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2007年07月05日

台湾問題は日本の問題である(EJ第1313号)

 先日ある読者から、なぜ、日本が中国と台湾の問題に首を突っ込むのか疑問である
――という意見が寄せられました。これは、EJでなぜこの問題を取り上げるのか――
という問題にもつながりますので、お答えしておきたいと思います。
 もし、中国が台湾を制した場合のことを考えてみます。中国が台湾を維持できる条件
としては、次の2つのことが実現される必要があります。
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        1.台湾海峡の制海権・制空権を完全に握ること。
        2.フィリピン・琉球列島からの脅威を排除する。
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 これら2つが実現すると、中国の経済水域は太平洋に突き出し大陸から太平洋にのび
る大陸棚の石油資源掘削権を手に入れることができます。
 しかし、台湾海峡の制海権・制空権ともに現在、米国が握っており、米軍がこれを簡
単に明け渡すはずがないので、当然軍事的緊張が高まるのは必至です。
 もし、米国が何もしないと、米国の西太平洋における制海・空権が南北に分断され、
米国の中西部太平洋の最前線がマリアナ諸島のグアム島の線に後退することになって
しまいます。
 そうなると、日本はどうなるのでしょうか。日本は、次の3つのダメージを受けるこ
とになります。
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      1.東南アジアとのシーレーンが完全に分断されてしまう。
      2.日本の生命線である中東とのシーレーンが脅かされる。
      3.海洋国家としての対大陸戦略が決定的に打撃を受ける。
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 一言でいうと、この状況は、かつて貿易航路が遮断され、戦争へと突き進むしかなか
った日清戦争以前の状態の日本に戻ることを意味するのです。
 「海洋国家としての対大陸戦略」とは、樺太から日本列島、台湾を結んで大陸勢力の
海洋進出を包囲する戦略のことで、日本は米国と組んで、一貫してこの戦略を取ってき
ています。したがって、台湾が中国領になると、この戦略が打撃を受けるのです。
 それだけではないのです。世界の対中路線が、2つに分かれてしまう事態が起こりま
す。EUの米国離れを画策するフランスとドイツは中国寄りの姿勢を示すのに対して、
英国は米国と歩調を合わせるでしょう。ロシアは、EUの東進と米中のアジア浸透に対
して強い警戒心を抱いているので、複雑な態度をとるはずです。
 北朝鮮と韓国の朝鮮半島はどうなるでしょうか。
 現在、韓国はこのあとEJでも取り上げますが、非常に危機的状況にあります。それ
は、韓国の北朝鮮化が大きく進んでいるからです。そうなると、朝鮮半島は韓国を含め
て中国寄りの路線になることは必至です。
 これまで朝鮮半島は日本と中国の軍事的緩衝地帯となっていたのですが、韓国までも
が中国寄りの姿勢をとると、米軍の朝鮮半島撤退は既定方針なので、防衛ラインが一挙
になくなることを意味しています。
 そうすると日本の国内では、次のような国論の分裂が避けられなくなると思います。
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        1.一国平和主義の日和見政策をとるという意見
        2.対米依存を脱し親中国政策をとるという意見
        3.米国と組み、海洋国家戦略をとるという意見
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 これは、日清戦争前の国論の分裂とそっくりです。現在、イラクへの自衛隊派遣をめ
ぐって国論は分裂しましたが、日清・日露戦争のときも開戦寸前まで、国論は分裂した
のです。
 海洋国家としての日本は、今まで取ってきた第3の政策を続けるべきであると思いま
すが、そうすると、もし台中戦争が勃発して米国が日本に後方支援を求めてきたとき、
法的にも断ることはできなくなります。
 日本が米軍支援を拒めない法的根拠は、1996年にクリントン大統領と橋本首相と
の間で合意した日米安保共同宣言に基づいて翌年に決定された「新ガイドライン」(日
米防衛協力のための指針)です。
 当時の加藤紘一自民党幹事長は「新ガイドライン」に明記された米軍支援には、台湾
有事のさいの米軍支援が含まれることを認めています。米側としてもクリストフNSC
アジア部長(当時)が米議会でこのことを証言しているのです。つまり、もし台湾有事
があると、日本は逃げられず、日本も戦争に巻き込まれることになるのです。
 このように、台湾問題は単に中台間の問題ではなく、日本の問題でもあるのです。し
かし、多くの日本人は、それを外国の問題として他人事のように考えています。願わく
ば、日本人は正しい日本の歴史をもっと勉強して欲しいものです。
 もちろん明日の台湾総統選挙において陳水扁が勝っても負けても、直ちに「独立」か
「統一」かが決まるわけではありません。台湾が独立するまでには、まだ多くの困難な
ことを乗り越える必要があります。
 現在、中国には100万人規模の台湾人企業家が渡り、前の総統選挙のときとは比べ
ものにならないほど経済的結びつきは強固になっています。
 たとえ陳水扁が勝ったとしても、独立への道を強引に進めようとすると、中国に10
0万人の人質を置いたまま、中台関係は悪化することになってしまいます。いつまでも
続きませんが、当面は、米国の望む「現状維持」が続くはずです。
                 ・・・[2004年時点の東アジア情勢/10]

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