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2007年07月31日

サウスウエスト航空の戦略(EJ第268号)

 1990年から1994年にかけて米国の航空業界が出した損失額は、それ以前の6
0年間の損失を上回るといわれています。この間、毎年黒字を記録している航空会社は
サウスウエスト航空だけなのですが、サウスウエスト航空のどこがこの成功をもたらし
たのでしょうか。今朝は、このことについて考えてみます。
 サウスウエスト航空の第1の戦略は、「短距離に徹する」ということです。
 サウスウエスト航空では、その平均飛行時間を約1時間としています。距離にして約
650キロ、東京と大阪間の距離です。ですから、当初は、サンアントニオ、ヒュース
トン、ダラスのテキサス州3都市間を結んだのです。
 こういう短距離の市場には、大手航空会社は参入してこないか参入してきてもその便
数は少ないのです。つまり、大手の手が及ばないニッチ市場であるといえます。
 ですから、そういうニッチ市場に、大手の3倍くらいの便数を持てば、勝てると計算
したのです。顧客にしても待ち時間がほとんどなくて、しかも料金の安い安全な航空会
社があれば、利用するに決まっているからです。
 サウスウエスト航空の第2の戦略は、「使用航空機を絞る」ということです。
 サウスウエスト航空では、その使用航空機をボーイング737型に限定しています。
使用する航空機が限定されていれば、訓練を単純化できます。操縦士、整備士、客室乗
務員は、ボーイング737だけを知り尽くせばよいし、ミスを最小限度に抑えることが
できます。
 航空機を一機種に限定すると、保守部品の種類も最小に抑えるとができ、管理もしや
すくなります。コストも抑える効果があります。また、新たに航空機を購入するさいの
商談も有利に進めることができます。
 しかし、同型機ばかりでは面白くないので、機にさまざまなカラーリングが行われ、
個性的な演出を心がけています。
 サウスウエスト航空の第3の戦略は、「混雑する空港を回避する」ということです。
 サウスウエスト航空が使う空港は、混雑がないことと街の市街地に近いところを意識
して選んでいるといいます。これは、忙しいビジネスマンにとって好都合だからです。
 例を上げると、ダラスにはフォートワース、ヒューストンにはインターコンチネンタ
ル、シカゴにはオヘアという近代的設備の空港がありますが、サウスウエスト航空は、
ダラスではラブフィールド、ヒューストンはホビー、シカゴのミッドウェーという小さ
い空港を使っているのです。
 なぜそんなことをするのかというと、せっかく苦労してシステムの合理化をはかり、
10分で飛行準備ができるようになっても離陸命令をもらうのに40分かかっていたの
では、合理化した意味がないからです。サウスウエスト航空のこの方針は、閉鎖寸前の
小空港の存続にも力を貸す結果となったのです。
 サウスウエスト航空の第4の戦略は、「徹底的に単純化する」ということです。
 サウスウエスト航空では、全路線でチケットを発行しないシステムを導入しています
。というより大手航空会社傘下の近距離航空会社を守るための戦略として、三大予約シ
ステムからサウスウエスト航空は、すべて締め出されてしまったのです。
 ちなみに三大予約システムとは、ユナイテッド航空のアポロ、コンチネンタル航空の
予約システム、デルタ航空のワールドスパンの3つをいいます。それまで事業の約55
%が、これらのコンピュータ予約システムに依存していたのですが、追い出されてしま
ったので、それを機にチケット・レスにしたのです。
 乗客はサウスウエスト航空に電話をかけ予約番号をもらい、フライトの時間までに空
港にくればいいのです。旅行業者を通す場合でも、手続きは同じであり、予約番号をも
らうだけであり、いちいち手書きする必要がないので旅行業者もラクなのです。
 紙のチケットを発行するための直接原価は約7ドルですが、年間4000万枚を発行
するとなると、膨大なコストがかかるのです。サウスウエスト航空の予測では、年間約
1億ドルの節約になっているといいます。
 サウスウエスト航空の第5の戦略は「飛行準備の徹底的な短縮化」ということです。
 飛行準備を10分で行い、地上待機時間を10分まで短縮できれば、運転運賃を25
%削減できるといいます。サウスウエスト航空は、これに全力で取り組んだのです。そ
のためにやるべきことは多くあります。まず荷物の出し入れを合理化すること。私は、
ソルトレイクシテイに途中着陸したとき窓から荷物の出し入れを見ていたのですが、実
にスピーディーなのです。
 飛行機が停止すると、地上要員が一斉に走ってくるのですが、それはまるでF1レー
スでピットインした車を一秒でも早くコースに戻そうと必死になって点検に取り組むピ
ットクルーのようにテキバキと仕事をこなしていました。
 一方機内でも客室乗務員が機内掃除に全力をあげており、すべてを10分以内に仕上
げてしまうのです。そのため、サウスウエスト航空では、機内食を出しておらず、代わ
りにピーナッツなどのスナックをサービスしています。それらも簡単に回収可能な容器
に入っており、機内掃除の手間を省くことが意図されているのです。サウスウエスト航
空の場合、その平均飛行時間は1時間程度であり、食事をサービスする時間がないし、
乗客もそれを望んでいないのです。
 このように、サウスウエスト航空は、数々の奇想天外な戦略を駆使して信じられない
ほどの好業績を上げているのです。その好業績を生み出しているものは既存の観念には
とらわれず、物事を自由に発想し、実行するという社内風土にあるようです。
                       ・・・[サウスウエスト航空/02]

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