●電子書籍化が進む本当の理由(EJ第1341号)
紙の本と電子書籍とを比べてみると、かえって紙の本の便利さがわかってきます。紙
の本はどこにでも持って行けて、ちょっとした時間でも読める――こんな便利なものは
ないと思います。電子書籍ではこうはいかないでしょう。本来なら紙の本という成熟商
品に何かを加える必要はないと思われます。誰も紙の本に不満を感じている人はいない
のですから・・・。
しかし、電子書籍への動きは加速しています。どうしてなのでしょうか。
それは、本の素材である紙が不足しつつあるからなのです。紙は、パルプから成り、
パルプは木から取り出されるのです。紙1トンを作るのに、森の大木20本が必要なの
です。その森林資源が不足してきているのです。
現在、紙の原料である森林資源が大きく減っています。中国の緑は国土の12%しか
ないのです。これは、アフリカの18%を下回っています。これに比べると、日本はも
ともと山が多い地形のため67%が森林に覆われていますが、それでも森林資源は減り
続けているのです。
ジャーナリストの横山三四郎氏は、人口の多い中国こそ電子書籍を使うようになると
予測して、次のように述べています。
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人口13億人だから、小学生の1学年だけでも全国で一千万
人ほどもいる。就学していない子どもたちもいるから概算で小
中学生は1億2千万人とされ、日本の総人口に匹敵する。これ
らの小中学生に教科書を、各教科ごとに与えていたら、またそ
れより高学年の学生生徒に紙の教科書を配っていたら、それだ
けでも紙資源が枯渇する。
安価な読書端末ができて、それひとつで、全教科の教科書に
使えるような便利なものが開発されたならば、中国政府は飛び
ついてくるに違いない。 ――横山三四郎著、『ブック革命/
電子書籍が紙の本を超える日』より。(日経BP社刊)
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しかし、読書端末も教科書のデータを入れるメモリカードも非常に高価です。しかし
数が数ですから、相当コストダウンできる可能性があります。既に松下では、シグマブ
ックを北京大学に提供して今年の春には10万台が納品されています。北京大学への進
学を考えて勉強している小中学生に配付するためです。
北京大学としては、この導入を3年から5年くらいは続ける予定であるといいます。
価格は、約1000元――約15000円ということです。それにしてもどうやってデ
ジタル教材を流通させるのでしょうか。
北京の小中学校にダウンロードボックスを置き、人工衛星でデジタル教材を配信する
のです。中国では既に人工衛星を利用した通信教育がはじまっており、その人工衛星で
デジタル教材を配信するのです。このような状況を考えると、横山氏のいう通り、電子
書籍は中国で急拡大する可能性があります。
紙不足と並んで出版業界は、もうひとつ大きな問題を抱えています。それは、紙の本
が売れていないということです。2003年の出版業界の販売金額――書籍と雑誌の合
計は、2兆2278億円で、対前年比はマイナス3.6%なのです。
しかも、この対前年割れは、次のように、7年間連続で続いているのです。そのため
か、この10年間で1万店近い書店が廃業したというのです。これは本好きの人間にと
って大変悲しいことです。
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1997年 ▲0.7% 2001年 ▲3.0%
1998年 ▲3.6% 2002年 ▲0.6%
1999年 ▲3.2% 2003年 ▲3.6%
2000年 ▲2.6%
――鈴木雄介著、『eBook時代はじまる!』
(中経出版)
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7年間連続減少はかなり深刻な数字です。しかし、1999年から新刊の発行点数は
急上昇しているのです。添付しているグラフを参照していただきたいと思います。
2003年については、新刊発行点数は7万2608点であり2000年に比べて、
点数にして5000点、比率にして7.4%も増加しています。これはどういうことな
のでしょうか。
グラフをよく見ていただくと、新刊発行点数は急増していますが、新刊発行部数は減
少しています。つまり、点数としては増えているが、初版の部数は減少しているという
ことです。それに、書籍の返品率が、1997年以来40%前後を推移しているという
ことです。つまり、書店に並んだ本の平均40%は、売れずに出版社に戻ってくるとい
うことになります。
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1997年 39.3% 2001年 39.1%
1998年 41.0% 2002年 37.7%
1999年 39.9% 2003年 38.8%
2000年 39.4%
――鈴木雄介著、『eBook時代はじまる!』
(中経出版)
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40%の返本率といっても、必ずしも60%が売れたとはいえないのです。それは、
売れずにそのままどこかの書店の棚に並んでいるかも知れないからです。これを流通在
庫というのです。しかし、出版社としては、当然それは売れたものとして処理すること
になります。
それでは返された本はどうなるのでしょうか。そもそもなぜ、返本することができる
のでしょうか。これについて、理解するには、日本における本の製作と販売の制度につ
いて知る必要があります。これについては、明日のEJで取り上げます。
・・・[電子図書/07]