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2007年08月08日

三位一体の3人の登場人物(EJ第1253号)

 映画『マトリックス』の主人公の一人は、トーマス・アンダーソンという青年です。
ハリウッドのドル箱スターであるキアヌ・リーブスが演じています。
 最初にお断りしておきたいのですが、映画の内容を話してしまうといわゆる「ネタバ
レ」といって、映画を観るとき面白くなくなるといって嫌がる人がいます。
 しかし、この映画は、ちょっとした「ネタバレ」をしても内容がつまらなくなるほど
薄っぺらな映画ではなく、最初にある程度事情を知っていた方がはるかに面白いし、楽
しめると思うのであえて必要最小限のことをお話ししておきます。
 トーマス・アンダーソンは、昼はメタコーテックス社というコンピュータ・ソフトの
大会社に勤めるプログラマーですが、夜は「ネオ」という名のハッカーとして知られて
いるのです。そのため、どうしても夜が遅くなるので、遅刻ばかりして上司から叱られ
ています。
 そのアンダーソンは、最近起きているのに夢を見ているような感覚にとらわれていま
す。夢と現実の境がつかなくなっているのです。それに彼のPCのディスプレイには、
モーフィアスという人物から奇妙なメッセージが届くようになっています。
 ある夜、居眠りをしていたネオは、ふと目を覚ますと、次のようなメッセージがPC
の画面上に表示されたのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       「起きろ、ネオ」
       「マトリックスが見ている」
       「白うさぎの後について行け」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 そして続いて「トントン」というメッセージが画面上にあらわれたとたんに、ネオの
部屋の扉がノックされます。恐る恐る扉を開けると、チョイという男が女友達と一緒に
立っていたのです。チョイからは、ハッキングを依頼されており、そのデータを受け取
りにきたのです。
 チョイは、約束の2000ドルを渡してデータを受け取ったとき、次のようにいうの
です。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       「やったぜ。助かるぜ。あんたは救世主だ」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 この「救世主」ということばには実に深い意味があるのです。「救世主」といえば、
イエス・キリスト――まさしくネオは、この映画では、キリストの役回りをすることに
なるのです。彼こそは人類を救う「救世主」と目されるのです。
 もうひとつ、ネオをキリストになぞらえると、この映画の登場人物が聖書の人物と重
なってくるのです。これは、この作品にキリスト教的テーマがあることの証拠といえま
す。これについては後から詳しく述べることになると思います。
 話を映画に戻します。データを受け取ったチョイは、ネオに飲みに行かないかと誘い
ます。ネオは「明日仕事があるから・・」といったんは断りますが、そのときチョイの
女友達の左の腕に白うさぎのタットウを見つけてチョイと一緒に行くことを承知するの
です。PCの画面のメッセージ「白うさぎの後について行け」を思い出したからです。
 そしてチョイと一緒に行ったバーで、ネオはトリニティーという女性に会うのです。
トリニティーは、国税庁のコンピュータに侵入してデータを盗み出したという伝説のハ
ッカーとしてその世界では有名な人物とされています。このトリニティーは、この映画
のもう一人の主役であり、キャリー=アン・モスという女優が演じています。
 ネオは、このトリニティーから「身に危険が迫っている」と忠告を受けます。何のこ
とかわからず、不安になるネオ。その危険は、次の日、やはり遅刻をして上司に退職を
勧告されたその日に現実のものとなるのです。
 さて、「白うさぎの後について行け」で思い出すのは、ルイス・キャロルの『不思議
な国のアリス』です。私は、学生時代にこの作品にかなり凝ったことがあるのです。こ
れは、現実と非現実という2つの世界に基づいて物語が展開されているのですが、これ
は『マトリックス』と酷似しています。
 『不思議な国のアリス』において、主人公のアリスは、白うさぎが時計を見ながらあ
る穴に入るのを見て、それを追っかけて行くところから始まるのですが、『マトリック
ス』でもネオは、白うさぎのタットウの女性と一緒にあるバーに行き、そこでトリニテ
ィーと会っています。明らかに『マトリックス』の原作者は、『不思議の国のアリス』
に影響されていることは明らかであると思います。また、『オズの魔法使い』にも非常
に似ているところがあります。
 さて、勤務先でネオは、黒ずくめのスーツ姿のエージェントに襲われ、捕まってしま
うのですが、トリニティーに救出され、モーフィアスと会うことになります。このモー
フィアス――預言者のことばを信じ、救世主を救うことに人生を捧げている男であり、
この映画の三人目の主役なのです。個性豊かな俳優ローレンス・フィッシュバーンが演
じています。
 このネオとトリニティーとモーフィアス――その関係は、トリニティーの名前に由来
しています。この「トリニティー」という名前はキリスト教の「父なる神・子なる神・
聖霊は『三位一体』の精神」――3つのものがひとつに心を合わせることに由来してい
るのです。そういえば、小泉政権も『三位一体改革』を唱えていますが、その『三位一
体』もここから出ています。
 一応、中心的な登場人物が3人揃ったようです。ネオとトリニティーとモーフィアス
――この3人を中心として、この映画は展開されていくのです。この映画は、ネオ――
すなわち、アンダーソンがプログラマーなので、この3人以外の登場人物には、コンピ
ュータ関係用語が多く使われています。        ・・・[マトリックス/02]

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