●3つの強者はデフレを愛する(EJ第657号)
デフレになると、誰がトクをするか考えてみます。森永卓郎氏によると、次の3つの
強者がトクをするというのです。
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1.第1の強者/日銀とそれに結託する富裕層
2.第2の強者/経営者
3.第3の強者/構造改革派エコノミスト
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第1の強者は「日銀とそれに結託する富裕層」です。
1万円札の原価は17円だそうです。それが1万円として流通するのです。それは皆
が1万円だと思っているからこそ、市場では1万円として流通しているわけです。
デフレになると、何もしなくてもその1万円の価値が上昇するのです。逆にインフレ
になると、1万円の価値は下がってしまいます。紙幣はいわば日銀の製品ですから、そ
の紙幣の価値が上がるのがいいのか、下がるのがいいのかといったら、上がるのがいい
に決まっていますね。
日銀が金融引締めをするのは、紙幣の価値を下げないというより上げたいと考えてい
るからではないかと思われます。日銀のこうした対応につけこんだのが現代の強者――
能力の高い人、既得権益に守られて所得を確保できた人なのです。そういう人たちは、
下がり続けるモノ、株式、不動産などを買い占めてますます強者になっていきます。彼
らにとって、デフレは大歓迎といえると思います。
第2の強者は「経営者」です。デフレで失業率が高まれば、経営者はいろいろな面に
おいて強くなります。賃金引下げ、労働強化、リストラなど、やりたい放題何でもでき
ますね。今まで解雇権の乱用を厳しく戒めてきた日本の労働市場で「希望退職」という
名の首切りを自由にできるようになっているのも、デフレのおかげといえないでしょう
か。
第3の強者は「構造改革派のエコノミスト」です。
構造改革派のエコノミストといってもピンとこない向きもあると思うので、実名をひ
とり出しましょう。竹中平蔵経済財政担当相はまさにその筆頭といえるでしょう。
彼らはグローバルな競争に勝ち抜くためには経済の構造改革は不可欠であり、その中
で多少のデフレ圧力が起こるのはやむを得ないという考え方に立ってデフレを正当化し
ています。経済がこういう状況でなければ、竹中氏が大臣になることはまずなかったと
思われます。
また、構造改革派のエコノミストたちの巧妙なことは、デフレで国民を不安な状況に
陥れると同時にIT革命というバブルを作り出して、それに乗るかたちで自己の資産を
増やしていることです。そのこと自体は別に悪いことをしている訳ではありませんが、
そういうことができるからこそ強者といえます。構造改革派のエコノミストたちはまさ
にこの世の春でしょう。
さて、米国でも1990年代のはじめには、日本と同様に大きな金融システム上の困
難、不良債権による銀行のバランスシート問題をかかえていたのです。その米国を救っ
たのは、日本の日銀に当るFRBの議長であるグリーンスパン氏のとった金融政策であ
るといってよいでしょう。グリーンスパン議長は、1992年〜93年にかけて大胆な
金融緩和政策を行い、銀行のバランスシートを回復させると同時に金利低下やドル安に
よる景気回復を実現させたのです。
そのグリーンスパン氏も昨今の米国のバブル・マーケットの崩壊によって、その評価
は大幅にダウンしています。それは、1997年〜2000年までの4年間、資産バブ
ル(インフレといってもよい)を放置してきたからです。
ある情報によればグリーンスパン氏は、クリントン前大統領とゴア前副大統領から、
大統領選の行われる2000年まで、何とか高値の株式市場と低失業率をサポートして
くれと頼んでおり、グリーンスパン氏はそれを受け入れたのではないかといわれている
のです。
そして、グリーンスパン氏はこの4年間にわたるバブルの放置を正当化するため「ニ
ューエコノミー論」なる理論を持ち出して説明してきたのです。その是非については、
いずれEJで取り上げますが、とにかくこのグリーンスパンなる人物、調べれば調べる
ほど凄い人であると思います。
テレビによく映るグリーンスパン氏というと、道路を歩いてくる映像やビルに小走り
に駆け込む映像が多いですが、FRB本部議長室でPCを操作するグリーンスパン氏の
写真を添付ファイルでご紹介しましょう。これは大変珍しい写真です。
彼は30分ごとにPCで米国債、ダウ平均株価、外国為替、原油、金など、金融市場
の状態を示すデータのチェックをしているということです。わが速水日銀総裁はどうな
のでしょう。速水総裁はPCを使えるのでしょうか。
基本的には、現在の日本の経済を回復させるためには、グリーンスパン氏が1992
年〜93年にかけてとった金融緩和策をとるしかないと思われます。要するに金融緩和
策、具体的にいえば円安誘導と日銀国債引き受けしかないといえます。
しかし、それをやる前提として日銀がインフレを調整できるということが必要になり
ます。しかし、日銀はかねがねそれはできないといっています。確かに物価を上げて、
それを一定の水準で止めるということはやさしいことではありません。しかし、それを
やるのが中央銀行の役割のはずです。そんなことはできないとする日銀は能力がないと
いっているのと同じです。
構造改革派のエコノミストたちは、金融緩和は「モルヒネ」に過ぎないといっていま
すが、量的緩和こそ構造改革を前進させるのです。というのは、量的緩和が進むとデフ
レが止まりますが、逆に金利が上昇します。そうすると、金利が払えない企業が淘汰さ
れます。デフレが止まれば担保が減額しないので、銀行は追い貸しせず、担保を処分し
て資金を回収できるのです。 ・・・[円の支配者日銀/07]