岸戦争と重なっ
たため、大統領はその深刻な経済状況を見逃してしまうのです。そして、これが原因で
ブッシュ大統領は、湾岸戦争で勝利しながら、アーカンソー州出身の新人ビル・クリン
トンに大統領の座を奪われてしまうことになります。
当時の銀行の貸し渋りは相当深刻で、その結果、何万という企業が経営破綻し、第2
次世界大戦以来、最悪の不況となってしまったのです。さらにこの不況への対応を困難
にしたのは、2年前の1989年の貯蓄貸付組合の破綻のさいに、1600億ドルもの
納税者負担を強いており、再び銀行救済のために税金を使うことができなかったことで
す。しかし、このときの米国の経済状況が現在の日本と違うことは企業の資金需要があ
ったことです。そこで、連邦準備制度理事会(FRB)は、銀行がプライムレート(最
優遇貸出金利)を6%に保つことを認める一方で、銀行への貸出資金であるフェデラル
ファンドの金利を3%に引き下げたのです。要するに、FRBは預金金利3%、貸出金
利6%という環境をあえて作り上げたことになります。銀行はこれなら大儲けができま
す。その儲けで資本充実を図るというのがFRBの考え方だったのです。これを「肥え
た利ざや」と呼んでいます。
この3%の利ざや――大変な利ざやなのです。この政策が採用される前の平均的な利
ざやが1.5%でしたから、この3%の利ざやは、米銀の自己資本比率を4.5ポイン
ト――1.5%の3倍も押し上げる力となったのです。つまり、政策実行時に自己資本
比率が6%だった銀行も3年後にはその比率を10.5%まで押し上げることができた
のです。
この政策によってFRBは、政治的に高くつく公的資金を投入することなく、銀行に
体力を取り戻させ、1994年には貸し出しを再開させるところまで、米国経済を軌道
に乗せることができたのです。FRBの見事な金融政策といえます。
しかし、この措置は、当時の米国が十分金利が高く、企業に高い資金需要があったか
らこそできたのです。現在の日本のように金利はゼロに等しくバランスシート不況で、
企業に資金需要もない状況では使えないのです。
近年米国で発生した金融危機は、次の3つがあります。
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1982年 ・・・・・ 中南米債務危機
1989年 ・・・・・ 貯蓄貸付組合(S&L)危機
1991年 ・・・・・ 検査官不況危機
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重要なことは、これら3つの危機がいずれも民間企業の資金需要が豊富なときに起き
ていることです。この20年の間に米国では、意欲も信用力もある借り手企業が多くい
るのに、銀行が何度か、つまづいているのです。こういうときは、金利は正常の高さに
あるので、金融当局としては豊富な手が打てるのです。
しかし、日本では、民間企業の資金需要がないため、金利が異常なほど、落ち込んで
いる――このような経済状況では、銀行を何とかしても問題の解決にはならないことで
す。それなのに、銀行ばかりを何とかしようとして、かえって事態を悪化させているよ
うに思います。要するに、竹中大臣をはじめとする日本の金融当局は、企業に資金需要
のない真の理由がわかっていないのです。
この資金需要のあるなしで、金融危機を分類して図形化してみると、添付ファイルの
ようになります。この図表は、リチャード・クー氏が作成したものです。添付ファイル
をご覧ください。
4つのフェーズを言葉で書くと次のようになります。
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Tのフェーズ/資金需要があって、危機が限定的
Uのフェーズ/資金需要があって、危機がシステミック
Vのフェーズ/資金需要がなくて、危機が限定的
Wのフェーズ/資金需要がなくて、危機がシステミック
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これら4つのフェーズに今までの金融危機を当てはめてみると次のようになります。
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Tのフェーズ ・・・・・ 貯蓄貸付組合(S&L)危機
Uのフェーズ ・・・・・ 中南米債務危機/検査官不況
Vのフェーズ ・・・・・ 日本の2つの信組の破綻危機
Wのフェーズ ・・・・・ 1995年以降の日本の危機
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このように分析すると、日本の竹中プログラムは明らかに間違っています。というの
は、日本は現在第Wのフェーズであるのに、あたかも第Tのフェーズにあると考えて、
政策を行っているからです。
竹中大臣は米国高官のアドバイスもあって、貯蓄貸付組合(S&L)危機に対して米
国がとった措置を参考にして、銀行の不良債権問題の解決に取り組み、国有化を含む強
行策を行ってでも、それをRCCで買い上げさせようと画策しているのです。
ここまで、EJで分析してきたように、それをやっても日本の経済状態は何ら回復せ
ず、むしろ逆に取り返しのつかない状況に追い込んでしまう恐れがあるのです。
・・・[バランスシート不況/15]
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