一時国有化と実質国有化の違い(EJ第1218号)
自民党が参議院での過半数を失って、過去のいろいろな疑惑がたくさん出てきていま
す。改革を売り物にした小泉政権にも謎がたくさんあります。その謎の1つに「りそな
処理」があります。
このレポートは、2003年10月24日のEJ第1218号から同年11月14日
のEJ第1232号までの15回にわたって記述したものですが、再現することにしま
す。
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日経平均株価が4月末の7600円水準を底にして一転上昇したキッカケは、りそな
への公的資金の投入――いわゆるりそな処理であったことは既に述べた通りです。
このりそな処理については賛否両論があります。竹中路線の功績という長谷川慶太郎
氏のような賛成意見から、問題の先送りや究極のモラルハザードという批判までいろい
ろあるのです。しかし、このりそな処理――何か釈然としないものがあります。2兆円
もの公的資金の投入を受けているにもかかわらず、りそなHDは現在でも迷走を続けているからです。
日本経済について語るとき、金融問題は避けて通れないテーマです。そういうわけで
しばらく、経済の問題と関連させて、このりそな処理をテーマとして取り上げてみたい
と思います。
最初に、簡単にりそなショックを振り返っておきましょう。
2003年5月17日の午後5時30分のことです。おりしも日銀の記者クラブにお
いて、勝田泰久・りそなホールディングス(りそなHD)社長をはじめとした、りそな
首脳陣の記者会見がはじまろうとしていたのです。
この日りそなHDは臨時取締役会を開き、経営危機のため、政府に公的資金の法人申
請を決定していたのですが、記者会見はそのことを報告するためのものだったのです。
要するに、経営危機で潰れる代わりに、りそな銀行は「実質国有化」の道を選択しとい
うわけです。国有化には「実質国有化」と「一時国有化」とがあり、その意味は大きく
違うのですが、これについてはあとで詳しく説明いたします。
この記者会見のあとの午後6時30分――小泉首相は、預金保険法102条に基く金
融危機対応会議を招集して、りそなHD傘下のりそな銀行に公的資金2兆円の投入を決
定しています。これらの手続きは、1日のうちに手際良く、素早く進められ、公的資金
注入が正式に決まったのです。
それにしても、りそな銀行は3月に発足したばかりの銀行なのです。しかも、3月に
1200億円の増資をしたばかりです。それが、なぜ、経営危機になってしまったので
しょうか。
そのときの記者会見によると、りそなグループの中核であるりそな銀行は、2003
年3月期決算で、自己資本比率が2.07%、持ち株会社のりそなHDも自己資本比率
3.78%に低下してしまい、経営危機に陥ったのです。
自己資本比率とは銀行の経営体力を示す指標であって、比率が高いほど経営の健全性
が高いとされています。自己資本比率の基準は次のように定められています。
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国際業務を行う場合 ・・・ 8%
国内業務のみの場合 ・・・ 4%
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りそな銀行は、1998年に国際業務から全面撤退しているので、自己資本比率は4
%でいいのですが、2003年3月期決算において、2.07%に低下してしまったの
で、経営危機に陥ったわけです。
現在、金融ネットワークは世界規模で複雑に絡み合っており、ある国の金融機関の破
綻が全世界に連鎖してしまう危険があります。これを「システミックリスク」というの
ですが、自己資本比率の基準は、こういうシステミックリスクが起きないように各国の
コンセンサスのもとに定められたのです。
問題は、りそな銀行の自己資本比率がなぜ2.07%になってしまったかです。もち
ろん銀行の経営に問題があったことは確かですが、なぜ、突然そのような事態に陥った
かです。
これについてはいろいろな原因がありますが、一口にいうと会計監査上の問題なので
す。表面的に見ると、監査法人が銀行危機の引き金を引いたという印象になるのです。
もう少し具体的にいうと、決算内容について銀行の経営陣の判断よりも、監査法人が厳
しい判断をしたために、経営危機に追い込まれたということなのです。それがいかに銀
行の経営陣の予想を裏切るというか、意外なものであったかは、勝田泰久前社長の次の
ことばが雄弁に物語っています。
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ゴールデンウィーク明けの5月7日になって、新日本監査法
人の態度が豹変した。背信だ。 ――勝田泰久前社長
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銀行のトップが公の席で「背信」ということばを漏らすのは、よくよくのことです。
あたかも「監査法人の裏切りによって命を絶たれた」というように聞こえるからです。
ここで、「国有化」について知識を整理しておく必要があります。「国有化」という
と、1998年の旧長銀、旧日債銀のケースを思い浮かべる人が多いですが、この国有
化とりそな銀行の国有化は違うのです。
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一時国有化 → その時点で債務超過の状態 → 経営破綻
実質国有化 → 債務超過には陥っていない → 経営危機
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旧長銀や旧日債銀のケースは、負債の総額が資産の総額を上回る債務超過に陥ってお
り、経営破綻の状態だったのです。そのため、特別公的管理を適用し、全株式を国が強
制取得して「一時国有化」したのです。この両行については、一時的に完全国有化さた
ので、株は紙くずとなり、社長は国が選んだのです。
これに対して、りそな銀行のケースは2002年10月の竹中プラン(金融再生プロ
グラム)に基づく初めての「特別支援行」として「実質国有化」したのです。なぜなら
国有化の時点において、債務超過にはなっていないと認定されたからです。
そのため、株式上場は維持され、りそな銀行の株は紙くずにならず、後任の社長は内
部登用が認められたのです。このケースの国の関与は比較的緩やかで、経営の独立性は
ある程度保てるといえます。「経営破綻」と「経営危機」とは違うのです。
・・・[りそな処理の謎/01]