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2007年06月15日

●新国立劇場が武装ゲリラに襲撃されたとき(EJ第1285号)

 ここまで述べてきたことからわかるように、自衛隊は旧日本軍の良いところを受け継
いでおり、大変精強な「軍隊」なのです。しかし、法律が自衛隊を縛っており、そのや
れることは極めて限られています。
 確かに今国会において、日本有事のさいに国民を守るための避難や救援の手続きを定
める国民保護法など、有事法制関連7法が2004年6月14日、参院本会議で自民、
公明、民主3党などの賛成多数で可決、成立しています。
 これに昨年6月に成立した武力攻撃事態対処法とあわせ、日本有事や大規模テロへの
備えとしての政府が進めてきた有事法制の骨格が、野党第1党の民主党の賛成も得て整
ったことになるのですが、その内容は今までに比べて多少マシといった程度で、いまだ
に大きな問題点を抱えたままなのです。
 そこで事例として、2002年10月にロシアで起こったモスクワ劇場でのテロ――
もし、あのようなテロが日本で起きた場合、どのように対処することになるのかについ
て考えてみます。
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       ○月×日、東京・新宿の新国立劇場に複数の武装ゲリラが潜
      入し、1000人以上の観客を人質にして劇場に立てこもる事
      件が発生。犯行声明はなく、犯人は何者かわからない。
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 この場合、相手が何者がわからないので、警察の出番となるのです。警視庁は、劇場
を機動隊で包囲し、万一のことも考えて東京消防庁から救急車を待機させたのです。
 さらに初期的な対応として、警視庁第6機動隊に所属するSAT(特殊急襲部隊)が
犯行グループと交戦することが検討されるはずです。SATは警察の対テロ特殊部隊で
、全国7都道府県県警のもとに合計約200人が配備されています。
 しかし、次の日、電話の交信記録と電波傍受によってこの犯行グループが北朝鮮の武
装工作員であることが判明したとします。これで犯人は特定されたのです。
 こうなるとSATでは対応が困難になります。犯行グループが北朝鮮の特殊部隊とい
うことになると、RPG7対戦車ロケット弾をはじめとする強力な武器を装備している
可能性があり、兵士自体も練度の高いエリート兵士と考えられるからです。
 このとき、日本の首相は、次の2つの措置をとることができるのです。
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       1.自衛隊に「治安出動」を命令/自衛隊法第78条
       2.自衛隊に「防衛出動」を命令/自衛隊法第76条
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 1の措置「自衛隊に「治安出動」を命令」した場合、陸上自衛隊第一師団・第一普通
科連隊(練馬)が派遣されることになると思います。この部隊は、都市型ゲリラ戦に精
通している部隊であるからです。
 しかし、ここに大きな法律の障壁が立ちはだかるのです。それは、日本政府がこの事
件を国内の「犯罪」としてとらえているので、出動を命ぜられた自衛隊員は「迷彩服を
着た警察官」ということになり、警察官職務執行法第7条が適用されるのです。そうす
ると、ろくに武器も使えなくなってしまうのです。
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       ≪警察官職務執行法第7条≫
       警察官は、犯人の逮捕もしくは逃走の防止、自己もしくは他
      人に対する防衛または防護または公務執行に対する抵抗の抑止
      のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、
      その事態に応じ、合理的に必要とされる限度において、武器を
      使用することができる。(以下、省略)
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 ですから、ペルーの大使館占拠事件のときのように、強行突入して、犯人を全員射殺
してしまうなどということは絶対にできないのです。そんなことをすれば、自衛官が罪
に問われるのです。
 それでは、自衛隊がその力を発揮できるようにするには、どうしたらよいのでしょう
か。それは、首相がこの事件を他国軍隊との交戦――つまり、戦争ととらえ、自衛隊法
第76条に基づいて「防衛出動」を命令すればよいのです。
 これによってはじめて自衛隊は、武装ゲリラと戦えることになります。しかし、ジュ
ネーブ条約およびハーグ条約など戦時国際法のもとで、戦うことになります。
 自衛隊が防衛出動し、交戦のすえゲリラが降伏したと仮定してみましょう。日本の国
内で起こった犯罪ですから、当然犯人たちを尋問し、刑務所に収監する――と普通は考
えますが、それはできないのです。
 これは警察の手を離れた戦争であり、国内犯罪ではないからです。犯行グループの彼
らの身分は「軍人」であり、彼らをジュネーブ条約にしたがって処遇――つまり、捕虜
として扱わなければならないからです。
 したがって、捕虜に対しては、氏名などの情報以外を詰問できないし、あくまで戦時
捕虜として「捕虜収容所」に収容し、そして戦争終了後、日本政府は捕虜をすみやかに
送還しなければならないのです。
 したがって、この事件はあくまで「治安出動」して、自衛隊によって事態を収拾すべ
きなのです。そのため、警職法を改正すべきです。そうすれば、国内の犯罪事件として
犯人を日本の法律によって裁くことができるのです。
 警職法は、日本が世界に誇る治安のよい国であったときに制定されており、当時は凶
悪犯罪を行うような外国人が不法入国していない――それどころか外国人自体が珍しい
時代にできた法律なのです。しかし、今回の有事法制においては、警職法は何も改正さ
れていないのです。これではテロに対処できないのです。・・[自衛隊の実力/16]

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