INTEC JAPAN/BLOG

このブログは、異文化研修の教育機関(株)インテック・ジャパンの情報発信用です。(株)イー・メディアとの提携により、同社のドキュメント・レポート「Electronic Journal」をウィークデイの毎日お届けします。
「Electronic Journal」は様々な情報を400字詰原稿用紙7枚にまとめて配信する日刊メールマガジンです。

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● 2007年06月 記事 ●

2007年06月01日

●番匠1等陸佐は隊長ではない(EJ第1375号)

 ここまでアーレイ・バーク元米海軍大将に関連して、海上自衛隊創設(旧日本海軍再
建)について述べましたが、ひとつ漏らした話があります。
 海上自衛隊は、バーク氏のおかげもあって立派な海軍に成長しているのですが、ひと
つだけ大事なものがないのです。それは航空母艦(空母)です。もし、海上自衛隊に空
母があったら、日本の国土防衛に大いに役立つはずです。
 バーク氏に関連して、米国は日本に対し、小型空母(1万トンクラス)の供与を打診
してきたことがあるのです。海上自衛隊の前身、海上警備隊のときの話です。
 これに対して、海上警備隊首脳――ほとんどが旧海軍出身者ですが――「軽空母とは失
礼な!」と憤慨したというのです。そういう反応を聞いた米海軍は、本気でエセックス
クラス級正規空母(3万トンクラス)の供与とその護衛用の随伴艦として巡洋艦の供与
まで行おうとしたのです。もちろんこのバックにはアーレイ・バーク氏がいたのです。
 しかし、この米側の好意的な提案を当時の吉田首相は断ってしまったのです。当時日
本が置かれていた状況における政治決断とはいえ大変残念なことであると思います。現
在、空母を持つといえば、またまた大変な論議を巻き起こしてしまうからです。
 「イージス艦があるではないか」という人がいます。しかしそもそもイージス艦は、
空母護衛のための防空艦であり、搭載されている防空レーダーの高度な性能はそのため
のものなのです。しかし、肝心の空母が日本の海上自衛隊にはないのです。
 イージス艦については、かなり多くの誤解があります。とくに中国は日本のイージス
艦について、その軍事専門誌『軍事知識』(1996年10月号)の中で、イージス艦
「こんごう」について、次のように述べています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       日本の「金剛」級駆逐艦は、日本が建造した最大にして火力
      も最強の艦艇である。その艦艇が中国の目前にある長崎県の佐
      世保港に停泊しているのだ。
                ――1996年10月号『軍事知識』より
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 これには少し説明がいります。かつて日本海軍には「金剛」という主力戦艦があった
のです。イージス艦は「こんごう」と平仮名なのですが、中国語にすると「金剛」とな
ってしまうので、戦艦であると勘違いしているようなのです。
 ここまで述べてきたように、自衛隊は、海上、陸上、航空のいずれも旧日本軍がベー
スとなって発展してきています。旧日本軍がそのまま復活して発展したと考えてよいの
です。これは、朝鮮戦争が勃発したことと、それに対応する米国の戦略によってそうい
う措置がとられたのです。
 しかし、表面上は旧日本軍のイメージを引きずらないよう異常なほど気を遣い、軍隊
と警察を足して2で割ったような奇妙な名称を使ってきているのです。これは、馬鹿馬
鹿しいというよりも滑稽でさえあります。
 今年になって自衛隊がイラクで活動を開始したことに関連して改めて自衛隊の呼称
の難解さが浮き彫りになっています。第1陣の指揮官は番匠幸一郎氏でしたが、この人
の階級のわかりにくさが話題となったのです。
 新聞などでは、番匠幸一郎氏について、次のように紹介されています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
              1.番匠幸一郎指揮官
              2.番匠幸一郎隊長
              3.番匠幸一郎1等陸佐
              4.番匠幸一郎1佐
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ひとつずつ論評していきます。
 「指揮官」という名称は、自衛隊では使いません。正式な名称ではないからです。そ
れでは、「隊長」はどうかですが、結論からいうと、番匠幸一郎氏を「番匠隊長」と呼
ぶのは、大変失礼に当たるのです。民間企業にたとえれば「部長」に対して「課長」と
呼ぶのに等しいからです。
 陸上自衛隊における「隊」とは、「中隊」よりも大きく、「大隊」よりも小さい独立部
隊ということになります。番匠氏の階級は「1等陸佐」、連隊長や群長クラスというこ
とになるのです。ですから、番匠氏を「隊長」と呼ぶのは失礼なのです。
 それでは「1等陸佐」とはどういう階級でしょうか。
 軍隊の階級の名称は世界共通なのです。そうすることによって軍人は世界中どこに行
ってもそれぞれの国で階級によって同等の扱いを受けることができるのです。したがっ
て、自衛隊でも階級の英語の名称は世界共通になっています。変な呼称を使っているの
は日本語の呼称だけです。国民に旧軍隊をイメージされないようそういう変な名称を使
っているのです。
 「1等陸佐」というのは、「佐」の字が入っているので、佐官――それも「1佐」です
からコロネル、つまり大佐なのです。旧日本陸軍でいうと「陸軍大佐」ということにな
ります。この方が「1等陸佐」というより、わかりやすいですね。
 佐官の階級は3つありますが、英語の名称を書いておきます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
          ≪陸上自衛隊≫
          大佐 ・・・ 1等陸佐 Colonel
          中佐 ・・・ 2等陸佐 Lieutenant Colonel
          少佐 ・・・ 3等陸佐 Major
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 現在、自民党国防部会の防衛政策検討小委員会において、自衛官の呼称の変更を検討
しているそうです。この自衛官の呼称については、来週取り上げます。   
・・・[自衛隊の実力/06]

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2007年06月04日

●呼称変更検討/自民党国防部会(EJ第1376号)

 前回、自民党国防部会の防衛政策検討小委員会において、自衛官の呼称の変更を検討
していると述べましたが、その内容は旧日本軍の呼称に戻すというものです。
 そこで、旧日本軍の呼称――というより世界中で共通している軍隊の階級呼称と自衛
隊の階級呼称との関係についてお話しすることにします。知っておくと便利です。
 自衛隊は、陸上、海上、航空の3つがあり、階級はそれぞれ違うのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
            陸上自衛隊 ・・・・・ GSDF
            海上自衛隊 ・・・・・ MSDF
            航空自衛隊 ・・・・・ ASDF
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 まず、「幹部」について述べます。幹部には、将官、佐官、尉官の3つがあります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
               GSDF    MSDF   ASDF
      ≪将官≫
       幕僚長(大将)陸上幕僚長   海上幕僚長  航空幕僚長
       将  (中将)   陸将      海将     空将
       将補 (少将)  陸将補     海将補    空将補
      ≪佐官≫
       1佐 (大佐) 1等陸佐    1等海佐   1等空佐
       2佐 (中佐) 2等陸佐    2等海佐   2等空佐
       3佐 (少佐) 3等陸佐    3等海佐   3等空佐
      ≪尉官≫
       1尉 (大尉) 1等陸尉    1等海尉   1等空尉
       2尉 (中尉) 2等陸尉    2等海尉   2等空尉
       3尉 (小尉) 3等陸尉    3等海尉   3等空尉
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 「幹部」に続いて「准尉」という階級があります。もともと准尉という名称は旧陸軍
の名称で、旧海軍では「兵曹長」と呼ばれていたのです。旧陸軍では中隊付きの小隊長
という位置づけなのです。自衛隊では次のようになります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      ≪准尉≫      GSDF   MSDF   ASDF
       准尉 (准尉)   准陸尉    准海尉    准空尉
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 続いて「曹士」です。「曹士」は文字通り「曹」と「士」に分かれます。
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      ≪曹≫       GSDF   MSDF   ASDF
       曹長        陸曹長    海曹長    空曹長
       1曹(曹長)   1等陸曹   1等海曹   1等空曹
       2曹(軍曹)   2等陸曹   2等海曹   2等空曹
       3曹(伍長)   3等陸曹   3等海曹   3等空曹
      ≪士≫
       士長(上等兵)   陸士長    海士長    空士長
       1士(1等兵)  1等陸士   1等海士   1等空士
       2士(2等兵)  2等陸士   2等海士   2等空士
       3士(3士)   3等陸士   3等海士   3等空士
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 旧陸軍では、下士官の階級は曹長から伍長までの3階級だったのですが、自衛隊では
1曹〜3曹の上に曹長を上級曹長として置く4階級となっています。それに旧軍では、
兵は上等兵〜2等兵までの3階級なのに、自衛隊では一番下に「3士」を置く4階級制
です。
 自民党国防部会の防衛政策検討小委員会では、旧軍の呼称に単に戻すといっています
が、このあたりの調整は必要です。いずれにせよ、実態がある以上、いい加減な名称を
廃止し、世界共通の分かりやすい名称にすべきであると思います。
 自衛隊の名称には、まだまだヘンな名称がたくさんあります。次の用語は自衛隊の名
称ですが、何を意味するか分かりますか。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
              普通科    特 車
              施設科    要撃機
              特 科
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 「普通科」というと他に「商業科」や「工業科」があるようですが、普通科とは「歩
兵」のことです。「施設科」といっても、別に福祉施設や娯楽施設を意味するわけでは
なく、「工兵」のことなのです。それに「特科」というのは、「砲兵」のことです。要す
るに「兵」がつくものはすべて外したわけです。
 「特車」というは「戦車」、「要撃機」とは「戦闘機」のことです。ここでは明らかに
「戦」がつくものを外しています。戦争前に一切の英語を禁じたとき、一番困ったのは
野球用語なのですが、「バッター」は「打者」にしたものの、「バッター・ボックス」を
「打者箱」といわざるを得なくなったのです。それと同じことを戦後またやっているの
です。
 それでいて、次のように明らかに軍隊用語であるのに「兵」と「戦」を使わないもの
はすべて言葉狩りを免れているのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
          師団   中隊   迫撃砲   魚雷艇
          旅団   小隊   機関銃   特務艦
          連隊   小銃   輸送船
          大隊   手榴弾  潜水艦
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 こんな姑息な手段で国民の目をそらすことができると考えているとしたら、国民を明
らかに馬鹿にしています。まさに官僚らしい考え方そのものです。こんなこと、もうや
めるべきです。                 ・・・ [自衛隊の実力/07]

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2007年06月05日

●海上自衛隊の掃海技術と対潜能力(EJ第1377号)

 自衛隊についてわれわれが一番知りたいことは、現在の自衛隊の実力がどのレベルの
ものかということです。今朝からこのことについて明らかにしていきます。
 自衛隊には、次のように、「7つの世界一」というものがあるのですが、ご存知です
か。ひとつずつ検証します。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
        1.永年にわたる実戦経験が育てた掃海技術
        2.海上自衛隊のお家芸である「対潜作戦」
        3.原子力潜水艦に劣らぬ通常型潜水艦戦力
        4.最先端技術の結晶である「F2戦闘機」
        5.百発百中の精度誇るハイテク・ミサイル
        6.世界最高のレベルのパイロットと整備員
        7.世界一質と士気の高さを誇る自衛隊将兵
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 第1の自衛隊の世界一は、「永年にわたる実戦経験が育てた掃海技術」です。
 太平洋戦争で日本は、米軍によって周辺海域に10703個の機雷を撒かれ、経済封
鎖された苦い経験があるのです。戦後、経済復興に先立って日本は嫌でもこれらの機雷
を自ら除去する作業をやらざるを得なかったのです。
 この危険な作業に携わったのは、元海軍軍人であり、多くの尊い犠牲がそこに払われ
たことについては既に述べています。しかし、この掃海作業はけっして無駄ではなかっ
たのです。
 1950年に朝鮮戦争が勃発すると、占領軍から日本の掃海部隊に出動命令が下り、
掃海部隊は北朝鮮軍が敷設した機雷処理に従事しています。そのとき、1950年10
月から12月までに27個の機雷を処理しているのです。これは凄いことなのです。
 掃海艇延べ44隻、巡視艇10隻を派遣し、その掃海作業は、38線を越えて元山、
鎮南浦、海州まで及んだといわれますから日本は朝鮮戦争に参加していたといっても過
言ではないのです。そういう意味で日本は、朝鮮戦争の第17番目の参戦国であり、こ
れが戦後初のPKO活動といわれるゆえんです。
 このように、日本の掃海部隊の掃海作業は、太平洋戦争から朝鮮戦争を経て今日まで
休まず続けられてきているのです。あの1991年の湾岸戦争においても34個の機雷
を処理し、その活躍が国際社会から高い評価を受けています。
 日本の掃海部隊の実績は、戦前の4157個も含め2002年3月までに6221個
もの機雷を処理しており、かかる実績を持つ軍隊は、海上自衛隊・掃海部隊以外はない
のです。したがって日本の掃海部隊は世界一であり、その掃海に当る艦艇も、掃海艇を
はじめ、掃海艦、掃海母艦、掃海管制艇など、掃海任務に当たる艦艇を30余隻を有し
ており、これも世界一なのです。
 第2の自衛隊の世界一は、「海上自衛隊のお家芸である「対潜作戦」です。
 アーレイ・バーク元米海軍大将らの協力を得て、何とか海軍のレベルを維持できた海
上自衛隊が掃海と共に力を入れたのは、対潜水艦作戦だったのです。
 というのは、これも太平洋戦争のときの苦い経験があったからです。それは、米軍に
よる通商破壊作戦です。具体的にいうと、潜水艦による商船への攻撃です。日本はこれ
によって海上輸送能力が著しく低下し、工業生産は壊滅的打撃を受けたのです。戦争中
に沈められた日本の商船は約1100隻であり、この数は日本の商船の半分に当たるの
です。
 54隻の護衛艦から成る日本の海上自衛隊の艦艇は、本格的な防空システム艦である
イージス艇が登場するまでは、対潜作戦にシフトした艦艇であり、高い対潜能力を持っ
ているのです。
 対潜ヘリ3機を搭載する護衛艦に、サブマリン・ハンターと呼ばれるP3C哨戒機約
100機――米国に次ぐ第2位――の編成で、潜水艦を発見し、攻撃するのです。
 P3C哨戒機はロッキード社で開発され、日本でライセンス生産をしたものですが、
海中に潜む潜水艦を次の4つの探知法で探知して攻撃するのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                1.音 響探知
                2.磁 気探知
                3.電 波探知
                4.赤外線探知
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 「音響探知」は、円筒型対潜聴音具(ソノブイ)を投下して潜水艦の発するスクリュ
ーやエンジンの音を聴音し、あるいは自ら音波を出して潜水艦からはねかえってくる音
を解析して、水中の潜水艦の位置を割り出すのです。
 「磁気探知」というのは、潜水艦が航行するとき起こる地上磁気の変化を読み取る方
法であり、「電波探知」とは敵の発する電波をキャッチすること、「赤外線探知」は、赤
外線カメラで熱源を捉えて潜水艦を発見する方法です。
 日本の場合、P3C対潜哨戒機には、機長・副機長の下に音響探知のための音響対潜
員2名、音響以外の探知を担当する第三対潜員、これらの情報を集めて攻撃の戦術を立
てる戦術士のほか、航空通信士、機上電子整備員、機上武器員が乗り込み、一丸となっ
て、敵の潜水艦を発見し、攻撃するのです。
 日本の場合、電子機器を使いこなす能力が非常に優れているため、世界一の対潜能力
が発揮されているのです。リムパックと呼ばれる米国、オーストラリア、カナダ、韓国
などの環太平洋自由主義諸国と行う合同訓練でも日本の対潜技術は、最優秀の評価に輝
いているのです。
 なお、日本のP3C対潜哨戒機は、1981年の導入から今日にいたるまで墜落によ
る損失はゼロという輝かしい記録を更新中です。現在、海上自衛隊では、P3C対潜哨
戒機の後継機としてよりハイテク化されたMPAを自主開発中であり、これが加われば
日本の対潜能力は一段と高まると考えられます。  ・・・ [自衛隊の実力/08]
               

2007年06月06日

●通常型潜水艦戦力は強大(EJ第1378号)

 自衛隊の「7つの世界一」のうちの2つについては昨日のEJで既に述べています。
続いて、後の5つの世界一についてひとつずつ述べていきます。
 第3の自衛隊の世界一は、「原子力潜水艦に劣らぬ通常型潜水艦戦力」です。
 よく知られているように、海上自衛隊は原子力潜水艦を保有しておらず、通常型潜水
艦と呼ばれるディーゼル動力艦を16隻保有しています。したがって、ここで世界一と
いうのは、通常型潜水艦戦力で世界一という意味です。
 なぁんだ、そんなことかというなかれ――通常型潜水艦戦力で強いということは、そ
ういう国が原子力潜水艦を保有すれば当然世界一になれるということを意味します。
 日本は原子力潜水艦が作れないわけではなく、現在の憲法の下では原子力潜水艦まで
は必要ないということになっているからです。原子力潜水艦の最大の強みは、一度潜っ
たら食料がなくなるまでは潜っていられるという点にありますが、潜水艦戦力とはそれ
だけではないからです。
 ところで日本が潜水艦建造の草分け的存在であることをご存知でしょうか。
 かつて日本海軍は、伊400型という航空機搭載の超大型潜水艦を建造し、戦後の各
国の潜水艦開発に大きな影響を与えているのです。伊400型は当時世界最大の潜水艦
だったのです。
 潜水艦に限らず航空機でも同じことがいえますが、こういう精密兵器を開発する国は
産業基盤、高度な科学技術、優秀な労働力と基礎工業力などが確立していること――こ
れが条件となります。そういう意味で日本は、いまでも実用に耐えられる潜水艦を独自
で設計・建造できるアジアにおける唯一の国であるといえるのです。
 潜水艦の数においては、ロシアの18隻、中国の60隻に比べて負けていますが、潜
水艦そのものの建造技術や搭載機器、水中兵器などの潜水艦の性能にかかわる技術の差
は歴然としており、質の上では日本の16隻の潜水艦にかなわないでしょう。
 16隻の中に「おやしお」型潜水艦というのがあります。これは、1998年から配
備が開始されたのですが、その戦闘能力については原子力潜水艦にひけをとらないので
す。
 フランク・アレイ・ソナーを搭載して索敵能力を向上させるとともに航続力、潜行深度、情報処理能力を高めています。さらに艦首先端部に6門の魚雷発射菅を集中配備して打
撃力を強化している最強の通常潜水艦です。
 ここで、潜水艦の動力について知っておく必要があります。潜水艦の動力には、次の
2つがあります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
        1.通常動力 ・・・・・ ディーゼル・エンジン
        2.原子力  ・・・・・ 原子力  ・エンジン
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 素朴な疑問ですが、ディーゼル・エンジンは水中で使えるのでしょうか。確かにディ
ーゼル・エンジンは、酸素(空気)が必要であり、水中では使えないのです。そこで潜
水艦が浮上しているときに充電して電気を蓄え、水中では、電池の電力を使って電動モ
ーターの力でスクリュープロペラを回転させるのです。
 したがって、水中で電気が切れてしまうと、潜水艦は充電するために海面近くまで浮
上しなければならないことになります。存在を隠さなければならない潜水艦が浮上すれ
ば、そこを敵に狙われる可能性が高くなります。これが通常動力による潜水艦の弱点と
いえます。
 その点原子力潜水艦は、一度潜航したらずっと潜り続けることができるのです。しか
も、音は静かであり、そういう意味で潜水艦の動力として原子力エンジンは理想的であ
るといえます。
 「おやしお」型潜水艦は、電池を動力とする世界最大級の潜水艦であり、その戦闘能
力においては、原子力潜水艦にひけをとらないのです。
 さらに日本の潜水艦は、各国の度重なる潜水艦事故を尻目に、これまで一度も損失し
ていないのです。これは、潜水艦の技術・運用両面におけるレベルの高さを証明するも
のといえます。
 第4の自衛隊の世界一は、「最先端技術の結晶である『F2戦闘機』」です。
 航空自衛隊は戦闘機を361機保有しています。その中に「F2戦闘機」というのが
あります。多くの人はこの戦闘機は米国が開発したものと考えていますが、これは日米
で共同開発された、いわば「混血戦闘機」なのです。
 潜水艦の建造と同様に、日本が戦闘機を開発できないわけではないのです。しかし、
これには複雑な政治問題がからんでおり、共同開発にならざるを得なかったのです。
 実は、1980年代にF1戦闘機の後継機を日本が独自開発するという計画があった
のです。しかし、米国はこれを嫌い――というより内心は恐れて、外交圧力によって日
本の独自開発案を潰したのです。そして、その後継機は日米で共同開発することになり
混血のF2戦闘機が誕生したのです。しかし、その開発分担比率は、日本と米国が6:
4ということになったのです。明らかに日本が不利です。
 実は、今回、EJのテーマを自衛隊にするか、日本の航空機開発の問題にするか迷っ
たのです。というのは、戦闘機はともかくとして、どうして日本は旅客機が作れないの
か、かねがね不思議に考えていたので、かなり前から情報を集めて、まとめることはで
きるところまできていたからです。
 しかし、内容において、まだすっきりしない面が一部には残っていたので、自衛隊の
テーマを先行させたのです。いずれこの問題は、EJのテーマとして取り上げたいと考
えております。
 自衛隊の「7つの世界一」の4番目――F2戦闘機については、明日のEJで続きを
書きます。                   ・・・ [自衛隊の実力/09]

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2007年06月07日

●世界のハイテク兵器を支える日本の技術(EJ第1379号)

 「F−2戦闘機」についてもう少し書きます。
 F−2戦闘機は、機体の製造工程で「複合材(炭素繊維)の一体成型」という最先端
技術が採用されています。これによって主翼の強度が増し、高い飛行性能を実現させて
います。この技術は米国の航空機産業界でどうしても実用化できなかったものを日本の
技術でクリアしたものです。
 F−2戦闘機は、攻撃面においてF−1戦闘機に比べて高性能になっています。まず
戦闘機としては世界ではじめてアクティブ・アレイ・レーダーを搭載して、複数の目標
を同時に探知して攻撃できるのです。このレーダーは、イージス艦に搭載されているも
のと同じです。
 続いて、F−2戦闘機は、日本の電子技術の粋を集めた設計になっており、パイロッ
トが攻撃しやすいよう種々の配慮が払われているのです。F−2戦闘機のコックピット
は視界が広くとられており、従来のアナログ計器類の代わりに大きな3つの液晶ディス
プレイが設置されています。
 それから、F−2戦闘機では、従来両足の間にあった操縦桿がパイロットの右太腿の
外側に配置されているのです。これを「サイドスティック」というのですが、これは重
要な変更なのです。なぜなら、パイロットの右手が少しでも右に触れれば右旋回、左に
触れれば左旋回、手前に引けば上昇というように手のひらの微妙な感覚を感じ取って、
飛行機を自由自在に操れるようになったからです。
 戦闘機の操縦桿が股の間にあるなんてご存知でしたか。確かに股の間にあるのと右サ
イドにあるのとでは、操縦の感覚が大きく違ってきますが、これは日本のお家芸といえ
ます。
 それから、宙返りをした場合などに起こるパイロットの空間識失調に対しては、その
ためのリカバリー・スイッチが用意されており、そのスイッチを押せば機体を自動的に
正常化させることができるのです。
 また、F−2戦闘機にはIEWSという統合電子戦システムが搭載されており、もし
自機が敵のレーダーに捕捉されると、敵のレーダー波を感知して電波妨害を行い、敵の
ミサイル攻撃を回避するための各種の欺瞞装置を数多く備えているのです。
 さらに、F−2戦闘機は対艦攻撃力が大幅に向上しています。F−1戦闘機では2発
しか搭載できなかった対艦ミサイルを4発搭載できるようにしており、F−1と同数の
F−2を実戦配備するだけで、日本の洋上阻止力は倍増することになるのです。
 加えてF−2戦闘機のエンジンはF110エンジンといって、コンピュータ制御機能
を備えています。したがって、その信頼性はきわめて高く、このエンジン1本の推力は
F−1の4本分に匹敵するといわれます。
 航空自衛隊のパイロットは、こういうハイテク電子機器の扱いに非常に熟達しており
すべての機能を完璧に使いこなせるので世界一なのです。ちなみに、F−2戦闘機の値
段は1機120億円と世界最高の価格が付いています。
 第5の自衛隊の世界一は、「百発百中の精度誇るハイテク・ミサイル」です。
 日本人はあまり知らない話ですが、日本は非常に優れたミサイル技術を持っており、
それが周辺諸国の大変な脅威になっているというのです。
 自衛隊が保有している88式地対艦ミサイル「SSM−1」という兵器があります。
開発当時の話ですが、米国国内の射場を借りて行った試射実験で、100キロ以上先の
目標に全弾が命中しこの実験に立ち会った米軍関係者を驚愕させたのです。
 この地対艦ミサイルは、山の背後から発射されると、山谷を這うようにして飛び、海
面すれすれの高度で飛翔して水上艦艇を撃破するのです。日本の国土は山脈が連なって
いるので、それを意識して開発したミサイルであり、日本が外部から攻められたときの
国土防衛に適しているのです。そのために、陸上自衛隊には、世界でも珍しい「地対艦
ミサイル連隊」を全国に5個連隊が配備されているのです。
 このSSM−1による防衛網を突破して侵入してきた敵に対しては、ハイテク・ミサ
イル「96式多目的誘導弾」が襲います。このミサイルは、世界ではじめて光ファイバ
ーTVM赤外線画像誘導方式を採用しており、はるか後方の射手が、光ファイバーで送
られる画像を確認しながら、飛翔するミサイルを誘導するのでその命中精度はきわめて
高いのです。
 ところで日本は、こういう防衛開発費をどのぐらいかけているのでしょうか。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       ≪2003年度≫
       日本の防衛予算総額 ・・・・・ 4兆9265億円
       うち防衛研究開発費 ・・・・・   1470億円
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 日本の防衛研究開発費は年間1470億円であり、防衛予算総額のわずか3%です。
これは、米国の30分の1であり、英国やフランスと比較しても半分以下です。防衛予
算総額に占める防衛研究開発費の割合で比較しても、米国14%、英国・フランスはと
もに10%と比較にならないのです。
 それでも88式地対艦ミサイル「SSM−1」や、ハイテク・ミサイル「96式多目
的誘導弾」のような優れた兵器を開発できたのは、日本の工業技術のレベルが非常に高
いからです。
 現在、自衛隊で使われている国産兵器は、日本を代表する一流の企業群によって、設
計・製造・ライセンス生産が行われてきた結果であるといえます。民需製品開発で培わ
れた高い技術力と品質管理のノウハウが惜しみなく注ぎ込まれているのです。
 これは、現在問題を抱えているロケットや衛星の開発と同じスタイルなのですが、兵
器の面ではうまくいっているようです。それが周辺諸国に大変な脅威になっているので
す。                      ・・・ [自衛隊の実力/10]

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2007年06月08日

●自衛隊は世界に例をみない”軍隊”(EJ第1380号)

 第6の自衛隊の世界一は、「世界最高のレベルのパイロットと整備員」です。
 航空自衛隊の主力戦闘機をご存知でしょうか。
 F15J/DJ戦闘機――これが答です。この戦闘機は、旧マクドネル・ダグラス社
(現ボーイング社)が開発し、あの三菱重工がライセンス生産した世界最強の戦闘機で
す。F15戦闘機のデータを上げておきます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         ≪F15J/DJ戦闘機≫
         最高速度 ・・・・・・・・・・ マッハ2.5
         機関砲 ・・・・・・・・・・・     1門
         空対空レーダー追尾ミサイル ・     4発
         空対空赤外線追尾ミサイル ・・     4発
         航続距離 ・・・・・・・・・・ 4600キロ
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 F15戦闘機は、現在次の基地に合計200機が配備され、日本の空の守りに当って
います。
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         千歳基地 ・・・・・・・・ 第二航空団/北海道
         小松基地 ・・・・・・・・ 第六航空団/石川県
         百里基地 ・・・・・・・・ 第七航空団/茨城県
         築城基地 ・・・・・・・・ 第八航空団/福岡県
         新田基地 ・・・・・・・・ 第五航空団/宮崎県
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 日本の国土の広さから考えて、その保有数だけでも最強空軍といえるのですが、ここ
で世界一というべきなのは、その稼働率の高さなのです。稼働率とは、保有数のうちい
つでも使える飛行機のことです。
 正確な数字が把握できていませんが、日本、中国、米国の稼働率を比較してみます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       ≪主力戦闘機の稼働率≫
        日 本 ・・・・・ 90%
        中 国 ・・・・・ 65%以下(スホーイ27)
        米 国 ・・・・・ 80%
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 現在の最新戦闘機は、高度な電子機器を満載しています。したがって、それを維持管
理していくことは並大抵のことではないのです。まして高い稼働率を維持するには、優秀な整備員と円滑な部品供給が不可欠なのです。
 中国の最新鋭戦闘機スホーイ27などは、1年間で12機を損失した記録が残ってい
ますが、航空自衛隊の場合、1980年から今日までの20年以上の間に、事故などで
失われたF15戦闘機は9機のみなのです。これは、自衛隊の機体整備の優秀さとパイ
ロットの技量の高さの証明といえます。
 第7の自衛隊の世界一は、「世界一質と士気の高さを誇る自衛隊将兵」です。
 世界一不思議な憲法によって「軍隊でない」とされている自衛隊――かつて軍人にな
ることが名誉とされた戦前とはまるで違う軍人に冷淡な戦後の逆風――その中にあって、自衛隊の志願率と士気の高さが世界一といったら驚かれるでしょうか。
 まず志願率をチェックしてみます。高等教育を受けた者を対象とする二士(二等兵)
の応募率は次の通りです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       ≪2002年度≫
              応募者数   採用数    倍率
       二士男子 26005名 7862名 3.30倍
       二士女子  4445名  678名 6.55倍
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 これは二士の志願状況ですが、4年制大学以上の学歴を有する人に受験資格のある幹
部候補生学校の競争率は、男子は43倍、女子は67倍なのです。もの凄い競争率とい
えます。
 ところで、少年自衛隊学校というのをご存知ですか。昔の「陸軍幼年学校」の自衛隊
版と考えてよいでしょう。
 少年自衛隊学校は、陸海空自衛隊それぞれに次の名前の学校があり、中学を卒業した
15歳〜17歳の少年に入学資格がある学校なのです。これは世界に例がありません。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         陸上自衛隊 ・・・・・ 少年工科学校
         海上自衛隊 ・・・・・ 第一術科学校生徒部
         航空自衛隊 ・・・・・ 航空教育隊生徒隊
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 驚くべきことは、この学校も凄い競争率なのです。陸自の少年工科学校の倍率は27
倍(定員250名)といいますから、各都道府県の進学校に優るとも劣らない難易度で
す。
 少年工科学校では、入学と同時に三等陸士に任命され、三年間の教育が終わると、陸
士長に昇進するのです。また、入学すると生徒は県下有数の湘南高校の通信制課程に入
学することになっており、少年工科学校の教育課程終了時には湘南高校の卒業資格が与
えられるのです。彼らは、自衛官ではあるが、高校生であるからです。
 生徒たちの日常生活は、今時の高校生にはつとまらない厳しいものであり、明らかに
自衛隊の中では通常の若者とは違う日本人が育っているといえます。
 24万人の将兵全員が高等学校以上の教育を受けた者で構成されている志願制の自衛隊――このような軍隊は世界でも稀有の存在です。しかも、その入学志願者の数は世界
一競争が激しいのです。士気について言及する必要はないでしょう。自衛隊に冷たい世
間の逆風にもめげす、そういう難関に大勢の若者が応募してくるのですから…。以上が
自衛隊7つの世界一です。            ・・・ [自衛隊の実力/11]

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2007年06月11日

●自衛隊は在日米軍の補完部隊(EJ第1381号)

 イージス艦やF15戦闘機は米国で開発した兵器です。日本はこれを「ライセンス生
産」しているのですが、この「ライセンス生産」とは何でしょうか。
 「ライセンス」とは生産許可です。自衛隊における「ライセンス生産」とは航空機、
車両、火器、電子機器などを海外のメーカからライセンスを取り、国内メーカによって
生産します。
 もっとも海外のメーカといっても兵器の場合、そのほとんどは米国に限定されていま
す。ライセンス生産で問題となるのは、国産化率です。一口にライセンス生産といって
も、その国産化率はものによって違ってくるのです。
 とくに日本の場合は技術力が高いですから、ほとんど100%国産で生産できるので
本来であれば国産化率は高くなるはずです。しかし、戦闘機やジェットエンジンのよう
に国産化率が制限されるものがあります。それは政治的理由によるものです。
 おそらく日本はどのような兵器でも、生産許可とその設計図を渡されれば、国産化率
100%で生産し、その品質は元のメーカのそれよりも高くなる――それが日本の技術
の凄いところです。
 部品自体の品質は日本の方が優れているので、国産化率は高くなる傾向にあります。
しかし、それではライセンス生産とはいえ日本製品になってしまうので、兵器について
は、日本側に技術情報が開示されない「ブラックボックス」の機器が一部必ず搭載され
るのです。そして、この機器は日本で修理することができないようになっています。イ
ージス艦やF15戦闘機にもそのブラックボックス機器は搭載されています。つまり、
兵器の肝は完全に米国に握られているのです。
 EJ第1378号で、F2戦闘機は日米共同開発であり、その開発分担比率は日本6
:米国4であると書きました。この開発において、日本独自の複合材による主翼の一体
形成技術とアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダー技術は米国に吸い上げられてい
るのに、日本が米国から得た最新技術はほとんどなかったといいます。それでいて米国
は、開発分担比率は4しか負わないのですから、米国にとっては大変有利なわけです。
 しかも、米国は日本から吸い上げた最新技術を転用して兵器を生産し、海外に輸出し
て莫大な利益を上げているのです。ところが開発元である日本は武器輸出を禁じられて
いるので何もできない――米国としては、兵器市場において日本は絶対に競合相手にな
らないのですから、こんな有難いことはないのです。
 また、このようにして開発した兵器の重要な一部――長距離ミサイルや長距離砲、地
対艦ミサイル、多連装ロケットシステムなどは日本国内で試射ができないので、日米安
全保障条約に基づいて、米国の演習場を借りて行っているのです。
 このように自衛隊はいろいろな面で不本意な対米従属を強いられており、安全保障面
においては、米国なしには何もできないシステムになっているのです。いわば、現在の
自衛隊は、米軍の補完部隊となのです。つまり、自衛隊は米軍と一体化してはじめて完
結した戦力になれるのです。こうしておくことで、自衛隊が自立することをむしろ防い
でいるといってもよいと思います。これは、米国の安全保障の戦略なのです。
 自衛隊が米軍の補完部隊であることは、在日米軍の戦力の配備状況を調べて見ると納
得できます。
 米軍の総兵力は137万人――そのうちアジア太平洋地域に海外展開する兵力は9万
人、そのうち4万人が在日米軍です。これに対してオーストラリアに駐留する在豪米軍
は188人、フィリピン、タイ、シンガポールなど東南アジア諸国のそれをすべて足し
ても500人を切るのです。このことから考えても米軍の世界戦略上、日本がいかに重
要な拠点であるかがわかります。
 ところが意外なことに、在日米軍の総兵力のうち、陸軍戦力はわずかに1800人程
度であり、装備にしても米陸軍の主力戦車M1はおろか戦闘車両(FV)は1両もなく
上陸してくる敵を迎え撃つ米陸軍主力戦闘ヘリ・AH64アパッチもないのです。
 これに対して、米海軍は、艦載機を含め作戦機約200機を日本各地の地上の米航空
基地に展開させ、さらに第七艦隊を主力とする艦艇40隻を横須賀・佐世保に停泊させ
ています。海軍は陸軍とは比較にならない規模の兵力を配備しています。
 しかし、基地防空を担当するはずのパトリオットミサイルを配備していないうえに、
周辺海域の安全航行を確保するための掃海部隊も置いていないのです。
 さらに日本の北の守りである北海道には米軍は一切の兵力を置いておらず、その代わ
り、沖縄には1万9000人の米海兵隊が駐留しています。このように考えると、非常
にちくはぐな感じがします。
 しかし、このちくはぐ感は、そういう地域に置かれている自衛隊や各種装備を見ると
納得がいくのです。パトリオットミサイルについていうと、米軍基地のある三沢、横田
、横須賀、岩国、沖縄については、航空自衛隊のパトリオットミサイルのカバーエリア
に入っています。つまり、在日米軍基地の防空は、航空自衛隊がその任務を負っている
のです。
 米軍が1兵もいない北海道に関しては、陸上自衛隊がその戦力の大半を割いて防衛し
ていること、さらにF15戦闘機で編成された航空自衛隊の二個飛行隊(約40機)が
空を守っているのに対し、米海兵隊が1万9000人もいる沖縄では、陸上自衛隊の第
1構成団が配置されているものの、戦闘の主力となる普通科部隊(歩兵)は1個連隊に
相当する人数しか配備されていないといった具合です。
 要するに、日本という国を米軍と自衛隊がうまく役割分担して守っていることになり
ます。そのためにこそ、米軍と自衛隊はかなり頻繁に共同訓練を重ねてきており、その
息はぴったりと合っているのです。米国は、極東の重要拠点である日本列島を自衛隊の
戦力に合わせて、米軍を効率的に配備している――そのようにいえると思います。自衛
隊は在日米軍と一体となって日本列島を守っているのです。
・・・ [自衛隊の実力/12]

2007年06月12日

●日中もし戦えばどちらが勝つか(EJ第1382号)

 多くの日本人は、自衛隊は実戦経験はないし、あまり頼りにはならないと考えていま
す。しかし、自衛隊は世界一実戦経験が豊富な在日米軍と実戦さながらの緊密な合同訓
練を何回も行い、経験を積んできています。まさに、自衛隊と在日米軍は、まるで1つ
の軍隊のように、日本列島を守っているのです。
 そこで、自衛隊の実力がどの程度のものかを知るために、軍事ジャーナリスト井上和
彦氏のレポートを参考にして、現在脅威を増しつつある中国軍との戦力比較を行ってみ
ます。
 しかし、現実問題として、仮に日本と中国の間に第2次日中戦争が勃発した場合、米
国や台湾が日本に加勢することは確実であり、単独戦争は考えられないことですが、こ
こではあえて日中双方が研究・開発にしのぎを削る主要兵器による「一騎討ち」を想定
して、両軍の主戦力を比較してみます。
 第1に「空の戦い」です。
 現代戦は空から戦端が切られます。かつての湾岸戦争、アフガニスタン戦争、そして
今回のイラク戦争――いずれも、空から戦端が切られています。したがって、各国は空
軍力の整備・近代化に懸命に取り組んでおり、日中両国もその例外ではないのです。
 保有戦闘機の数を比較すると次のようになります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
            日本 ・・・・・  360機
            中国 ・・・・・ 2570機
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 保有台数では比較になりません。中国は日本の7倍もの戦闘機を持っています。しか
し、戦闘機の質を見ると中国の戦闘機はかってソ連が開発した「ミグ19」ないし「ミ
グ21」の改良型ばかりであり、もはや骨董品級の代物なのです。
 これに対して航空自衛隊は、次のように近代的戦闘機をずらりと揃えているのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
          F15戦闘機 ・・・・・ 200機
          F 4戦闘機 ・・・・・  90機
          F 2戦闘機 ・・・・・  40機
          F 1戦闘機 ・・・・・  30機
              ―――――――――――――――――
                       360機
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 しかし、中国は、1998年からロシアの最新鋭戦闘機「スホーイ27」の配備をは
じめています。これは最終的には250機が配備される予定です。加えて、「スホーイ
27」の発展型である「スホーイ30」150機の配備も計画されており、これが揃え
ば、やっと日本と互角に渡り合える航空戦力となるのです。
 しかし、戦闘機の優位性は、こうしたハード面だけでは決まらないのです。とくにこ
うしたハイテク戦闘機の場合、いかに機を使いこなせるかにかかっています。その尺度
となるのは、飛行時間なのです。これについては、日本と中国の間には決定的な差がつ
いているのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
        ≪飛行時間≫
         航空自衛隊 ・・・・・ 年間最低150時間
         中国空軍  ・・・・・ 年間平均 25時間
         スホーイ27部隊 ・・ 年間平均100時間
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 加えて、中国海軍は、慢性的な部品の欠乏という問題を抱えていて、飛べない戦闘機
が多いのです。中国のスホーイ戦闘機の稼働率は60%といわれています。これに対し
て日本のF15戦闘機は、故障しても翌朝には飛び立てる状況になっており、その稼働
率は90%です。
 さらに、ロシアやイスラエルの技術支援を受けて成長を続ける中国空軍は日本にとっ
て脅威であり、米軍の持つ中距離空対空ミサイル「AMRAAM(アムラーム)」に匹
敵する99式空対空誘導弾のF15戦闘機への標準装備化をはじめ、赤外線誘導方式の
新短距離空対空誘導弾の開発をするなど、F15戦闘機による航空優勢を確保しようと
しているのです。
 また、航空自衛隊は、早期警戒管制機AWACSの導入と空中給油機の導入に踏み切
り、これによって中国空軍を圧倒しています。AWACSは、水平線の彼方から飛来す
る敵機を早期に捕捉し、あらゆる情報をF15戦闘機に伝え、適切な航空管制によって
効率のよい空中戦闘を実現することが可能になっています。加えて、空中給油ができる
ので、航続距離の伸張と長時間戦闘が可能になっていることも強調しておきます。
 こういうわけで、今のところ数は少ないものの、質の面で日本は中国空軍を圧倒して
おり、空の戦いにおいては、日本が中国に対して優位に立っているといえます。
 第2に「海の戦い」です。
 保有する艦艇と人員で比較してみます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                艦艇      人員
         海上自衛隊 140隻   4万4000人
         中国海軍  740席  22万0000人
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 やはり艦艇の数および人員において日本は中国に圧倒されています。しかし、中国の
水上艦艇のほとんどは、現代戦にはとても耐えられない旧式艦であり、イージス艦をは
じめハイテク艦をずらりと揃える海上自衛隊の敵ではないのです。
 しかし、中国はやはりロシアからソブレメンヌイ級駆逐艦を導入するなど、急ピッチ
で近代化を進めているのです。中でも力を入れているのは、潜水艦戦力であり急速に近
代化されつつあるのです。中国の潜水艦戦力は日本にとって大いなる脅威となります。
これについては、明日のEJで述べます。      ・・・[自衛隊の実力/13]

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2007年06月13日

●尖閣諸島に上陸されたらどうなる(EJ第1383号)

 今日は自衛隊創設50周年に当たります。引き続き対中国との潜水艦戦力の比較論に
ついて述べます。保有台数の比較です。
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       海上自衛隊 ・・・・・ 16隻
       中国海軍  ・・・・・ 65隻(原子力潜水艦6隻)
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 保有台数の比較では、圧倒的に中国海軍の方が上です。現在、65隻ですが、ロシア
の「『キロ』級潜水艦」を12隻保有しています。『キロ』級潜水艦とは正式には「バ
ルトゥウス877型潜水艦」と呼ばれ、約700キロの水中航続距離を有するハイテク
潜水艦です。
 しかし、中国の潜水艦の運用には大きな問題点があるのです。というのは、これまで
はもっぱら、近海の大陸棚――深度150メートル程度の浅海域を中心に活動してきて
いるので、深度のある太平洋での運用の経験が乏しいということです。
 しかし、かつて日本海軍は世界最大規模といわれたソ連の潜水艦隊と半世紀にわたっ
て対峙してきた経験を持っており、それが脈々と現在の海上自衛隊に受け継がれて、世
界一の対潜能力を持つにいたっているのです。
 とくに海上自衛隊は、ロシアの潜水艦に関する水中での音紋などのあらゆるデータを
持っており、キロ級潜水艦についてもデータは把握されているはずです。音紋とは水中
で潜水艦が発する艦種ごとの音のことです。
 それにロシアの潜水艦は、現在も慢性的な部品不足に陥っており、ひとたび故障する
とすぐには修理ができず、稼働率を下げる原因となっているのです。これは潜水艦に限
ったことではなく、ロシアの兵器を運用していくのはかなりの覚悟が必要なのです。
 しかし、そうはいっても海上自衛隊の潜水艦はわずかに16隻――これで中国の潜水
艦に対抗できるのでしょうか。これについて、沖縄の第五航空群司令として東シナ海で
実際に中国の潜水艦と対峙した経験を持つ元海将補(中将)・川村純彦氏は次のように
述べています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       中国の潜水艦を大陸棚に閉じ込めてしまえば、シーレーンへ
      の脅威は低減します。しかし、彼らが外洋に出ても、P3Cに
      よって確実に捕捉・殲滅されるでしょう。中国が配備をはじめ
      たキロ級潜水艦といえども通常潜水艦です。通常潜水艦は、水
      中航行の動力となるバッテリーの充電のため、周期的にスノー
      ケルを海面上に出さなければならないのです。P3Cはそのと
      きを逃さず、捕捉して、有効な攻撃を仕掛けることができるの
      です。とにかく中国の潜水艦にとってP3Cはたいへんな脅威
      なのです。 ――川村純彦氏/井上和彦著、『そのとき自衛隊は
                      戦えるか』より。扶桑社刊
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 川村元海将補の話にもあるように、現在の中国の潜水艦戦力なら海上自衛隊は、たと
え16隻でも中国海軍に圧勝できるという実力レベルなのです。
 第3に「陸の戦い」です。
 まず、総兵力と戦車の保有数で比較してみます。もちろん数では比較になりません。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                  兵 力    戦 車
          陸上自衛隊  15万人  1000両
          中国陸軍  160万人  8300両
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 問題はこの兵力で戦えるのかということです。しかし、日本列島を守るということで
あれば、日本列島はそれ自体が難攻不落の要塞なのです。それに、ここまでご紹介して
きたように、航空自衛隊、海上自衛隊の戦力は強力であり、この防御網を突破すること
は、きわめて困難です。かつての「元寇」のように大船団を率いて押し寄せることは考
えられないことです。
 仮に中国海軍がそうしてきたとしても、陸上自衛隊の88式地対艦ミサイルが上陸予
定地点よりもはるか洋上で大船団に襲いかかり、上陸部隊は壊滅的な打撃を受けるはず
です。
 それでも上陸してきたとすると、今度は水際でMLRS多連装ロケットシステムをは
じめとする強力な重砲の洗礼を受けることになります。それを潜り抜けて上陸してきた
場合には、大小さまざまなハイテク誘導弾や狙撃に加えて、戦車、戦闘ヘリによる精密
射撃からはけっして逃れられないでしょう。それがわかっているから、在日米軍は沖縄
以外には最小限度の陸軍の兵力しか置いていないのです。
 そこで考えられるのは、空挺部隊や小規模精鋭部隊が沖縄周辺の離島に上陸するケー
スです。もっとも危ないのが尖閣諸島への上陸です。ひとたび離島が実効支配されてし
まうと、国際紛争を解決手段としての武力を放棄している日本政府は何もできないこと
になります。
 これに対して沖縄本島に配置されているのは、総兵力600名ほどの陸上自衛隊の第
一混成群だけです。そこで、この場合、那覇の第83航空隊のF4戦闘機による対地攻
撃を仕掛けるとともに、佐世保から護衛艦を急派して周辺海域を海上封鎖して敵の上陸
部隊を孤立化させる作戦をとるはずです。
 さらに島に侵入した敵の部隊に対して、陸上自衛隊西部方面総監直轄の西部方面普通
科連隊(長崎)が投入されることになるはずです。これは、ゲリラ・コマンド部隊であ
り、ヘリコプターによる空中機動能力を備えているため、敵の離島侵攻作戦に対して迅
速・適切に対処できます。
 また、これに加えて海上自衛隊の特別警備隊の投入も考えられます。この部隊は闇夜
に乗じて水中から潜入する能力を持つ特殊部隊です。こういうさまざまなケースに対応
するしシナリオがあらかじめ作られ、訓練が行われているのです。
                         ・・・[自衛隊の実力/14]

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2007年06月14日

●日本の船員と商船が減っている(EJ第1384号)

 東京のお台場に「船の科学館」というのがあります。そこに昨年の5月から、北朝鮮
の工作船が、引き揚げた船体と武器など、回収物が一般公開されています。
 2001年12月22日、奄美大島沖の海上で北朝鮮所属の工作船が海上保安庁の巡
視船「あまみ」と銃撃戦を展開し工作船は沈没しています。自爆といわれていますが、
海上保安庁が沈めたことは間違いないのです。
 しかし、1999年2月5日、北朝鮮の不審船2隻が佐渡島と能登半島沖で発見され
たとき、海上自衛隊の護衛艦が出動し、砲撃を加えています。しかし、このときの砲撃
は空鉄砲であり、わざと当らないように撃っているのです。そのうえ、本気で追尾せず
に逃がしており、船が北朝鮮の清津港に入ったことを確認したにもかかわらず、日本政
府は何も抗議していないのです。
 海上保安庁は本気で撃っているのに、海上自衛隊は空鉄砲――法律で縛っているため
にこのようなすっきりしないことになるのです。海上自衛隊が軍隊ではないからです。
今まで述べてきたように、日本の自衛隊は軍隊としては精強なのですが、法律でがんじ
がらめに縛られていて、その力をほとんど発揮できないようになっているのです。これ
では国防にはならないのです。
 日本人が自衛隊を軍隊であると認めて、海上自衛隊の船を軍艦として正式に認知する
と、それは国内外で軍隊としての権限を持つことになります。軍艦は治外法権であって
外国では外交官と同じように扱われるのです。
 例えば、海上自衛隊の船がペルシャ湾などに行く場合、相手国から検疫がきても、警
察がきても拒否できるし、広い海の上で悪事を働く海賊のような船があったら、それを
捕まえる権限もあるのです。そういう権限が国際的に認められているのです。
 日本では自衛隊は軍隊ではありませんが、外国では軍隊として認めてくれています。
ですから、海上自衛隊の船が外国に行くと軍艦としての扱いですが、日本に帰ってくる
と軍艦ではなくなるのです。したがって、検疫も受けなければならないし、密輸をして
いないかどうかの検査も受けることになるのです。
 今回のイラク戦争で、航空自衛隊はC−130を派遣しましたが、ものが日本から向
こうに行くので、貿易法上の手続きをすべて行う必要があり、さらに輸出という扱いに
なる関係上、経済産業省に届け出なければならないのです。もし、自衛隊が軍隊である
なら、このようなことはしなくて済むのです。こういうことは一般の国民はあまり考え
ていないと思います。
 元海上自衛隊幕僚長の林崎千明氏は、『自衛隊の現場から見る日本の安全保障』(自由
国民社刊)という本に論文を寄稿し、その中で、減る一方の日本の船員と船について、
警告を発しています。日本は、貿易で生きており、資源を輸入して、加工して、それを
売って生活の糧を得ています。そういう日本にとって、船員と船の減少は深刻な事態で
あり、国防にも大きく影響します。
 海外との貿易に使う日本の船や外航船の船員は、現在何人ぐらいいるかご存知でしょ
うか。
 2003年度の国土交通省の「海事レポート」(添付ファイル参照)によると、20
02年10月の時点でわずか3800人しかいないというのです。これに漁船員を含め
ると、日本の船員は約9万人しかいないのです。25年前には、28万人の船員がいた
のですが、年を追うにしたがって減少し、現在では3分の1になってしまっています。
 昨年の10月1日に、歴史のある東京商船大学は、東京水産大学と合併し、東京海洋
大学となりましたが、これは明らかに船員の減少が原因であると思われます。
 それでは、日本の外航商船の数はどのくらいあるか、ご存知でしょうか。
 1988隻――これが正解です。しかし、日本の船会社が所有し、しかも船籍を日本
に置いている船は、たったの110隻なのです。つまり、日本国家に対して税金を払っ
ている船は110隻しかないということです。
 日本は世界中から年間に約8億トン輸入し、輸出は約1億トン――そういう国です。
8億トンのものを輸入するには2000隻程度の船ではとても足りないのです。そのた
め、輸入のうちの半分以上が外国船をチャーターしているのです。
 それに船員が減少しているので、それへの対応も必要です。そこで、2000隻のう
ちの1900隻を「便宜置籍船」にして、パナマやリベリアなどに置いているのです。
「便宜置籍船」とは日本の船なのですが、税金などの配慮から、便宜を提供する国に船
籍を登録している船のことです。
 これらの便宜置籍船は、船長は日本人ですが、他の船員はすべてフィリピンやマレー
シア、中国などの船員が乗っています。はじめのうちは、船長、事務長、通信長などは
日本人だったのですが、最近では、日本人は船長だけになってしまっています。コスト
の関係でリストラされたわけです。
 商船は、有事のときは軍用船として使えるようにする――これは海の守りの基本であ
り、各国は補助金を出して必要な設備をつけさせています。つまり、有事のさいに軍用
船として使えるように、軍に適合する通信機を搭載したり、軍のトラックを積んだりで
きる装備を施すのです。
 船会社としては、船のスピードは20ノットもあればいいのに軍と一緒に行動する必
要があるので、22ノットで走行できるようにする――この場合、2ノット分の補助金
を国が出すのです。米国、英国、フランスという先進国はいずれもそういう補助金を出
しているのです。
 英国にクイーンエリザベス号という商船がありますが、これには軍用として使える装
備が施されています。もし、英国が戦争をはじめたら、クイーンエリザベス号は英国海
軍が徴用し、軍人を運ぶことができるようになっています。これに対して日本は、そう
いうことを一切やっていないのです。        ・・・[自衛隊の実力/15]

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2007年06月15日

●新国立劇場が武装ゲリラに襲撃されたとき(EJ第1285号)

 ここまで述べてきたことからわかるように、自衛隊は旧日本軍の良いところを受け継
いでおり、大変精強な「軍隊」なのです。しかし、法律が自衛隊を縛っており、そのや
れることは極めて限られています。
 確かに今国会において、日本有事のさいに国民を守るための避難や救援の手続きを定
める国民保護法など、有事法制関連7法が2004年6月14日、参院本会議で自民、
公明、民主3党などの賛成多数で可決、成立しています。
 これに昨年6月に成立した武力攻撃事態対処法とあわせ、日本有事や大規模テロへの
備えとしての政府が進めてきた有事法制の骨格が、野党第1党の民主党の賛成も得て整
ったことになるのですが、その内容は今までに比べて多少マシといった程度で、いまだ
に大きな問題点を抱えたままなのです。
 そこで事例として、2002年10月にロシアで起こったモスクワ劇場でのテロ――
もし、あのようなテロが日本で起きた場合、どのように対処することになるのかについ
て考えてみます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       ○月×日、東京・新宿の新国立劇場に複数の武装ゲリラが潜
      入し、1000人以上の観客を人質にして劇場に立てこもる事
      件が発生。犯行声明はなく、犯人は何者かわからない。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 この場合、相手が何者がわからないので、警察の出番となるのです。警視庁は、劇場
を機動隊で包囲し、万一のことも考えて東京消防庁から救急車を待機させたのです。
 さらに初期的な対応として、警視庁第6機動隊に所属するSAT(特殊急襲部隊)が
犯行グループと交戦することが検討されるはずです。SATは警察の対テロ特殊部隊で
、全国7都道府県県警のもとに合計約200人が配備されています。
 しかし、次の日、電話の交信記録と電波傍受によってこの犯行グループが北朝鮮の武
装工作員であることが判明したとします。これで犯人は特定されたのです。
 こうなるとSATでは対応が困難になります。犯行グループが北朝鮮の特殊部隊とい
うことになると、RPG7対戦車ロケット弾をはじめとする強力な武器を装備している
可能性があり、兵士自体も練度の高いエリート兵士と考えられるからです。
 このとき、日本の首相は、次の2つの措置をとることができるのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       1.自衛隊に「治安出動」を命令/自衛隊法第78条
       2.自衛隊に「防衛出動」を命令/自衛隊法第76条
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 1の措置「自衛隊に「治安出動」を命令」した場合、陸上自衛隊第一師団・第一普通
科連隊(練馬)が派遣されることになると思います。この部隊は、都市型ゲリラ戦に精
通している部隊であるからです。
 しかし、ここに大きな法律の障壁が立ちはだかるのです。それは、日本政府がこの事
件を国内の「犯罪」としてとらえているので、出動を命ぜられた自衛隊員は「迷彩服を
着た警察官」ということになり、警察官職務執行法第7条が適用されるのです。そうす
ると、ろくに武器も使えなくなってしまうのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       ≪警察官職務執行法第7条≫
       警察官は、犯人の逮捕もしくは逃走の防止、自己もしくは他
      人に対する防衛または防護または公務執行に対する抵抗の抑止
      のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、
      その事態に応じ、合理的に必要とされる限度において、武器を
      使用することができる。(以下、省略)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ですから、ペルーの大使館占拠事件のときのように、強行突入して、犯人を全員射殺
してしまうなどということは絶対にできないのです。そんなことをすれば、自衛官が罪
に問われるのです。
 それでは、自衛隊がその力を発揮できるようにするには、どうしたらよいのでしょう
か。それは、首相がこの事件を他国軍隊との交戦――つまり、戦争ととらえ、自衛隊法
第76条に基づいて「防衛出動」を命令すればよいのです。
 これによってはじめて自衛隊は、武装ゲリラと戦えることになります。しかし、ジュ
ネーブ条約およびハーグ条約など戦時国際法のもとで、戦うことになります。
 自衛隊が防衛出動し、交戦のすえゲリラが降伏したと仮定してみましょう。日本の国
内で起こった犯罪ですから、当然犯人たちを尋問し、刑務所に収監する――と普通は考
えますが、それはできないのです。
 これは警察の手を離れた戦争であり、国内犯罪ではないからです。犯行グループの彼
らの身分は「軍人」であり、彼らをジュネーブ条約にしたがって処遇――つまり、捕虜
として扱わなければならないからです。
 したがって、捕虜に対しては、氏名などの情報以外を詰問できないし、あくまで戦時
捕虜として「捕虜収容所」に収容し、そして戦争終了後、日本政府は捕虜をすみやかに
送還しなければならないのです。
 したがって、この事件はあくまで「治安出動」して、自衛隊によって事態を収拾すべ
きなのです。そのため、警職法を改正すべきです。そうすれば、国内の犯罪事件として
犯人を日本の法律によって裁くことができるのです。
 警職法は、日本が世界に誇る治安のよい国であったときに制定されており、当時は凶
悪犯罪を行うような外国人が不法入国していない――それどころか外国人自体が珍しい
時代にできた法律なのです。しかし、今回の有事法制においては、警職法は何も改正さ
れていないのです。これではテロに対処できないのです。・・[自衛隊の実力/16]

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2007年06月18日

●武士道精神のある自衛隊員(EJ第1386号)

 天皇陛下をはじめ、歴代首相の外遊になどに使われる政府専用機――尾翼の大きな日
の丸と「日本国」の文字が印象的です。このところ、小泉首相の北朝鮮訪問などでテレ
ビで見る機会が多い政府専用機ですが、この飛行機、どこの航空会社が運用しているか
ご存知でしょうか。
 実は航空会社が運用しているのではなく、航空自衛隊が運用しているのです。政府専
用機は、航空自衛隊千歳基地の「特別航空輸送隊」に所属する機体なのです。この特別
航空輸送隊は、1993年に、航空自衛隊千歳基地で、航空支援集団の隷下部隊として
発足しています。政府専用機のパイロットや航空士、空中輸送員などが所属する第70
1飛行隊のほか、整備隊、隊の本部に約150名の隊員がその運行のための任務につい
ているのです。
 この政府専用機の任務――実は大変なのです。一見優雅に見えるVIPの外遊ですが
その実態は分刻みのスケジュールに追われており、一日で数カ国を訪問する超過密スケ
ジュールのときも多いのです。しかもミスは絶対に許されないのです。
 パイロットをはじめとする飛行クルーはすべて自衛官であり、客室乗務員は女性自衛
官が担当しています。見た目は航空会社のスチュワーデスとそっくりですが、日本航空
でお化粧のしかたや接客マナーを学んでいるためです。それでいて、全員が少林寺拳法
や剣道の有段者というのですから驚きです。
 なお、海外で戦争や大災害が発生したときは、政府専用機が在外邦人救出のために派
遣されるのです。そういう役割は民間航空会社では無理であり、航空自衛隊がその任務
に就いているというわけです。
 こんな話があります。かつてアフガニスタン難民救援のために航空自衛隊のC130
輸送機が派遣されたときのことです。その派遣について野党の議員から、次のような意
見が出たのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       現行法下で自衛隊を派遣できる条件を満たす「安全な地域」
      ならば、民間の輸送機でいいじゃないか。民間機の方が(ジェ
      ット機であるから)早く着ける。       ――野党議員
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 この野党議員は自衛隊にクレームをつけるに当ってC130の知識がないです。C1
30は、搭載量20トン、その航続距離は4000キロにおよび、民間機に比べて極端
に短い滑走距離で着陸ができるのです。それに、未舗装の平地でも運用できる優れた性
能を有しているのです。
 民間ジェット旅客機とC130の離着陸に必要な距離を比較してみます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      民間ジェット旅客機 ・・ 2500〜3000メートル
      C130 ・・・・・・・       600メートル
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 つまり、未舗装の平地に降りることもあるなど、状況の変化に対する対応力は民間旅
客機にはなく、それがあるC130が必要なのです。C130はイラクにも派遣されて
います。
 もうひとつ意外に知られていないことがあります。それは南極観測です。そもそも、
南極の越冬隊員は文部科学省の職員なのですが、彼らを南極まで運ぶ南極観測船「しら
せ」は、海上自衛隊の艦艇なのです。「しらせ」をよく見ると、艦尾には「旭日旗」が
掲げられています。「しらせ」という名前は、日本人としてはじめて南極を探検した白
瀬轟陸軍中尉にちなんだものです。
 それから、日本の空港の中には、航空自衛官による航空管制が行われている空港があ
ります。千歳空港、小松空港、三沢空港など、航空自衛隊と共同使用している空港がそ
うです。しかし、この事実は知られていません。それから北海道の冬の風物詩「さっぽ
ろ雪祭り」は、陸上自衛隊の協力がなければできないことは、よく知られているところ
です。
 EJ第1383号でご紹介した井上和彦氏の本に出ているエピソードをひとつ紹介
します。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       ある自衛隊の幹部は、豪雨のなかを同僚とともに帰宅途中、
      側溝に突っ込んで身動きがとれなくなった乗用車を発見、同僚
      とともに遭難車を救助したが、求められても、国民を助けるこ
      とは「自衛官の任務」だからと名前も告げずにその場を立ち去
      った。後日、乗用車の持ち主の女性はどうしてもお礼が言いた
      いと、彼らが自衛官ではないかと想像をめぐらせて、近くの駐
      屯地に問い合わせたところ、その特徴的な人相からこの幹部が
      判明した。
         ――井上和彦著、『そのとき自衛隊は戦えるか』、扶桑社刊
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 こういう話は、枚挙にいとまがないくらいあるといいます。また、今回のイラク派遣
についても大勢の自衛官が自ら志願したといいます。自衛隊ウォッチャーとして長い経
験を持つ井上和彦氏は自衛隊について次のようにいっています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       自衛隊には、現代の日本人がどこかに置き忘れてしまった何
      かがある。これまで日本が世界に誇ってきた「道徳」はすでに
      崩壊した。が、いまも落し物の掲示板に「現金」なるものが表
      示されているのは、もはや自衛隊の施設のなかだけだろう。彼
      らは、国際社会の厳しい現実と向き合いながら、日本古来の美
      しい魂を守りつづけているのだ。      ――上掲書より
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 戦後の日本人は平和を声高に唱えることが良識であると錯覚し平和を守るために本
当に何が必要であるかということを考えるのを軽んじてきたと思います。そして、軍事
という現実から目をそらすことで、平和という理想が実現されると思い込んできたと思
うのです。こうした日本人の姿勢が、周辺諸国の日本脅威論を生んでしまう原因である
――そのように考えられます。           ・・・[自衛隊の実力/17]

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2007年06月19日

●日本人の平和に対する考え方(EJ第1387号)

 憲法改正に頑なに反対し、その一方で自衛隊を創設して着々と軍備内容を充実してい
る――そういう日本の姿勢が周辺諸国に日本脅威論を生んでいると前回書きました。こ
の問題について、今日と明日のEJで考えてみます。
 作家の大江健三郎氏が米国で自衛隊について次のように語っています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       日本の保守派にはこの憲法が米国から押しつけられたものだ
      から改正する必要があるという意見があるが、米国の民主主義
      を愛する人たちが作った憲法なのだから、あくまで擁護すべき
      だ。軍隊(自衛隊)についても、前文にある『平和を愛する諸
      国民の公正に信頼して』とあるように、中国や朝鮮半島の人民
      たちと協力して、自衛隊の全廃を目指さねばならない。終戦か
      ら50周年のいますぐにもそのことに着手すべきだ。
              ――平成7年4月30日付、「産経新聞」より
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 日本にはこういう知識人がいるのです。「中国や朝鮮半島の人民たちと協力して、自
衛隊の全廃を目指さねばならない」についてはいったいこの人は何を考えているのかと
思ってしまいます。なぜ、中国や朝鮮半島の人々と協力しなければならないのでしょう
か。常軌を逸しているとしか思えません。
 日本人は、軍事力(軍隊)を持たなければ、平和が得られると思っているようです。
武力を持たなければ攻められないと思っているのです。しかし、これは実に甘い考え方
です。
 この考え方によって、自衛隊は創設後50年が経過しても、いまだに「軍隊」ではな
いということになっているわけです。これでは、専守防衛とはいいながら、自衛隊はほ
とんど機能できないしょう。
 日本の場合、絶対的強者が絶対的弱者に対して、力を行使することがないようにする
――こういう考え方に立って法律が作られています。警職法がその典型です。この考え
方自体は間違っていないのですが、そういう法律を作った時代背景が大きく変わってき
ているのです。
 米国でスピード違反をして、覆面パトカーに停止を命ぜられた場合、米国の警察官は
どういう対応をするかご存知でしょうか。
 警察官はまず、実弾入りの銃を抜いて突きつけて「両手を頭の後ろに組んで車から降
りろ」と命令します。そして、降りたら「車に向かって立って、車の上に両手をつけ」
と命ずるのです。それで、違反者の心臓部に後ろから銃を突きつけたままで身体検査を
して、武器を持っていないかどうかを確かめたうえで、銃をおろして交通違反の尋問に
入る――こんな具合です。
 どうでしょうか。日本とは大違いです。もちろん日本のやり方がいいに決まっていま
すが、米国は銃の保持が許されているのでこれだけ厳しくなっているのです。
 しかし、日本では、暴走族の少年に警察官が銃を抜いて諭しただけで、その警察官が
懲戒免職になるのです。米国では、警察官の任務遂行のために、警察官の人権の方を犯
罪者の人権よりも重視しているのです。この方が自然であると思いませんか。
 日本のこういう考え方は海外に派遣されている自衛隊にも厳しく課せられています。
イラクの自衛隊は、さんざん国会で神学論争が繰り返されたあげく武器の使用について
は、正当防衛と緊急避難――それ以外は相手に危害を与えてはならないということにな
っています。武力による威嚇あるいは武力の行使になるからという考え方からです。
 攻撃を受けている自衛隊員の人権よりも、攻撃を仕掛けている者に気を使うというか
襲撃者の人権を擁護しているのです。そもそもサマワを「非戦闘地域」と認定している
ところに論理矛盾があるのです。
 まず、「イラクに自衛隊を派遣しなければならない」ということが先にあって、憲法
の制約からサマワを非戦闘地域にしてしまうという乱暴な結論が出てくるのです。した
がって、そこに派遣された自衛隊員は、自分の身をまともに守れない危険な状況に晒さ
れていることになります。
 専守防衛に関しても、法的整備はきわめて遅れています。空の守りを例にあげましょ
う。国籍不明機が日本の領空に近づいてきたとします。そうすると、直ちにスクランブ
ル(緊急発進)指令が発せられ、24時間待機をしている戦闘機パイロットは3分以内
に飛び立っていきます。こういうスクランブルは、ソ連との冷戦時で1日3回、現在で
も2日に1回はかかるそうです。
 上空で目的機を発見すると、一定の距離を置いてそのまま行動監視体制に入ります。
しかし、国籍不明機がそのまま領空に近づいてくると、パイロットは「このままの進路
を保っていると日本の領空に入るので変針せよ」と英語に加えて、ロシア語、朝鮮語、
中国語で警告するのです。
 問題はここからです。相手機が指示に従わず、そのまま領空を侵犯し、攻撃を仕掛け
てきた場合です。自衛隊機には正当防衛、緊急避難は認められているので、当然のこと
ながら応戦します。しかし、仮に自衛隊機が撃墜されてしまったとするのです。そこに
もう1機自衛隊機がやってきて、味方機を撃墜して逃げて行く国籍不明機を発見したと
します。当然追尾して攻撃する――誰でもそう考えますね。
 ところが法的には追尾して攻撃できないのです。さらに、国籍不明機がわが国に対し
て、爆倉を開いて爆弾を落とそうとしているとします。この場合は攻撃できるのですが
落とし終わって出て行く国籍不明機を追尾して攻撃できないのです。このようなことで
日本の空を守れるでしょうか。
 すべては、憲法と有事法制――これによって自衛隊を正規の国軍、すなわち、軍隊と
認めていないことによって起こっているのです。専守防衛は認めているのですから、な
ぜ、自衛隊がその目的を果たせるよう、法整備をしないのでしょうか。もう神学論争は
たくさんです。                  ・・・[自衛隊の実力/18]

2007年06月20日

●本当の平和主義はどうあるべきか(EJ第1388号)

 日本の周辺諸国は、戦争を放棄している現在の憲法の下で、膨大な国防予算をかけて
自衛隊が強力な軍隊として育ちつつあることを不安視している――こういうことがよく
いわれています。
 しかし、これは大いに疑問であると思うのです。日本の国内には左派勢力を中心とし
て「何が何でも反戦!」というグループがいて、マスコミも何かというと反戦キャンペ
ーンを強める傾向があるのです。
 例えば、沖縄では、反米軍基地・反自衛隊の声が主流であるようにマスコミは伝えま
すが、その一方において米軍に基地を提供することを容認し、自衛隊誘致に熱心な地域
もかなりあることを知りながら、積極的に伝えようとはしていないのです。
 沖縄県が米軍基地から得る収入は年間2000億円で、これは観光収入に次ぐ収入源
となっているのです。もうひとつ見落とすべきではないのは、米軍基地が8000人の
日本人を雇用する沖縄県庁に次ぐ大口雇用先となっている事実をです。
 このことは、沖縄に駐屯する自衛隊の場合も同じであり、現在沖縄の自衛隊は、全国
水準の給与が保証される数少ない高収入就職先として人気の高い職場となっているの
です。このこともよく知った上で、沖縄の米軍基地問題を考える必要があります。
 同じことが日本の周辺諸国についてもいえるのです。日本のマスコミは、中国と韓国
の声を「近隣諸国の声」あるいは「アジア諸国の声」として複数形にまとめて伝えており、中国・韓国以外の諸国の声をあえて抹殺しているようなところがあります。
 インドの最高裁弁護士のラケシュ・デヴィーディ氏は、中国の軍拡を懸念して、次の
ようにいっています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       アジアで強いリーダーシップをとれる民主国家は日本とイン
      ドしかいない。中国をけん制するためにも両国が日米同盟と同
      様の関係を構築していかなければならない。
                ――ラケシュ・デヴィーディ最高裁弁護士
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 これは、日本が軍備を強化してインドと軍事同盟を結び、中国の軍拡に対抗しようと
呼びかけているのです。こういう考え方を持つ国はインドだけではなく、台湾をはじめ
マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、パラオ、オーストラリアなど多くの国々が
日本の軍事的貢献あるいはプレゼンスを求めているのです。
 これらのアジア諸国は、かつての日本軍が、歴史上ナポレオンやヒットラーも打ち破
ることができなかった帝政ロシア軍を破り太平洋戦争では、アジアのちっぽけな島国が
世界最強の米国軍や中国軍、大英帝国軍を向こうにまわして4年間も戦い抜いたことに
対する畏敬の念が明らかにあるのです。
 もちろんそれらの諸国は、日本への畏敬の念の裏返しでもある日本の軍拡へのシフト
の恐れもあるのですが、少なくとも中国と日本とは違うと考えている人が多いです。
 もし、このことに違和感を覚える人がいたら、ぜひ太平洋戦争がどういう戦争であっ
たのか、どういう経緯で戦争にいたったのか、占領統治した日本軍が相手国に何をした
かについて客観的に調べてみるとよいと思います。今なら小林よしのり氏の『戦争論』
をはじめ、多くの文献があるからです。
 本来東南アジア諸国は、太平洋戦争の激戦地であり、その被害の大きさから日本軍に
対する憎悪が強いと思われがちですが、歴史認識と対日感情は日本で報じられているも
のとは大きく異なるのです。あるフィリピン人は次のようにいっています。
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       かつて日本の統治を受けた台湾や韓国を見てください。立派
      に経済的な繁栄を遂げているでしょう。これは日本の「教育」
      の成果です。かたや、アメリカの統治を受けたフィリピンでは
      人々は鉛筆すら作ることができなかったのですよ。それはアメ
      リカが自分達の作ったものを一方的にフィリピンに売りつけて
      きたからです。            ――マリオ・ピネダ氏
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 また、マレーシアの元上院議員であるラジャー・ダト・ノンチック氏は、次のように
いっています。
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       私たちアジアの多くの国は、日本があの大東亜戦争を戦って
      くれたから独立できたのです。日本軍は、永い間アジア各国を
      植民地として支配していた西欧の勢力を追い払い、とても白人
      には勝てないとあきらめていたアジアの民族に、驚異と感動と
      自信を与えてくれました。長い間眠っていた「自分たちの祖国
      を自分の国にしよう」というこころを目醒めさせてくれたので
      す。  名越二荒之助編、『世界から見た大東亜戦争』、展転社
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 しかし、日本人の多くは「かつて日本軍はわざわざ海外に出ていって悪いことをした
のだから、これからも日本の軍隊が海外に出ると危ない」と考えています。これは「太
平洋戦争が侵略戦争であった」という催眠術をかけられているから、こういう発想にな
ってしまうのです。もし、本当に旧日本軍がそんなことをしていたら、日本は台湾をは
じめ、東南アジアの諸国から総スカンを食っているはずです。中国や韓国は思惑の違い
があるのです。
 外国の武力侵攻に対して一切抵抗しないという「非武装中立」の本質は、侵略国の武
力行使を結果として容認することになるのです。これは「容戦主義」であり、本当の平
和主義とはほど遠い考え方であると思います。
 毎年秋になると、富士総合火力演習という陸上自衛隊の大規模な実弾射撃演習が行わ
れます。この訓練には、各国の駐在武官が招待されています。
 その演習は精緻を極めるもので、ほぼ百発百中の実弾射撃が目の前で展開されるので
す。そして、各国の駐在武官に対して、暗に日本への侵略がいかに高くつくかを認識さ
せる狙いがあるといわれます。これは、安価にして、もっとも効率のよい、効果的な抑
止力となっているわけです。            ・・・[自衛隊の実力/19]

2007年06月21日

●『護憲』とは『攘夷』のことである(EJ第1389号)

 20回にわたって続けてきた自衛隊のテーマは本日で終了します。イラク派遣や憲法
改正論議が高まるおりから自衛隊の真実の姿を明らかにしてみたかったので、このテー
マをこの時期に取り上げたのです。たくさんの方からご意見をいただき、感謝しており
ます。
 「愚者は体験に学び、賢者は歴史に学ぶ」ということばがあります。平和ボケの日本
が危機的状況に陥ったとき何をしたか――これを知るには、今から150年前の国家を
揺るがす出来事を振り返ってみる必要があると思います。
 1853年のペリーによる黒船来航です。黒船というのは、当時欧米各国が保有して
いた最新鋭の戦艦のことです。それ以前の日本は、四面を海に囲まれているため世界一
安全な国であり、まさに一国平和主義そのものであったのです。
 しかし、黒船は蒸気機関で動くため、巨大な鉄砲と大量の兵員を運ぶことが可能なの
です。したがって、もし、黒船で攻められたら、日本は「丸腰」であり、防ぐ手段がな
いのです。黒船は海上から日本の都市を自由に攻撃できるからです。
 日本がそういう事態に陥る可能性を正確に警告していた学者はいたのです。 林子平
(1738〜1793)という人です。彼は『海国兵談』という著書をあらわし、次の
名言を残しています。
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        江戸の日本橋より唐・阿蘭陀まで境目なしの水路なり
                   ――林子平の『海国兵談』より
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 要するに、水路に境目はなく黒船ならどこからでも攻めてこれる。日本は安全な国で
はない。防衛力を増強せよ――林子平は、こういいたかったわけです。寛政3年(17
91)のことですから、ペリー来航よりも62年も前のことです。
 しかし、時の老中松平定信は世を惑わす不埒者として林子平を処罰し、『海国兵談』
を絶版にするという対応をとったのです。何しろ当時の日本は超平和ボケの状態だった
ので、警告を抹殺するという措置をとったのです。
 ところが、林子平の指摘したように黒船はやってきたのです。62年もの年月があっ
たのですから、開国して欧米の技術を導入すると共に、彼らに対抗できるよう軍事力を
整備し、とくに海軍を創設して対抗措置をとる――そういう手を打つことはできたはず
ですが、日本はそれを何もしなかったのです。
 それでは、黒船がやってきて日本は覚醒したのかというと、そうはならなかったので
す。実際に覚醒するまでには実に10年の歳月を要したのです。「攘夷」という名の空
想的防衛論に走ったからです。攘夷というのは要するに、外国人を追い出すことです。
実際に外人斬りをしたり、外人の居住区を焼き討ちするなどの行為が行われたのです。
 そういう状況が10年程度続いたあと、1863年に薩英戦争が勃発します。薩摩藩
は英国と実際に戦争し、黒船の攻撃で鹿児島を焦土にされてしまいます。また、長州藩
もその翌年下関で、英米仏蘭連合軍と戦い、惨敗しているのです。これによって、薩摩
も長州もやっと開国近代化路線に変換したのです。
 つまり、日本は痛い目にあって、やっと目が覚めたのです。それから4年で明治維新
は成っています。考えてみると、現在の日本は、国を守る防衛力という点では、当時と
同じ愚を繰り返しているように思います。
 ここまで見てきたように、自衛隊そのものは精強な軍隊に育っていますが、憲法をは
じめとする法律によってがんじがらめにされ、とうてい国土を防衛する軍隊としての専
守防衛の任務を果たせない状況に陥っています。
 したがって、今やるべきことは、一刻も早く憲法改正、とくに第9条を改めて、日本
人が自分の手で自分自身を守れるようにすべきであると思います。北朝鮮からノドンを
打ち込まれてからでは遅いのです。それにしても小泉首相は、独裁者国家である北朝鮮
と一年以内に国交正常化を本気でするつもりなのでしょうか。そんなことが本当にでき
ると考えているのでしょうか。
 いわゆる護憲論は、現代の攘夷論であると思っています。歴史作家の井沢元彦氏が面
白いことをいっています。
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       「攘夷」というと「右」で、「護憲」というと「左」だから
      日本人はまったく違うと思っているが、「日本刀や竹槍で黒船
      に対抗できる」というのと「平和憲法を護ることによって独裁
      者のミサイルに対抗できる」と並べてみれば一目瞭然。「空想
      的=現実無視」という点で両者はまったく同じものである。
       要するに「苛酷な現実」を見たくないので、自分をゴマカし
      ているのだ。
           ――井沢元彦著、『「反日」日本人の正体』、小学館刊
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 憲法を改正して日本が軍備を強化するのは、かつての時代に逆戻りであるという人が
います。しかし、現状のように憲法を拡大解釈し、既成事実を積み重ねていく方がはる
かに危険なことであると思うのです。
 国土防衛に関してこそ武士道を見習うべきです。武士の誇りは、「戦わない」ことで
す。それでは、なぜ刀を持っているのでしょうか。それは、抑止力であり、誇りだった
からです。簡単に人を殺せる道具を持っているけれども、使わない精神の力――それこ
そが武士の誇りだったのです。
 戦わない方がよいと誰でも思っていたのです。孫子は「戦わずして勝つことが偉大な
る将軍である」といっています。日本の国土防衛もそうあるべきです。専守防衛に十分
な装備は整えて、それを駆使する力は蓄えるけれども、それを行使しないで抑止力とし
て使う――日本人はこれができるDNAを持っています。・・[自衛隊の実力/20]
                

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2007年06月22日

●中国の姿勢転換のウラにあるもの(EJ第1304号)

 本日から25回にわたってお送りする東アジア情勢のレポートは、EJで2004年
3月9日から4月9日まで連載したものです。見かけ上現在は当時と情勢が変わってい
るように見えますが、その本質は何も変わっていないのです。そういう意味で、日本、
中国、韓国、北朝鮮について振り返ってみることは無駄ではないと考えます。今回はそ
の第1回目です。
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 米国のブッシュ政権が朝鮮半島問題の解決には中国を使うべきであるという論理を
整理すると次のようになります。
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      1.どのようなことがあっても、北朝鮮を核保有国にしては
        ならない。これだけは、絶対に阻止する必要がある。
      2.核保有国になると北朝鮮は、必ずその技術を他国に輸出
        するので、核は世界中に拡散してしまうことになる。
      3.どうしても北朝鮮が核開発をやめないなら、たとえ武力
        に訴えてでも、断固として阻止に努める必要がある。
      4.しかし、今年は「静かにする必要のある年」であり、し
        たがって、中国にはひと働きしてもらう必要がある。
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 こういう論理に立って米国は中国に対して次のような脅しをかけているフシがあり
ます。
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      北朝鮮が核開発をやれば、日本も核を持つ。そうなれば、韓国
      や台湾も核開発に踏み切る。そういう事態になって一番困るの
      は中国ではないか。    ――重村智計/長谷川慶太郎著、
      『北朝鮮自壊』より。東洋経済新聞社刊
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 しかし、それにしてもブッシュ政権になってからの中国の姿勢には明らかな変化が見
られます。もともと中国はかつての朝鮮戦争においては、米韓両国に対抗して北朝鮮の
側に立った国でありその観点に立つと、最近の中国の米国に対する協力ぶりには目を見
張るものがあるのです。一体、そこには何があったのでしょうか。米国は中国に何を与
えたのでしょうか。
 結論からいうと、それは「台湾問題」ではないかと考えられるのです。つまり、ブッ
シュ政権は台湾問題について中国に対して何かを譲ったのではないかということです。
これについては、中国を中心に東アジアの政治経済問題に詳しいフリージャーナリスト
青木直人氏がその著書、『北朝鮮処分』(祥伝社刊)などで主張されています。
 2002年10月25日、江沢民はテキサス州のクロフォードにあるブッシュ大統領
の私邸を訪ねて話し込んでいます。そのさい、江沢民は声を大にして朝鮮半島の非核を
主張し、強く反対を表明しているのです。江沢民がこれほど明確に北朝鮮の核に対して
反対の意思を明らかにしたことはなかったことです。
 中国と米国の関係を見るとき、次の3つのコミュニケを確認する必要があります。
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        1.上海コミュニケ ・・・・・ 1972年
        2.米中コミュニケ ・・・・・ 1978年
        3.米中コミュニケ ・・・・・ 1982年
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 第1の「上海コミュニケ」は、ニクソン大統領と周恩来首相が調印したときの歴史的
なものです。この中の「台湾条項」は次のようになっています。
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      台湾海峡の両側のすべての中国人が中国はただひとつであると
      主張していることをアメリカは認識しており、この見解に異議
      を唱えない。            ――ニクソン米大統領
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 このコミュニケでは、米国としての考え方はあるものの、中国が主張いる「中国はひ
とつである」とする見解に異議を唱えないと宣言し、従来の考え方よりも大きく中国に
歩み寄っています。
 第2の「米中コミュニケ」は、1978年の国交正常時におけるコミュニケであり、
第3の「米中コミュニケ」は、「台湾向けの武器売却に関するコミュニケ」です。
 整理すると、中国が台湾に関して主張していることには次の3つがあるのです。
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        1.中国はひとつ
        2.「ひとつの中国、ひとつの台湾」を認めない
        3.台湾独立反対
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 いままで米国は、あいまいな発言ながら、1と2については同調してきていますが、
3に関しては、公式発言として一切発言してきていないのです。ブッシュ政権の台湾に
関する見解はどうかということですが、江沢民との話し合いのあとブッシュ大統領は、
はっきりと3について次のように発言しています。
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       1.台湾の独立にアゲインスト ・・・ against
       2.台湾の独立に  オポーズ ・・・ oppose
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 1は、江沢民との話し合い直後の声明です。ここではアゲインストということばを使
っています。これは「反対する」というよりも「賛成しない」という程度の意味です。
 2は、胡錦涛国家主席とエビアン・サミットで会見したさいの表現です。これは「オ
ポーズ」は「反対する」という意味で