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2007年07月17日

北の国家主席が空席である理由(EJ第1320号)

 故金日成は、先の先のことまで考えた恐るべき戦略家であると思います。まさか、自
由民主主義体制の韓国がやすやすと北朝鮮の手に落ちるとは誰も考えていないと思い
ますが、現在の韓国の状況を見ていると、そうともいえないのです。現在の韓国は、米
国から距離を少しずつ置き、中国に接近し、北と親和政策をとって反日を盛り上げ、米
中韓ではなく、中朝韓の連携を強めようとしています。金大中がいう「たとえアンチ金
大中が大統領になっても路線の変更はできない」体制がかなりでき上りつつあるように
感じられるのです。
 「反日特別法」が圧倒的多数で成立したのも、国民の多くがそれを望んでいるので、
絶対多数のハンナラ党もそれに乗らざるを得なかったのです。それは、北の仕掛けた韓
国の赤化が進んでいる証拠であるといえなくもないのです。それに大統領が超親北派で
あり、しかも、金大中前大統領の忠実な配下というのですから、事態はとても深刻なの
です。
 昨日のEJで、北のいう連邦制が導入されたとき北は、タイミングを見て総選挙か戦
争で南を奪い取ることを考えていると述べました。また、連邦制の導入に成功しても、
南の半分を赤化することに手こずったら、やはり、北は戦争という手段を使うことを想
定しているといわれます。
 ファンジャンヨブ氏によると、かねがね金日成は連邦制の話になると、幹部たちに次
のような話を聞かせることが常だったというのです。ファンジャンヨブ氏自身もその話
を金日成から直接聞いています。以下、金日成の話を要約します。
――金日成の考える「戦争」−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 軍隊においては、特殊部隊は戦略的に重要である。そのために小学校の頃からテコン
ドーを教え、テコンドーの実習を大々的に行うべきである。
 仮に連邦制が行われ、南朝鮮情勢が複雑になったときに、もしわが人民軍隊が直接進
撃して、南朝鮮の親北勢力を支援したとすると、これを南進として外国(米国)が再び
干渉してくることは必至である。
 しかし、テコンドー部隊を約100万名組織し、拳銃を一丁ずつ携帯させて南朝鮮に
送れば、同じ朝鮮人民であるから誰が南出身で、誰が北出身なのか区別できなくなる。
したがって、南進という口実を与えることなく、われわれが南朝鮮の親北勢力と力を合
わせて政権を奪うことができる。これも戦争なのである。
 どうでしょうか。これが金日成のいう「戦争」なのです。韓国が北の誘いに乗って、
もし連邦制などに踏み出したら、金日成のいう「戦争」によって、政権をとられてしま
うでしょう。
 金日成の死後の1998年、北朝鮮の憲法は大幅に改正されています。ところが不思
議なことに、「国家主席」の座は空席になっているのです。金正日は「国防委員長」で
す。なぜ、国家主席に就任しないのでしょうか。
 これには実に驚くべきたくらみが隠されているのです。北朝鮮の憲法の前文は「国家
主席は永久に故金日成である」と書いてあるのです。死人を主席にしておいて、最高人
民会議の常任委員長を事実上の国家元首とみなしています。現在この地位に就いている
のは、金水南という人物です。そうすると、北朝鮮のトップは次のようになります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         国家主席 ・・・・・・・・・ 故金日成
         常任委員会委員長 ・・・・・  金水南
         国防委員長 ・・・・・・・・  金正日
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 これによると、北朝鮮の形式上のナンバーワンは金水南であって金正日ではないので
す。実質的にはトップは金正日なのですがあえてそういうかたちをとっています。これ
は、近い将来、韓国と連邦制をとることを想定しての措置と考えられます。
 朝鮮半島の北と南の連邦制がはじまったとします。連邦制では国家首班は交替制とな
るので、1回北側が担当すると、次回は南側ということになります。しかし、北の前の
憲法では国家首班は人民軍総司令官になっていたので、南側の担当のときに北側の軍隊
の統帥権も渡さなければならないことになる――これは当然のことですが、北側として
は渡したくないと考えているのです。
 そこで、金日成が亡くなったときに憲法を改正して、金正日が国防委員長に下がって
軍の統帥権を離さないようにしたのです。仮に現在のままで連邦制が行われると、北の
金水南と南の盧武鉉が交代で国家首班を担当することになります。しかし、金正日は国
防委員長のままで残るという姑息な企てなのです。
 しかし外交関係においては、事実上の北ナンバーワンは金正日であるという配慮が行
われているのです。その典型を南北首脳会談のときの外交儀礼に見ることができます。
 南北首脳会談のさいの外交儀礼の記録は次の通りです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      空港への出迎え/閲兵式 ・・・・ 金大中 金水南 金正日
      1日目の晩餐会(金水南主催)・・ 金大中 金水南
      2日目の晩餐会(金大中主催)・・ 金大中 金水南 金正日
      3日目の昼食会(金正日主催)・・ 金大中 金水南 金正日
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 これをよく見ると面白いことがわかります。空港への出迎えは金水南、金正日が2人
とも出てきています。これは当然のことですが、1日目の金水南主催の晩餐会に金正日
が出てきていないのです。金水南が本当のトップなら、当然金正日が出てくるべきです
が、出てきていないのです。
 2日目の晩餐会は金大中の主催ですから、金水南、金正日が出てくるのは当然のこと
ですが、金大中が韓国に帰る3日目の昼食会は金正日が主催し、そこに金水南を呼んで
いることです。こうなると、明らかに金正日が北朝鮮のナンバーワンであることを外交
儀礼上も示す演出をしていることになります。
                 ・・・[2004年時点の東アジア情勢/17]

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