マトリックスの中の人間の研究(EJ第1256号)
この映画はなかなか奥が深いのです。この映画を製作したウォシャウスキー兄弟が、
「知的なアクション映画」を目指して製作しただけあって、徹底的に考え抜かれている
のです。
現実世界と仮想現実世界――仮想現実世界であるマトリックスの世界にはどのような
人間がいるのでしょうか。マトリックスには、次の3種類の人間が存在することができ
ます。
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1.培養人間(実体は培養器の中にいる)
2.培養器から脱出した人間(ネオなど)
3.各種プログラム(エージェントなど)
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マトリックスの中で生活しているほとんどの人間は培養人間で実際は培養器の中にい
ます。彼らは、自分がどのような状況にあるのかがわかっていません。夢を見るように
毎日を20世紀の世界そっくりに作られたマトリックスの中で暮らしています。
モーフィアスによって培養器から解き放たれた培養人間がゲリラで、彼らはすべて首
の後ろにプラグが付いています。これがザイオン都市に住む人間と違う点です。モーフ
ィアス、ネオ、トリニティーはいずれも開放された培養人間です。
彼らは、安楽椅子風のマシンに横たわり、首の後ろのプラグに電極を差し込まれる―
―これによってオペレータの操作で、意識のみがマトリックスの内のどのポイントにも
瞬間移動できるのです。現実世界に戻るときは、オペレータの指定した回線から意識が
転送されるのですが、その転送の入り口となるのがマトリックス内に存在する電話なの
です。つまり、彼らはマトリックスと現実世界とを自由に行ったり、来たりできるわけ
です。
しかし、転送時に使われる電話は、エージェントに盗聴されるリスクを伴うため、ダ
イヤル式のアナログ回線が使われることになっています。それでも、オペレータとの連
絡には携帯電話を使わざるを得ないので、彼らはエージェントに容易に見つけられてし
まうことになります。
それでは、プログラムとは何でしょうか。
マトリックス内における培養人間以外のキャラクターはすべてプログラムです。エー
ジェントのスミスをはじめ、まだ説明していませんが、預言者のオラクルやセラフは人
の心を読む直感プログラムですし、最古のプログラムといわれるメロビンジアンやその
妻のパーセフォニー、手下のザ・ツインズなどなど――すべてプログラムなのです。プ
ログラムには、現実のプログラムがそうであるように、必ず目的があり、その目的が何
であるかを考えながら映画を観ると、よくわかると思います。
そして、本物の人間――首の後ろにプラグのない人間は、当然ですが、現実世界にし
か住めず、もちろん、マトリックスに潜入することはできないのです。また、いうまで
もないことですが、マトリックスの内のプログラムに人間は、現実世界にはやってこれ
ないのです。
映画に一番よく出てくるネブカドネザル号のクルーは、ほとんど培養人間ですが、オ
ペレータのタンクとドーザーは人間です。なお、ドーザーはタンクの兄です。クルーを
紹介します。
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船長 ・・・・・・・・・ モーフィアス ――― 培養人間
クルー/将校 ・・・・・ トリニティー ――― 培養人間
クルー ・・・・・・・・ ネオ ――――――― 培養人間
クルー/オペレータ ・・ タンク ―――――― 人間
クルー ・・・・・・・・ ドーザー ――――― 人間
クルー ・・・・・・・・ マウス ―――――― 培養人間
クルー ・・・・・・・・ サイファー ―――― 培養人間
クルー ・・・・・・・・ スイッチ(女性) − 培養人間
クルー ・・・・・・・・ エイポック ―――― 培養人間
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ここで、改めてマトリックスについて考えてみます。人間の感覚器官は、外からの情
報(光や音など)を電気信号に変換し、さらに脳による処理を経てイメージ化された現
実として、意識的経験が構成されています。
そこでAIは、同じ電気信号を人間の脳に送り、現実と見分けがつかない幻想を創り
上げているのです。これがマトリックスの実体なのです。
ネオがマトリックスの訓権プログラムに入ったときのモーフィアスとネオの次の会話
があります。
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ネオ「これは現実ではない?」
モーフィアス「現実とは何だ?明確な区別などできない。五官
で知覚できるものが現実だというなら、それは脳による電気信
号の解釈にすぎない」
―― モーフィアスはディスプレに映像を写して見せる ――
モーフィアス「これが君の知る世界、20世紀末の世界だ。い
まやこれは、われわれがマトリックスと呼ぶ双方向神経系シミ
ュレーションの一部としてしか存在していない。きみは夢の世
界で暮らしていたんだよ、ネオ」
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モーフィアスやネオやトリニティーなどの培養人間にとっては意識がマトリックスに
行っているときに電極プラグを抜かれると死ぬことになります。また、マトリックス内
で戦って死亡したときは、現実の世界でも死ぬことになります。
エージェントやオラクルやメロビンジアンなどのプログラムにとっての死とは、シス
テム上からプログラムが削除されたときがそれに該当します。このように、マトリック
スは、あらゆる可能性を考慮して設計してあるのです。 −−[マトリックス/05]

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