リチャード・クー氏の評価は(EJ第1239号)
このリチャード・クーというエコノミストは、どういう人物なのでしょうか。
一般的にはリチャード・クー氏といえば、伝統的な財政政策を唱えるケイジアン――
ケインズ政策信奉者として知られています。しかし、最近の日本では、ケイジアンは時
代遅れのエコノミストとして見られるようになっており、クー氏についてもそういう評
価があります。
毒舌をもって鳴る国際経済評論家、副島隆彦氏は、その最新のベストセラー『預金封
鎖』(祥伝社刊)の中で、クー氏について次のようにいっています。
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そう言えば最近、リチャード・クー氏の顔がとんと見えなく
なった。彼こそはインフレ・ターゲット論に最も反対した論者
であつた。だからお役御免になったのであろう。
彼はニューヨーク連銀から派遣された日本操り対策班(ジャ
パン・ハンドラーズ)の一人であるが、今の流れにまったく合
わなくなった。クー氏は伝統的な財政政策(財政出動)推進論
者である。 ――副島隆彦氏
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副島氏はクー氏をこのように紹介し、日本にはクー氏のいう積極財政を行う余裕はま
ったくないことを強調したうえで、次のように述べています。
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そこで現在は、仕方なく実にいかがわしい金融政策とごちゃ
混ぜになった経済政策を行っている。本来は、お札と国債を根
拠なしに刷り散らかして、市中に垂れ流し、目の前の危機を回
避するような薄汚い金融政策は邪道である。
その意味では、財政政策一本槍での景気回復を唱え続けた、
リチャード・クー氏は、経済政策提言家としては経済学の王道
を歩いており、正しかったのであろう。 ――副島隆彦氏
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文脈から読み取れるように、副島氏は本音ではクー氏を買っているのです。さて、景
気刺激策としては、次の2つがあります。
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1.財政政策(フィスカル・ポリシー)
2.金融政策(マネタリ−・ポリシー)
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しかし、副島氏によると、財政政策は、完全に機能麻痺を起こしており、残るは金融
政策しかないのです。金融政策による景気刺激策としては次の3つがあります。
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1.金利(公定歩合)操作しての景気調整
2.通貨発行量のさじ加減による景気調整
3.為替(円と外貨との交換価値)の誘導
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本来、政府による強硬な人工的、人為的な金融政策というものは違法であると副島氏
はいいます。国民の見えないところで、お札と国債を刷り散らかしてばら撒き、表面上
は何とかやっているのです。何しろ政府は、お札と国債の発行権限を握っているのだか
ら、何でもできるわけです。
しかし、国内だけでやっているうちはばれないが、国外との関係では露見する恐れが
あります。そのため、露見しないように、主要国との間で「貸し借り」の決着をつけて
おく――それがG8(主要国財務省・中央銀行総裁会議)の真の狙いであると副島氏は
いっているのです。
ところで、2003年11月20日に発行されたばかりの文春新書に次の本がありま
す。
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東谷暁著/文春新書/文芸春秋刊
『エコノミストは信用できるか』
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東谷暁氏は『季刊民俗学』やPC雑誌のアスキーなどの編集畑の出身者ですが、日刊
工業新聞社から『BIS規制の嘘』というような優れた自著もあります。仕事柄エコノ
ミストに接する機会も多いので、日本で活躍する内外25人のエコノミストの格付けを
試みて『文芸春秋』2001年7月号に掲載されたものをベースとして、今回書籍とし
て出版したものと思います。2001年7月2日のEJ649号でその一部を取り上げ
ています。本書によるリチャード・クー氏の評価は、1999年度は第4位、2001
年度は第13位になっています。それにしても大きな落差ですが、次のような説明がつ
いています。
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クー氏の功績は、不良債権が過剰負債問題であって、過剰負
債を抱えた多くの企業は借金を返すことに必死で、新たな投資
を行わなくなっているという事実をわかりやすく一般の人に伝
えたこと。いっぽう最大の汚点は、構造改革を煽っていながら
途中から路線変更を行って財政出動派に転じ、ついには「構造
改革論者は国民を路頭に迷わせている」と批判して、議論を混
乱させたことにほかならない。(以下、略)
合計=68点 99年=A1 01=Baa1
―――東谷暁著、『エコノミストは信用できるか』より
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途中で主張の変節があったことは知りませんが、今回のリー氏の著書『デフレとバラ
ンスシート不況の経済学』は、内容があり実に説得力があります。
それにしても、財政政策が必要だといっても、政府の債務残高がGDPの150%に
達するほど巨大になっている現在の日本で実際に打てるものなのでしょうか。そのあた
りについては、クー氏をはじめとする財政出動論者は、口が重くなるのです。次回から
そのあたりのことを考えていきます。 ・・・ [バランスシート不況/07]

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