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このブログは、異文化研修の教育機関(株)インテック・ジャパンの情報発信用です。(株)イー・メディアとの提携により、同社のドキュメント・レポート「Electronic Journal」をウィークデイの毎日お届けします。
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トップ カテゴリー:メンコン

2006年04月17日

注目すべき2つの”メンコン”(EJ1136号)

 音楽の話題から入ります。テーマはメンコン――メンデルスゾ
ーン作曲「ヴァイオリン協奏曲ホ短調 作品64」です。
 メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調といえば、あま
り音楽を聴かない人でも、最初の出だしの部分くらいは、知って
いるくらいポピュラーな曲のひとつです。
 しかし、この曲に関する限り、心から満足できる演奏にめぐり
合える機会は少ないのです。多くのヴァイオリニストがこの作品
に挑み、数え切れないほどのCDが制作されているのにです。そ
れでいて、決定盤といえるものが少ないのです。それは、この曲
を演奏することが非常に難しいからです。
 もちろん技術的に難しいという意味ではありません。それは、
この曲が、一度でも耳にすれば、誰もが忘れることのできない美
しいメロディを持ちながら、ちょっと演奏を誤ると、単なるセン
チメンタルな音楽になってしまうという危うさがあるからです。
 演奏者はそういう音楽にならないようにしながら、この曲に本
来備わっている気品の高さや古典的な造形の美しさも表現しなけ
ればならない――これは至難のわざなのです。
 ごく最近のことですが、注目すべき2つのメンコンが相次いで
発売されています。
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 メンデルスゾーン作曲「ヴァイオリン協奏曲」ホ短調作品64
  1.ヴァイオリン/ヴィクトリア・ムローヴァ
    ガーディナー指揮
    レヴォリュショネール・エ・ロマンティックO
    (フィリップス/UCCP1075)
  2.ヴァイオリン/五嶋みどり
    マリス・ヤンソンス指揮
    ベルリン・フィルハーモニーO
    (ソニークラシカル/SICC123)
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 この2つは対照的なメンコンといえます。両方を購入してもソ
ンはないということです。カップリングもお教えしましょう。
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 ムローヴァ ・・・ ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲
 五嶋みどり ・・・ ブルッフ   のヴァイオリン協奏曲
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 もともとムローヴァのメンコンは定評があり、私は高く評価し
ているのですが、今回の新盤は今までにない大きな特色があるの
です。というのは、この盤は古楽器を使って、新しい感覚の音色
でメンコンに挑戦しているからです。
 現在のヴァイオリンは、ナイロン弦やスティール弦を使ってい
ますが、昔のヴァイオリンの弦はガット(羊腸線/ガット弦)を
使っていたのです。羊の小腸の一部分の繊維だけを取り出して、
これを太さに応じて何本も作り、E線からG線まですべてガット
で弦を張ったのです。
 このCDでムローヴァは、メンデルスゾーンもベートーヴェン
もガット弦を張ったヴァイオリンで演奏しています。ですから、
聞き慣れない音がときどき出てくるので、かえって新鮮な感じが
するのです。しかし、2002年6月の録音であり、「レコード
芸術」の録音点数は93と、音は申し分ないのです。
 もう一枚の五嶋みどりのCDは、マリス・ヤンソンス指揮のベ
ルリン・フィルとの共演です。このヤンソンスという指揮者は、
現在ヨーロッパの音楽界でサイモン・ラトルと人気を二分するほ
どの指揮者であり、五嶋にとって、現在望みうる最高の共演者と
いっても過言ではないでしょう。
 ところで、この五嶋みどり――メンデルスゾーンもブルッフも
初録音であり、とくにメンコンに関しては実演でもここ10年以
上弾いたことがなく、本人にいわせると録音はあきらめていたと
いうのです。五嶋みどりといえば、既に20年以上のキャリアが
あり、実力派です。それでいて、このポピュラーな曲を録音する
のに逡巡する――それほど、この曲は難しいといえます。
 録音は、ムローヴァと同じ2002年6月であり、非常に新し
い録音です。「レコード芸術」の月評にはまだ登場していません
が、音楽評論家の中村孝義氏は次のように絶賛しており、特選盤
か推薦盤は間違いないと思われます。
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 今さら五嶋みどりに対して失礼かもしれないが、この演奏は、
 いよいよ彼女が、後世に名を残す本物の芸術家への第一歩を踏
 み出した演奏のように思えてならない    ――中村孝義氏
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 それに五嶋みどりの演奏は、メンデルスゾーンとブルッフとも
に、ライブ録音であるということです。それでありながら、両方
とも、きわめて完成度の高い演奏であるといえます。もし、質の
高いメンコンを1枚欲しいと望まれるのであれば、五嶋みどりの
方をお勧めしたいと思います。
 このようにいうと、五嶋みどりの盤がムローヴァ盤を上回って
いるようにとる人がいるかも知れませんが、どちらも価値の高い
演奏であることには変わりはないのです。ただ、ムローヴァの場
合は、古楽器を使っている点が特殊であって、その点五嶋みどり
の方が一般的であるということだけです。
 ムローヴァ盤について興味が尽きない点は、やはりガット弦を
中心とする古楽器の音です。ムローヴァは、ベートーヴェンでも
メンデルスゾーンでもガット弦を見事に鳴らしており、自然な音
作りに成功しているといえます。もともとムローヴァは、実演で
聴くと線の細い演奏になるのですが、このCDではそれが繊細さ
となって響いています。そういう意味で貴重な一枚といえると思
います。             ・・・・・[メンコン01]

ムローヴァ/五嶋みどり.jpg

2006年04月18日

メンコンには第三者の手が入っている(EJ第1137号)

 メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲の続きです。
 ヘルベルト・フォン・カラヤンという高名な指揮者がいます。
カラヤンは大指揮者であるにもかかわらず、ポピュラーな曲を積
極的に取り上げ、それを素晴らしい演奏で聴かせる――そういう
ところに人気の源泉があったといえます。
 音楽にうるさい人にお聞きしますが、カラヤンの指揮するオー
ケストラで、メンコンを聴いたことがあるでしょうか。
 相当音楽に詳しい人でもあまりないと思います。カラヤンは、
なぜか、この曲をあまり取り上げていないのです。嫌いだったの
でしょうか。一説にはカラヤンはユダヤ人作曲家のヴァイオリン
協奏曲を意識して取り上げなかったという説もありますが、それ
は違うと思います。
 ところで、「あまり・・ない」と書きましたが、それは、カラ
ヤンがメンコンを演奏し、録音したことは少ないけれどある――
そういうことを意味します。
 カラヤンは、アンネ・ゾフィー・ムターというヴァイオリニス
トと組んで、次のCD(輸入盤)を出しています。これが初録音
であり、そのあとはないのです。もし、あったら、ご教示いただ
きたいと思います。
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   ●メンデルスゾーン作曲 ヴァイオリン協奏曲
    ヴァイオリン/アンネ=ゾフィー・ムター
    カラヤン指揮/ベルリン・フィル/1980年録音
    /ポリドール 445 515-2(輸入盤)
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 この盤で同時に入っているのは、ブルッフの協奏曲であり、昨
日お話しした五嶋みどりの盤と同じです。おそらくカラヤンは、
メンコンを演奏したかったのですが、良いヴァイオリニストがい
なかったのでしょう。ムターと出会えてはじめて録音する気にな
り、CD化したものと思われます。
 さて、メンコンは、メンデルスゾーンの代表作であるとともに
ヴァイオリン協奏曲の最高傑作の1つなのです。とかくメンデル
スゾーンの曲は、底抜けに明るく、伸びやかで、とくに交響曲な
どを聴くと、何か苦労しないで才能のおもむくままに作曲されて
いるなどとよくいわれます。
 しかし、メンコンに関しては、メンデルスゾーンは着想から完
成まで6年も費やしており、カデンツァを作曲者自身で書いたり
楽章間をつないだりと、当時としてはかなり革新的な作品だった
のです。
 ところが、いまわれわれが聴いているメンコンは、メンデルス
ゾーンの原典とは異なり、第三者の手が入っているということを
いうヴァイオリニストがいます。
 そのヴァイオリニストの名前は、ルイジ・アルベルト・ビアン
キというイタリア人です。彼は、メンコンを演奏するたびにどう
もこの曲には作曲家以外の手が入っていると感じ、調査を開始し
たのです。とにかく楽譜の原典版――メンデルスゾーンの自筆の
楽譜を探すことが先決であるとして楽譜の行方を追ったのです。
 調査の結果、その楽譜は第2次世界大戦中に他の膨大な楽譜と
一緒にベルリンからソ連、ポーランドに持ち出されていることが
わかったのです。そして、その足取りを追っていくと、ポーラン
ド南部にあるヤギヴォ大学にそれがあることがわかります。
 ビアンキは、その原典版の楽譜を手に入れ、演奏してみたとこ
ろ、現在われわれが聴いているメンコンとはかなりの違いが発見
されたというのです。その自筆楽譜には「1845年3月13日
初演」と書かれており、初演者ダヴィットの署名があるので、少
なくとも初演の楽譜には違いないのです。
 ビアンキは、この原典版の楽譜に基づき、1989年5月5日
に、テミルカーノフ指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
の演奏でこれを演奏しています。
 実は、メンデルスゾーンの原典版は、1998年に正式に録音
され、現在入手可能です。しかし、それを発見したビアンキの演
奏によるものではなく、イザベル・ファン・クーレンがヴァイオ
リンを弾いています。
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 イザベル・ファン・クーレン(ヴァイオリン)
 レフ・マルキス指揮/新アムステルダム・シンフォニエッタ
 BIS/1998年録音
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 このように、メンコンひとつとってもさまざまなドラマがある
のです。私自身はこの盤をまだ入手していませんが、時間ができ
たら聴いてみたいと思っています。
 メンコンについていろいろ述べてきましたが、最後に今までに
CD化された不朽の名盤といわれているものについて、情報を提
供しておきたいと思います。
 最近は、録音技術が進んでおり、かなり古い録音でも信じられ
ないほど、リアルに復刻できるようになっています。
 メンコンの名盤で、現在入手可能なものは、次の2つの盤があ
ります。いずれも1950年代の録音です。
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 ●ヴォルフガング・シュナイダーハン(ヴァイオリン)
  フリッチャイ指揮/ベルリン放送交響楽団/擬似ステレオ
 ●ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)
  シャルル・ミンシュ指揮/ボストン交響楽団
  RCA/LIVING STEREO
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 シュナイダーハンの盤は大変な名演です。1956年の録音で
すが、1998年末に日本で世界初CD化されています。もう1
つのハイフェッツの盤は、1959年の録音ですが、現在の録音
かと間違えてしまうほど凄い音でよみがえっています。
                ・・・・・[メンコン02]

五嶋みどり/シュナイダーハン.JPG

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