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2007年08月15日

ネオはなぜ空を飛べるのか(EJ第1258号)

 培養人間のうなじ(首のうしろ)についているプラグ――これをバイオポートという
のですが、このバイオポートの一方の先は太いケーブルを通してマトリックスを制御す
るコンピュータにつながっています。
 さて、バイオポートのもう一方の先は、脳全体に広がる電極の群れに配線を通してつ
ながっています。うなじから、脊柱の上で頭蓋を支えるしなやかな軟骨から入り、脊髄
を頭蓋にはめこんでいる自然の開口部を通って脳に達している――と考えられます。
 映画で興味深いことは、このバイオポートを利用して、ネオの脳にカンフーの技能を
ダウンロードするシーンとトリニティーに対して、ヘリコプターの操縦技術を脳に植え
つけるシーンです。要するに脳の永久記憶に直接書き込むわけです。
 しかし、マトリックスの中の人間――つまり、培養器に入っている人間ですが、そう
いう人間はこのような方法で知識や技能を身につけることはせず、本を読んだり、学校
に行ったりして、ごく普通のやり方で物事を学ぶのです。
 このバイオポートを利用して技術プログラムをダウンロードする方法は、モーフィア
スやトリニティーなどのゲリラが開発したノウハウなのです。興味深いのは、そのよう
にして超高度のカンフーの戦闘技能をダウンロードされたネオが師匠であるモーフィア
スに最初は勝てないことです。
 私がこの映画で最も印象に残っているのは、マトリックスそっくりに作られた環境で
のカンフーの訓練プログラムのシーンなのです。そこで、モーフィアスとネオは戦うの
ですが、どうしてもネオは、モーフィアスのスピードについて行けず、負けてしまいま
す。そのシーンを再現してみましょう。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      モーフィアス:なぜ、やられた?
      ネオ    :速すぎる。
      モーフィアス:考えてみろ。仮想現実の世界で強さやスピード
             の原因が筋力にあると思うか。
      ネオ    :・・・・・
          ―― 再び、速さについていけないネオ ――
      モーフィアス:何してる。もっと速いはずだぞ。速く動こうと
             考えるな。速いと知れ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 カンフーに必要なすべての技能を脳にダウンロードしていても実際にそれを演ずると
き、何か考えてしまったり、やろうとすることに自身が疑問を持ってしまうと、身体の
動きがセーブされてしまうのです。
 モーフィアスのいう「速く動こうと考えるな。速いと知れ」はなかなか深遠なことば
です。「速く動こう」と考えるのは意思の力ですが、「速く動けるのだ」と信じて疑わ
ないと、そのように動けるのです。「速いと知れ」はそのことをいっています。思考は
現実化するのです。
 カンフーの戦いの途中で、モーフィアスは盛んに「心を解き放て」と叫びますが、マ
トリックスの中では心を解き放つこと――すなわち、現実世界での行動概念を捨てて、
意識の開放をすればするほど、パワーが増すのです。
 もう少し詳しく説明しましょう。
 現実世界では、やれないことがたくさんありますね。空を飛べない、空間で長い間静
止できない、高いところから落ちれば死ぬ近くでは弾丸を避けられないなど――しかし
、マトリックスの世界には、重力や質量は存在しないのです。したがって、現実世界で
できないと考えていることをすべて意識の外に捨ててしまえば何だってできるようにな
るのです。ネオが空を飛んだり、近くで発射された弾丸を止められるようになったのは
、十分に心が開放された結果と考えることができます。
 「速く動こうと考えるな。速いと知れ」――このことは、現実の世界でも当てはまる
教訓ではないでしょうか。「やれないと考えてはいけない。できると知れ!」――「で
きる」と考えれば、たいがいのことは可能になるのです。
 以上のように考えたうえで、この映画には大いなる矛盾というか、不可解な謎があり
ます。映画『マトリックス』を観た人は、ぜひ考えていただきたいと思います。
 ひとつは、第2章「リローデッド」の最後の部分で、AIの放つイカ型ロボット「セ
ンチネル」をネオが片手で止めるシーンがあったと思います。しかし、その場所はマト
リックスの中ではなく、ザイオン――現実の世界なのです。いくらネオでも、現実世界
で超能力は発揮できないはずですが、どうして止められたのでしょうか。この謎につい
てどのような意見をお持ちですか。
 もうひとつ謎があります。
 ネブカドネザル号のクルーの一人にサイファーという人物がいます。サイファーは、
ゲリラの生活に嫌気がさして、もう一度マトリックスにつながれたいと願っています。
そういう心のスキにエージェントのスミスが入り込んで、サイファーは裏切りを勧めら
れます。
 実際にサイファーは仲間を裏切るのです。そのために、モーフィアスは窮地に陥り、
それが原因でネブカドネザル号のクルーであるマウス、スイッチ、エイポック、ドーザ
ーの4人とその裏切りの張本人であるサイファー自身も死ぬことになります。
 そのサイファーがマトリックス内のレストランで、スミスと密会するシーンがありま
す。裏切りの打ち合わせですから、一人でこっそりとやったはずですが、現実世界から
マトリックスに行くのは、自分ひとりではできないはずです。
 少なくともオペレータは必要ですが、サイファーがマトリックス内で何をしているか
は、オペレーターにすべてわかってしまいます。どのようにして、サイファーはマトリ
ックスに行ったのでしょうか。一人でプラグに電極を差し込んでマトリックスに行き自
動的に一人で戻ってこれるのでしょうか。       −−[マトリックス/07]

変身したネオ

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