ネオは3回変身している(EJ第1259号)
キアヌ・リーブスが映画『マトリックス』で演ずるネオは、明らかに3回変身してい
ます。
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1.トーマス・アンダーソン時代のネオ
2.スミスによって殺され復活したネオ
3.第2章で究極の選択をした後のネオ
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映画『マトリックス』の物語がキリスト教的テーマをベースにしていることは明らか
です。ネオは人類を救済する「救世主=選ばれし者」といわれているので「イエス・キ
リスト」であり、救世主の出現を固く信ずるモーフィアスは、洗礼者ヨハネに相当する
と思われます。
それでは、トリニティーはどうでしょうか。既に述べたようにトリニティーという言
葉には、三位一体の意があることを指摘していますが、具体的に誰に当たるかといえば
、それはマグダラのマリアではないかと思われます。それは、どちらも男社会のなかで
ひときわ際立つ女性であるからです。
一回目の変身をしたネオは、モーフィアス救出劇に続く画面でエージェントのスミス
と単身立ち向かい、近くのモーテルの303号室に逃げ込みます。そこには、マトリッ
クスからの脱出口であるアナログ電話機があるのです。
しかし、ネオが受話器を取り上げようとした瞬間、先回りをしていたスミスの銃弾を
浴びて死ぬのです。ネブカドネザル号に横たわるネオの生命維持装置も「死」を示す表
示が出ます。「まさか!」と叫ぶモーフィアス。トリニティーは、預言者に「私の愛す
る人が救世主」といわれたことを告白し、息のないネオに口づけする――そうすると、
ネオは息を吹き返すのです。これは、明らかにイエスの復活をあらわしています。
トリニティーをマグダラのマリアであるとしたのには、2つのことが一致するからで
す。一つは、マリアはイエスが殺されるときそばにいたことであり、二つは、イエスが
復活して最初に顔を見たのがやはりマリアであったという点です。
トリニティーは、ネオが殺されるとき一緒にいる――現実世界とマトリックスという
距離感はあるが――それに、ネオが息を吹き返したとき最初にその顔を見たのも、やは
り、トリニティーだからです。役柄はマリアと一致しているのです。
第1章で、モーフィアスがネオをマトリックスに住むオラクルという預言者のところ
に連れていくシーンがあります。そのときオラクルはネオに次のようにいうのです。
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あなたは救世主ではない。しかし、来世では・・・
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確かに、一度死んで復活する――つまり、来世ですが、その後のネオは明らかに変身
しています。銃弾をすべて手で叩き落し、カンフーも力強さを増し、そして空を飛ぶ―
―それに顔つきも少し変貌しているように感じます。
実は、イエスも復活前と復活後は違うのです。パウロは、「コリント人への第一の手
紙」第15章44節で、「ソーマ・プニュマティコン」ということばを使ってそのこと
について述べています。「ソーマ・プニュマティコン」とは「霊のからだ」といったよ
うな意味になります。パウロは次のように書いています。
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まかれるときは朽ちるものでも、朽ちないものによみがえり、
まかれるときには卑しいものでも、栄光あるものによみがえり
まかれるときには弱いものでも、強いものによみがえる。
――「コリント人への第一の手紙」第15章より
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確かにネオの変身に共通性があることがわかると思います。復活したネオの身体には
光さえ差しているのです。まさに「ソーマ・プニュマティコン」です。それに昨日のE
Jでご紹介した仲間を裏切るサイファーですが、これはユダそのものでしょう。
サイファーが隠れてスミスと会うのは、ユダが祭司長らと内々に会ってイエスを裏切
る相談をするのとそっくりです。ユダには「秘密」という意味があるそうですが、サイ
ファーにも「秘密」という意味があり、一致しています。
ここで、預言者のオラクルについて述べる必要があります。このオラクル――見た目
は普通のおばさんですが、かつてモーフィアスに救世主が復活することを予言し、人々
にその運命を告げる予言者としての役回りなのです。
マトリックスの設計者であるアーキテクト――AIの代弁者はオラクルは人間心理の
探索のために作った「直感プログラム」であると語ります。第2章の「リローデッド」
で、このオラクルについてネオは、彼女とそのガードマンのセラフがバックドアから出
入りするのに気がついて、「あなたはプログラムだ」と迫るシーンがあります。バック
ドアとは、ハッカーが再侵入のために作っておく裏口のことです。システム開発者がセ
キュリティのために意図的に作るのも「バックドア」といいます。
「リローデッド」で無数のドアが並ぶ廊下が登場しますが、このドアはマトリックス
内のあらゆる場所に抜けられるようになっています。バックドアはそのドアの中に作ら
れているのです。この廊下に入ると、ネブカドネザル号の監視カメラから姿が見えなく
なることも覚えておくとよいでしょう。
さて、「第2章で究極の選択をした後のネオ」とは何でしょうか。「リローデッド」
の終わりのところでネオは、マトリックスの設計者アーキテクトという老人に会います
。そのときのネオとアーキテクトの会話は非常に重要な意味を持っているのです。
アーキテクトは、ネオが救世主であることを認めた上でネオに究極の選択を迫るので
す。「人類を救うなら右のドアを、トリニティーを救い、人類が滅亡する道を選ぶなら
左のドアを――君はどちらを選ぶか」と。このテーマは明日終了します。
−−[マトリックス/08]

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