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2007年06月01日

●番匠1等陸佐は隊長ではない(EJ第1375号)

 ここまでアーレイ・バーク元米海軍大将に関連して、海上自衛隊創設(旧日本海軍再
建)について述べましたが、ひとつ漏らした話があります。
 海上自衛隊は、バーク氏のおかげもあって立派な海軍に成長しているのですが、ひと
つだけ大事なものがないのです。それは航空母艦(空母)です。もし、海上自衛隊に空
母があったら、日本の国土防衛に大いに役立つはずです。
 バーク氏に関連して、米国は日本に対し、小型空母(1万トンクラス)の供与を打診
してきたことがあるのです。海上自衛隊の前身、海上警備隊のときの話です。
 これに対して、海上警備隊首脳――ほとんどが旧海軍出身者ですが――「軽空母とは失
礼な!」と憤慨したというのです。そういう反応を聞いた米海軍は、本気でエセックス
クラス級正規空母(3万トンクラス)の供与とその護衛用の随伴艦として巡洋艦の供与
まで行おうとしたのです。もちろんこのバックにはアーレイ・バーク氏がいたのです。
 しかし、この米側の好意的な提案を当時の吉田首相は断ってしまったのです。当時日
本が置かれていた状況における政治決断とはいえ大変残念なことであると思います。現
在、空母を持つといえば、またまた大変な論議を巻き起こしてしまうからです。
 「イージス艦があるではないか」という人がいます。しかしそもそもイージス艦は、
空母護衛のための防空艦であり、搭載されている防空レーダーの高度な性能はそのため
のものなのです。しかし、肝心の空母が日本の海上自衛隊にはないのです。
 イージス艦については、かなり多くの誤解があります。とくに中国は日本のイージス
艦について、その軍事専門誌『軍事知識』(1996年10月号)の中で、イージス艦
「こんごう」について、次のように述べています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       日本の「金剛」級駆逐艦は、日本が建造した最大にして火力
      も最強の艦艇である。その艦艇が中国の目前にある長崎県の佐
      世保港に停泊しているのだ。
                ――1996年10月号『軍事知識』より
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 これには少し説明がいります。かつて日本海軍には「金剛」という主力戦艦があった
のです。イージス艦は「こんごう」と平仮名なのですが、中国語にすると「金剛」とな
ってしまうので、戦艦であると勘違いしているようなのです。
 ここまで述べてきたように、自衛隊は、海上、陸上、航空のいずれも旧日本軍がベー
スとなって発展してきています。旧日本軍がそのまま復活して発展したと考えてよいの
です。これは、朝鮮戦争が勃発したことと、それに対応する米国の戦略によってそうい
う措置がとられたのです。
 しかし、表面上は旧日本軍のイメージを引きずらないよう異常なほど気を遣い、軍隊
と警察を足して2で割ったような奇妙な名称を使ってきているのです。これは、馬鹿馬
鹿しいというよりも滑稽でさえあります。
 今年になって自衛隊がイラクで活動を開始したことに関連して改めて自衛隊の呼称
の難解さが浮き彫りになっています。第1陣の指揮官は番匠幸一郎氏でしたが、この人
の階級のわかりにくさが話題となったのです。
 新聞などでは、番匠幸一郎氏について、次のように紹介されています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
              1.番匠幸一郎指揮官
              2.番匠幸一郎隊長
              3.番匠幸一郎1等陸佐
              4.番匠幸一郎1佐
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ひとつずつ論評していきます。
 「指揮官」という名称は、自衛隊では使いません。正式な名称ではないからです。そ
れでは、「隊長」はどうかですが、結論からいうと、番匠幸一郎氏を「番匠隊長」と呼
ぶのは、大変失礼に当たるのです。民間企業にたとえれば「部長」に対して「課長」と
呼ぶのに等しいからです。
 陸上自衛隊における「隊」とは、「中隊」よりも大きく、「大隊」よりも小さい独立部
隊ということになります。番匠氏の階級は「1等陸佐」、連隊長や群長クラスというこ
とになるのです。ですから、番匠氏を「隊長」と呼ぶのは失礼なのです。
 それでは「1等陸佐」とはどういう階級でしょうか。
 軍隊の階級の名称は世界共通なのです。そうすることによって軍人は世界中どこに行
ってもそれぞれの国で階級によって同等の扱いを受けることができるのです。したがっ
て、自衛隊でも階級の英語の名称は世界共通になっています。変な呼称を使っているの
は日本語の呼称だけです。国民に旧軍隊をイメージされないようそういう変な名称を使
っているのです。
 「1等陸佐」というのは、「佐」の字が入っているので、佐官――それも「1佐」です
からコロネル、つまり大佐なのです。旧日本陸軍でいうと「陸軍大佐」ということにな
ります。この方が「1等陸佐」というより、わかりやすいですね。
 佐官の階級は3つありますが、英語の名称を書いておきます。
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          ≪陸上自衛隊≫
          大佐 ・・・ 1等陸佐 Colonel
          中佐 ・・・ 2等陸佐 Lieutenant Colonel
          少佐 ・・・ 3等陸佐 Major
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 現在、自民党国防部会の防衛政策検討小委員会において、自衛官の呼称の変更を検討
しているそうです。この自衛官の呼称については、来週取り上げます。   
・・・[自衛隊の実力/06]

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