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2007年05月10日

社会インフラ整備の絶好の機会(EJ第1241号)

 「この低金利を利用して、いつかは取り組まなければならない社会インフラの整備を
すべきである」――これは、昨日のEJの最後に書いた高村正彦衆議院議員の総裁選で
の提案です。
 この提案はまったくその通りであると思うのです。旅行者が米国に行って驚かされる
のは、そのインフラの素晴らしさです。まるでおもちゃ箱をひっくり返したような日本
の大都市とは大きく違うと思います。しかも、あのインフラが1930年代にほとんど
できていたことをご存知でしょうか。
 1930年代といえば米国の大恐慌の年です。あのフーバー大統領のあと登場したル
ーズベルト大統領は、大恐慌で超低金利になっている状況を利用して、社会インフラの
大建設に取り組んだのです。この大胆な財政出動がニューディール政策です。
 これにより1041万7292キロの道路、12万4031本の橋、12万5100
戸の公共ビル、それに8192ヶ所の公園、853ヶ所の飛行場が整備されています。
それだけではないのです。この間に30億本の木が植えられ、3415万5836ヘク
タールの農地が新たに灌漑され、10万8000の絵画が描かれ、1万8000個の彫
刻が造られたのです。
 当時の米国の金利は米国としては超低金利でしたが、現在の日本の金利よりは、はる
かに高かったのです。日本はなぜこういう公共事業ができないのでしょうか。
 リチャード・クー氏は、国債の利回りが1%台まで下がるということは、市場が現在
不足しているインフラを整備する歴史的な機会であることを教えてくれているといっ
ています。日本には建設すべき社会的インフラがまだたくさんあるはずです。
 例えば、羽田空港の発着枠制限を解決するための第四滑走路を造るとしましょう。こ
の滑走路の整備費用は2兆円かかるそうです。この費用を10年国債の発行で調達する
場合、10年間の支払利息は、現在1.5%ほどの国債の利回りで計算すると、300
0億円かかることになります。
 バブル以前の正常な世界における国債の利回りは平均して5〜6%―――本来なら1
兆円〜1兆2000億円もかかってしまうのです。それが今なら3000億円で済むの
です。まさに今こそチャンスであるのに、ここで緊縮財政を組む――完全に逆のことを
やっているのです。
 ここで国債の消化の段階というものを考えてみると、3段階あることがわかります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         1.自国通貨建てで、自国民が買っている段階
         2.自国通貨建てで、外国人が買っている段階
         3.外貨建てで   外国人が買っている段階
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 安全度からいえば、1、2、3の順になりますが、とくにリスクの大きいのは3の段
階です。デフォルトに陥ったロシアや中南米は3の段階だったのです。
 米国は2の段階にあります。過去に発行された米国債の40%を日本をはじめとして
外国人が保有しています。しかしご存知のように、米国の財政赤字は過去最大であり、
しかも大きな経常赤字も抱えているのです。それでも米国が世界の経済を支えているこ
とから、多くの外国人投資家が大量の米国債を買っているのです。
 2の段階の危険性は、投資家が米国の貿易収支とドルの方向に不安感を持つと、彼ら
は一斉に米国債を売りかねないということです。そうすると、ドルは暴落し、長期金利
は急上昇して米国の金融市場を直撃することになります。
 実際に1987年3月に米国債の投売りは起きています。それは、その年の2月末に
「ルーブル合意」――2年6ヶ月前のプラザ合意によってドルは十分下がって、これ以
上下がる(1ドル=150円以下になること)は、関係各国にとって好ましいことでは
ないという合意――からわずか4週間後のことなのです。
 そういう「ルーブル合意」があったにもかかわらず、ドルが、150円を割ったこと
で市場は衝撃を受けてパニックになり、外国人投資家が一斉に米国債の投売りをやった
のです。そのため、ドルは137円まで急落――米国債の利回りは、6週間で7.5%
から9.0%に跳ね上がったのです。
 日米両金融当局は、事態を収拾するためいろいろ努力してドルを150円まで戻した
のですが、8月になって再び150円を割り込んでしまい、そのため米国債の利回りは
急上昇したのです。そして、この長期金利の上昇が10月の「ブラックマンデー」で株
価が暴落する一因となったのです。
 米国政府は、この1987年3月〜10月までの苦い経験を教訓として、以後このよ
うな「米国売り」を起こさないよう細心の注意をもって為替歳策を運用するようになっ
たといわれます。このように、自国通貨建ての国債を外国間人が大量に持っているとい
うことは、米国のアキレス腱になっているといえます。これが2の段階が持つ危険度で
す。
 これに対して日本の場合は、膨大な経常黒字を持っていることに加えて、国債は自国
通貨建てであり、しかもその95%は自国民――とくに金融機関が大量に保有している
のです。したがって1の段階であり、最も心配のない状況であるといえます。
 クー氏がいうのには、国債を大量に保有している金融機関は、民間企業がいかに深刻
なバランスシート調整をやっているかを熟知しており、間違っても「米国売り」をする
ようなことはあり得ないといっています。これは当然のことです。
 そのため、日本の国債市場はほとんど自国民によって支えられており、債券価格は市
場最高値、利回りは人類史上最低値になっています。このレベルはクー氏によれば1の
段階というよりも0の段階であり、これで国債のデフォルトを心配するのは、あまりに
も「贅沢な心配」であるといっています。日本政府は、なぜこの有利な状況を経済回復
に利用しないのでしょうか。        ・・・ [バランスシート不況/09]

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