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2007年07月09日

中国による日本の世論懐柔策(EJ第1315号)

 一般論ですが、現代の日本人はある面では中国人と台湾人を一緒にしてとらえている
ところがあります。上海出身とか台湾出身とかいっても、それぞれを中国の地名として
考えているところがあるのです。漢字だけの名前、言葉は中国語、見分けがつかない顔
立ち――どれをとっても中国人そのものであるといえます。ということは、平均的日本
人の頭の中には、中国が主張する「ひとつの中国」が既にでき上がっていることになり
ます。
 ちなみに、現在の台湾の公用語は台湾式の「北京語」ですが、これは第2次世界大戦
後に中国大陸から台湾にやってきた外省人によって持ち込まれたものです。それ以前の
50年間は、日本が統治していたので、台湾国語と同じ位置づけで日本語が使われてい
たことから、現在65歳以上の人は日本語が話せるのです。
 したがって、台湾は日本にとって特別な国なのですが、肝心の日本人が必ずしもその
ようにとらえていない――これは重要であると思います。中国は、現代の日本人が台湾
をどう見ているかをよく知っており、それを利用して日本の国論を「ひとつの中国」に
向けさせようとしているのです。
 中国は、「ひとつの中国」を実現するカギを握っているのは米国よりも日本であると
考えています。なぜなら、日本は、台湾に一番近い西側の大国であって、しかも中国と
も深い経済関係があります。その日本の国論が本当の意味で「台湾独立」を認めるよう
な事態になると、欧米の大国もそれに傾く可能性が高いと中国は警戒しているのです。
台湾や中国との関係が深い日本がそう判断したのなら、「台湾独立」を承認しても、中
国権益を失うことはないとそれらの大国が判断しても不思議はないからです。
 それに現代の日本は、「ワイドショー政治」とか「ワイドショー世論」といわれるほ
ど、茶の間のテレビ報道によって国論が左右されやすい国になっています。もし、「台
湾独立」か「ひとつの中国」かという議論になったら、台湾側はその議論に登場させる
タレントは数多くいるのに対し、中国にはそれに匹敵するタレントがあまりにも少ない
のです。
 朱建栄という中国人の学者がいます。東洋学院大学人文学部人間科学科の教授です。
彼は、日本語に堪能でほとんど日本人と同じように話せるのです。そのため、日本のテ
レビにはよく登場しときにはワイドショーにも出演します。
 しかし、この朱建栄という人物――バックに中国政府がついており、いろいろな番組
に出演して中国政府の主張を代弁しているのです。しかし、朱建栄を知っているのは、
日本人のインテリ層のごく一部に過ぎないのです。
 また、中国のプロバスケットボールの選手に23歳の姚明(ヤオミン)という有名な
選手がいます。彼はアップル・コンピュータ、VISAカードのCMに採用されており
、今年に入ってからでも米マクドナルドとスポンサー契約に合意しています。まさに有
名タレントそのものですが、もちろん姚明は米国では政治的発言はできないし、やれば
多くのスポンサーは即降りてしまうことは確実です。
 といって、姚明は日本ではほとんど知られておらず、日本ではそういう目的に使えな
いタレントなのです。つまり、日本では、誰でも知っていて好意的に受け入れられる中
国人のタレントが非常に少ないという事実をごく最近になって中国政府は、遅まきなが
ら気がついたのです。
 ところが、台湾には日本人が誰でも知っていて好感を持っているタレントを多く抱え
ています。その典型的な例として、故人ではありますが、テレサ・テンがいます。テレ
サ・テンという名前は、中国圏以外で使われるもので、中国圏では次のように発音する
のです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
        中国圏以外 ・・・ テレサ・テン(Teresa Teng)
        北京語 ・・・・・ デン・リーチュン
        広東語 ・・・・・ ダン・ライグァン
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 テレサ・テンは、台湾雲林県龍岩村生まれの台湾本省人ですが風貌に似合わず、積極
的な政治的行動をとった人として知られています。天安門事件のさいも、中国政府の弾
圧に抗議して世界に向けて抗議の発言を行っていたのです。もし、テレサ・テンが生て
いて、しかるべき時期に、世界に向けて「台湾独立に力添えを」と訴えたらどうなるで
しょうか。そのインパクトの強さを中国政府は非常に恐れていたのです。そのために、
彼女がタイのホテルで急死したとき、その死因をめぐっていろいろなうわさが取りざた
されたのです。
 中国政府はテレサ・テンに対して、かなり以前から「台湾のスパイ」として神経を尖
らせていたのです。1980年に入ってテレサ・テンの歌声は中国でも大流行します。
とくに彼女が北京語で歌った「何日君再来」は大ヒット曲になったのです。
 しかし1983年10月11〜12日に開催された中国共産党中全会において、「整
党に関する決定」が採択され、反精神汚染運動がはじまったのです。そして、テレサ・
テンの歌った「何日君再来」は精神汚染であると弾劾されたのです。
 このようにテレサ・テンは、中国政府にとってかなりマークされた存在であったので
すが、彼女の死後、ごく最近になって中国は、テレサ・テンの生涯を描く舞台劇と映画
の製作を発表しています。タイトルは『小城故事』――公開は2002年1月とありま
すが、本当に公開されたのかどうかは、私自身確認できていません。この動きは、テレ
サ・テンに対する中国での名誉回復の動きなのでしょうか。
 さて、日本の世論懐柔のために中国政府が作り出したものとは「女子十二楽坊」なの
です。今や多くの日本人がこの名前を知っていますが、「女子十二楽坊」が日本にデビ
ューしたのは2003年のことであり、それでいてその年末の紅白歌合戦に出場する
――おかしいとは思いませんか。  ・・・[2004年時点の東アジア情勢/12]

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