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このブログは、異文化研修の教育機関(株)インテック・ジャパンの情報発信用です。(株)イー・メディアとの提携により、同社のドキュメント・レポート「Electronic Journal」をウィークデイの毎日お届けします。
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トップ >> カテゴリー:ヴィヴァルディの「四季」の話

2008年03月06日

現代曲化が試みられる『四季』(EJ第731号)

 3月10日から少しまとまったテーマについて連載するので、今週の分として、2回
の短い音楽のテーマを取り上げます。このレポートは、2001年10月29日と30
日の2日間取り上げたものであることをお断りしておきます。
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 ヴィヴァルディが作曲した「四季」という曲をご存知ですね。この曲は日本人が最も
好むクラシック曲の1つといわれていますので、クラシックがあまり好きでない方でも
何回かは聴いたことがあると思います。
 「四季」というタイトルをつけた曲は、チャイコフスキー、グラズノフ、ヨゼフ・ラ
ンナーなどいろいろありますが、その中でもヴィヴァルディの「四季」はダントツで、
今や「四季」といえばヴィヴァルディの「四季」を指すくらい、有名な曲になっています。
 もうひとつ、ヴィヴァルディの「四季」ほど現代の音楽家が好んで現代風にアレンジ
を加える素材として取り上げる曲はないということです。ヴィヴァルディの「四季」を
現代風に演奏して成功したひとりに「ナイジェル・ケネディ」という人がいます。ケネ
ディの演奏は、もし、ヴィヴァルディがタイムスリップして現代にきたら、「四季」を
このように演奏するでしょうという表現法であるといわれています。
 チェロの巨匠、ミッシャ・マイスキーがタクシーに乗ったところラジオで「四季」を
やっていたので、「止めてくれ」と頼んだそうです。そうしたら運転手が「お客さん、
この曲をご存知で・・・」と聞いてきたので、「ヴィヴァルディの・・」と答えると運
転手が笑って「はずれ!」といったというのです。「そういう曲じゃない。これはナイ
ジェル・ケネディ!」といったというのです。ナイジェル・ケネディ――それほど大ヒ
ットしたのです。
 ところで、近代タンゴの巨匠、アストル・ピアソラの曲の中にも「四季」があるのを
ご存知でしょうか。「ブエノスアイレスの四季」というタンゴの名曲です。実は最近ヴ
ィヴァルディの「四季」とピアソラの「ブエノスアイレスの四季」をドッキングさせ1
つの曲として仕上げたヴァイオリニストがいます。
 そのヴァイオリニストの名前はギドン・クレーメルです。クレーメルは1947年に
ラトヴィアのリガに生まれたヴァイオリニストで実力派として知られていますが、この
人があまねく有名になったのは1996年に「ピアソラへのオマージュ」というCDを
出してからです。
 当時ピアソラの曲はあまり知られていなかったし、CDに収録されている曲も有名な
ものではなかったのに、このCDは爆発的に売れてベストセラーアルバムになります。
以後クレーメルは続々とピアソラのアルバムをCD化していますが、そのほとんどがヒ
ットしているのです。
 最近のクレーメルは、バルト3国(エストニア、ラトヴィア、リトアニア)の若手演
奏家で構成されるオーケストラ、クレメラータ・パルティカを創設して、自らソリスト
をするとともにアーティスティック・リーダーを務めています。クレーメルの最近のア
ルバムは、そのほとんどがこのクレメラータ・パルティカとの共演によるものです。
 実は、このクレーメルはヴィヴァルディの「四季」には思い入れがあり、何回も演奏
しています。1980年にクレーメルは、クラウディオ・アバドの指揮で、ロンドン交
響楽団とヴィヴァルディの「四季」を演奏し、録音することになったのです。
 ところが、この曲の<冬>の第2楽章「ラルゴ」のテンポについてアバドとクレーメ
ルは対立します。クレーメルは「四季」の楽譜の深読みを何回もしており、曲に関して
自分なりの考え方を持っているので、指揮者のいいなりにはならないのです。
 この<冬>の第2楽章「ラルゴ」は大変よい曲で、早からず遅からず絶妙のテンポで
演奏する必要があります。アバドは、クレーメルのこの楽章のテンポを気にしていて、
「もう少しゆっくりやってくれ」と注文をつけてきたので、クレーメルもできるだけ指
揮者の意に沿うよう演奏したつもりだったのです。
 しかし、アバドは録音が済んだあとから「第2楽章を録音し直したい」といってきた
のです。しかも、アバドはゆっくりしたテンポで演奏したオケのテープを送ってきて、
クレーメルに対して自分のパートを吹き込むよう指示してきたというのです。
 これはかなり失礼な話であり、クレーメルは吹き込みを拒否したのです。しかし、そ
の代わりに、たまたまイギリス室内管弦楽団と録音したばかりの「四季」のテープをア
バドに送りつけたといいます。クレーメルとしては、テンポに関して絶対に妥協するつ
もりはなかったからです。
 ところで、この<冬>の第2楽章「ラルゴ」は短い曲で、問題になっているのは数秒
間の違いなのです。アバドはゆっくり目のテンポを要求するのに対して、クレーメルは
比較的早いデンポを主張しているのです。実は、この部分は指揮者や演奏者によって大きく異なる部分です。いくつか比較してみます。
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        アーノンクール ・・・・・・・・ 1分10秒
        クレーメル(イギリス室内管) ・ 1分16秒
        クレーメル(アバド)・・・・・・ 1分25秒
        アンネ・ゾフィ・ムター ・・・・ 2分49秒
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 アバドが要求したのは1分50秒ということであり、なかなか意見が合わなかったの
です。結局アバド側が折れて録音テープはCD化され、そのまま発売になったのですが
皮肉なことにこのCDは非常に売れたそうです。
 私個人の好みでは、この部分はゆっくり目に演奏して欲しいと思います。最初に聴い
たイ・ムジチ合奏団が比較的ゆっくり目であったからです。しかし、クレーメルのヴィ
ヴァルディとピアソラをコラボレーションした「四季」を聴いて、「四季」に対する考
え方が大きく変わったのです。  ・・・[ヴィヴァルディの『四季』の話/01]

ギドン・クレーメル.jpg
       

2008年03月07日

バロックと現代作品とのコラボレーション(EJ第732号)

 ギドン・クレーメルが心から尊敬し、傾倒している音楽家は2人います。一人はアス
トル・ピアソラ、もう一人はレナード・バーンスタインです。この2人に共通している
のは、2人とも作曲家であると同時に、演奏家(指揮者を含む)でもあるということで
す。19世紀には作曲家が演奏したり、指揮をすることはごく普通のことでしたが、最
近はそういう音楽家は減っています。
 ピアソラとバーンスタインの2人の音楽を聞いて感ずることは2人とも「きわめてエ
ネルギッシュである」ということです。このことにクレーメルは魅かれているといって
います。そういっている当のクレーメル自身、非常にエネルギッシュな人です。
 このピアソラの代表的な作品のひとつに「ブェノスアイレスの四季」という曲があり
ます。これは次のように四季を構成する4曲が揃っているだけで、別に組曲というわけ
ではなく、季節の順番に並べて演奏する必要はないのです。
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         ブェノスアイレスの春 Primavera Portena
         ブェノスアイレスの夏 Verano Portena
         ブェノスアイレスの秋 Otono Portena
         ブェノスアイレスの冬 Invierno Portena
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 しかしピアソラ自身が4曲まとめて演奏したことが1回だけあります。それは、レジ
ーナ劇場におけるリサイタルでのことでこの演奏は、次のCDにまとめられています。
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        「レジーナ劇場のアストル・ピアソラ1970」
         BMGファンハウス:BVCM−35001
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 ちなみにそのときの演奏順序は、冬、夏、秋、春の順になっています。ピアソラは、
夏、秋、冬については頻繁に演奏していますが、「春」についてはあまり取り上げてい
ないのです。4曲の中では、地味な存在なのです。4曲の中で一番際立って美しいのは
「冬」です。「冬」はバロック調の香りが漂っており、ピアソラはバロック調を好んだ
といわれます。ここにピアソラとヴィヴァルディとの接点があります。
 クレーメルは、ヴィヴァルディの「四季」のスコアについての研究を重ねた結果、こ
の曲の普遍性というものに気が付きます。バロックでありながら、何か現代に通じるも
のがあると感じたのです。このあたりは、ナイジェル・ケネディと通じるものがありま
す。ただケネディはそれを現代風に演奏しようと考えたのに対してクレーメルは、「四
季」と現代作品とをコラボレーションしたいと考えたのです。
 そこで、クレーメルは友人であるシュニトケ、カンチェーリ、ノーノ、グバイドゥー
リナなど多くの作曲家に、「四季」と組み合わせる作品を書いてくれと呼びかけたので
すが、誰もクレーメルの呼びかけには応じてくれなかったのです。
 そういうときクレーメルは、ピアソラの「ブェノスアイレスの四季」のことを思い出
すのです。2つの「四季」を結びつけることはできないか――クレーメルは、持ち前の
大変なエネルギーをもってこれの実現に取り組んだのです。
 50歳になったクレーメルは、この壮大な実験を実現させるためもあって、バルト3
国の優秀な若手演奏家25人を集め、クレメラータ・パルティカを創設します。199
7年のことです。なお、クレーメル自身もバルト3国のひとつラトヴィアの出身なので
す。そういうこともあってクレメラータ・パルティカのデビュー・コンサートはラトヴ
ィアのリガで行われ、その後、多くの国外ツァーを行い、大好評を博するのです。
 そして、クレメラータ・パルティカは、ノンサッチ・レコードと独占録音契約を結ぶ
のですが、その第1弾が、ヴィヴァルディの「四季」とピアソラの「ブェノスアイレス
の四季」の融合作品「エイト・シーズンズ」なのです。
 1999年2月、クレメラータ・パルティカは日本にやってきました。そのとき「エ
イト・シーズンズ」が演奏されたのですが大好評だったそうです。そのとき独奏ヴァイ
オリンを担当したクレーメルは、ピアソラの音楽の部分になると、ときおり笑顔を見せ
ながら嬉々とした表情を浮かべて演奏し、クレメラータ・パルティカのメンバーも笑顔
でそれに応えるなど、とてもよい雰囲気だったそうです。
 「エイト・シーズンズ」はヴィヴァルディの「四季」を中心に据えて、春、夏、秋、
冬のそれぞれのヴァイオリン協奏曲のあとにピアソラの「四季」を置いたのです。
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       第1楽章:ヴィヴァルディ:協奏曲集≪四季≫/「春」
            ピアソラ:ブェノスアイレスの四季/「夏」
       第2楽章:ヴィヴァルディ:協奏曲集≪四季≫/「夏」
            ピアソラ:ブェノスアイレスの四季/「秋」
       第3楽章:ヴィヴァルディ:協奏曲集≪四季≫/「秋」
            ピアソラ:ブェノスアイレスの四季/「冬」
       第4楽章:ヴィヴァルディ:協奏曲集≪四季≫/「冬」
            ピアソラ:ブェノスアイレスの四季/「春」
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 もちろんただ並べても音楽にはなりませんので、ピアソラの曲については編曲をして
音楽が流れるようにしています。編曲者はクレーメルの盟友レオニード・デシャトニコ
フです。
 とにかく聴いてみてください。本当に素晴らしいものです。まさにヴィヴァルディと
ピアソラの「四季」が融合して新鮮な輝きを放っています。とくに、ヴィヴァルディの
「四季」が好きな人には絶対にお勧めです。
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        『エイト・シーズンズ』(WPCS−10500)
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                 ・・・[ヴィヴァルディの『四季』の話/02]

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