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2007年05月23日

ペイオフ解禁は国際公約にあらず(EJ第1250号)

 バランスシート不況に陥っている日本経済には、毎年40兆円規模の財政出動が必要
である――このように、リチャード・クー氏は主張します。ここで注意すべきは、財政
出動をしても景気が回復するということではなく、デフレが加速するのを抑える効果し
かないことです。
 つまり、経済のさらなる悪化を食い止める効果です。日本経済を回復させるには、財
政出動をしたうえで、真の意味の構造改革を実現する必要があるのです。その構造改革
の内容については、来年になって稿を改めて詳述したいと思います。
 このようなクー氏の主張を聞くと、思い出すのは、元自民党の亀井静香氏の総裁選で
の政策提言です。亀井氏がバランスシート不況のことを知っているかどうかはわかりま
せんが、彼は年間50兆円以上の大型補正予算を組むべきであると主張しています。こ
れは、まさにクー氏の主張と一致します。
 しかし、こういっては亀井氏に申し訳ないのですが、亀井氏は従来型の公共事業推進
派というイメージが強く、小泉首相をはじめとする構造改革派の方が正しい路線のよう
に思えるのです。浪費型と節約型のように見られており、イメージ的に財政出動派の旗
色は悪いといえます。
 もうひとつ財政出動派の問題点は、財政出動をしたうえで、そのあと何をするか具体
的に明らかにしないことです。そのため「こんなに巨額な財政赤字を抱えているのに、
さらに借金するなんて・・」というミクロ的発想を打破できないのです。
 思えば、ペイオフ全面解禁を止めたのも亀井氏だったのです。1999年12月、当
時自民党の政調会長であった亀井静香氏は連立与党の関係者と協議してペイオフの延
期を決めています。これは、まったく正しい判断だったと思います。
 これに猛反発したのは、竹中平蔵氏です。彼は、あるテレビの番組で、ペイオフ延期
を決めた当時の小渕内閣の評点を100点満点で35点をつけています。また、竹中氏
はやはり別のテレビ番組で亀井氏と対立し、喧嘩の一歩手前まで行ったのです。
 この亀井氏の決断について、リチャード・クー氏は次のように述べています。
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       もし、あの時、亀井氏が、改革派優位のマスコミでは不人気
      であることを知りながら、ペイオフを延期していなかったら、
      今ごろどうなっていただろうか。考えただけでもぞっとする話
      である。これだけ不良債権が騒がれ、これだけ邦銀の格付けが
      下がっているにもかかわらず、日本に大きな金融パニックが起
      きていないのは、あの時、ペイオフが延期されたからである。
      ――リチャード・クー著、『デフレとバランスシート不況の経
        済学』(徳間書店刊)より
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 竹中氏はなぜペイオフ全面解禁にこだわるのでしょうか。竹中氏は、ペイオフが延期
されると、ペイオフは国際公約だから、これを延期したら、邦銀の格付けは大幅に下げ
られると、テレビなどで声高に警告を発しているのです。
 結果はどうだったでしょうか。
 まず、ペイオフは別に国際公約でも何でもなかったことです。その証拠に、ペイオフ
延期について文句をつけてきた外国政府は一国もないだけではなく、彼らはいろいろな
会議などで日本の行動を歓迎し、理解を示しているのです。もちろん邦銀の格付けには
何の影響もなかったのです。
 格付け機関のムーディーズは、日本のペイオフ延期について次のようにコメントして
います。あえて、英文でご紹介することにします。
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      Moody’s remains confident that depository obligations
      will be fully protected over the long term, even after
     March 2002.  ――米格付け機関ムーディーズのコメント
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 これを読むとわかるように、「預金は2002年3月末以降も全額保護されるべきで
ある」とはっきりと要求しています。
 このように、ペイオフは国際公約ではなく、銀行の格付けには影響がなかったのです
から、竹中氏とその仲間たちは、国民に対して大ウソをついたことになります。しかし
マスコミは大々的に国際公約論を報道しただけで、その結果が大きく違っていたことに
ついても何も報じていないのです。いったい、この国はどうなってしまっているのでし
ょうか。
 そして、竹中氏は小泉内閣に入閣――まるで亀井氏に当てつけるように、「日本の銀行
には何も問題はない」として、ペイオフ解禁を発表し、2002年4月1日に定期預金
のペイオフを解禁させてしまいます。しかし、ムーディーズは、3月27日に「ペイオ
フ強行なら邦銀の格付けを見直す」と警告してきています。そして、7月になって、ム
ーディーズは警告したように、邦銀6行の格下げを断行したのです。
 このように考えていくと、竹中大臣の考えていることは、国際金融の常識から外れて
います。いったい彼は何を目的としているのでしょうか。こんなことでは、日本経済は
奈落の底に沈んでいくばかりです。     ・・・ [バランスシート不況/18]

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