INTEC JAPAN/BLOG

このブログは、異文化研修の教育機関(株)インテック・ジャパンの情報発信用です。(株)イー・メディアとの提携により、同社のドキュメント・レポート「Electronic Journal」をウィークデイの毎日お届けします。
「Electronic Journal」は様々な情報を400字詰原稿用紙7枚にまとめて配信する日刊メールマガジンです。

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2007年07月30日

話題のサウスウエスト航空(EJ第267号)

 この記事は少し古いですが、1999年11月24日から同年12月2日までの6回
(1回番号飛びあり)にわたって連載したものです。
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 今朝から断続して米国のサウスウエスト航空の話題を取り上げます。サウスウエスト
航空については『サウスウエスト航空/驚愕の経営/破天荒!』(ケビン・フライバー
グ・ジャッキーフライバーグ著、小幡照雄訳、日経BP刊)という本が出ていますが、
なにしろ400ページを超える大著であり、お読みになる時間もない人も多いと思われ
るのでそのエッセンス中のエッセンスをご紹介しようというわけです。
 実は偶然ですが、筆者はサウスウエスト航空に搭乗したことがあるのです。1996
年のことですが、マイクロソフト・ツァーでコムデックス・フォールに行ったとき、シ
アトルからラスベガスまでサウスウエスト航空を利用したのです。
 そのときいくつか不思議な体験をしたのです。まず、搭乗切符が何回も使えるプラス
チック製の整理券のようなものを使っていたこと、座席は全席自由席であること、途中
ソルトレークシテイの空港に着陸し、そこで客を降ろして、そこからラスベガスに向か
ったことなどです。しかも、その飛行機はラスベガスが終点ではなく、ラスベガスでも
客を乗せて、終着点のロサンゼルスに向かったのです。これこそまさしく“エアバス”
です。
 もっともそのようなことは米国では当たり前のことなのでしょうが、成田〜シアトル
間の往復に搭乗したノースウエスト航空とはあまりにも違うこと、乗務員が乗客に接す
る態度、ふるまいなど、いろいろな面において何かしら興味があったのです。
 それでは、このサウスウエスト航空はどういう航空会社であるかについて簡単にご紹
介したいと思います。米国は、1978年に規制が緩和され、航空会社は自由競争にさ
らされるようになったのですが、120の航空会社が破産に追い込まれています。19
90年以降になると、イースタン航空、パンアメリカン航空、ミッドウェー航空の大所
が経営破綻しているのです。
 この間において、サウスウエスト航空は毎年路線網を20〜30%拡張しながら、毎
年黒字を計上しているのです。1973年以降毎年黒字を計上している米国の航空会社
はサウスウエスト航空1社のみであり、年平均5%を超える売上純利益率は米国航空業
界のトップの位置を占めているのです。
 サウスウエスト航空は、運賃を超格安の料金に据え置き、大手航空会社と競合しない
地方都市を結ぶニッチ市場(すき間市場)のほとんどにおいて、つねに60%以上のシ
ェアを有しているのです。
 サウスウエスト航空が想定しているお客とは、午前7時にサンディエゴを出発して、
フェニックスまたはラスベガスで午前9時からはじまる会議に出席し、それからサンデ
ィエゴに戻って午後1時の会議にも出たいというビジネスマンであり、サンアントニオ
で午後5時にはじまる息子のサッカーの試合を見るために、ヒューストンの仕事先を午
後3時に出るという父親なのです。
 これを実現するには、短距離航空市場での路線の多様さと便数の多さが不可欠ですが
サウスウエスト航空はこれを実現しているのです。例えば、米国内で最も忙しい路線の
ひとつであるダラス〜ロサンゼルス間では、コンチネンタル航空とアメリカン航空が一
日15便であるのに、サウスウエスト航空では、ヒューストン行きは38便、ダラス行
きは41便も運行しているのです。
 飛行機が到着してから出発まで時間がかかったのでは、これだけの便数はこなせない
のです。飛行準備のスピードにおいて、サウスウエスト航空は文句なしにトップなので
す。各ゲートからの出発便数は、業界平均が5.0であるのに対し、サウスウエスト航
空は10.5なのですから倍以上です。だからエアバスみたいな運行ができるのです。
 その結果、サウスウエスト航空は、5年間の年平均で従業員一人当たり顧客数は24
00人という米国航空業界最大の生産性を誇っているのです。一人の従業員がサービス
する平均顧客数を比較すると、サウスウエスト航空の場合、他のどの航空会社と比較し
ても2倍以上になるというのです。それだけ多くの顧客が利用しているということであ
り、従業員がよく働いているということになります。
 しかし、整備をスピードアップすると安全性に問題が出る恐れがありますが、サウス
ウエスト航空は過去に死亡事故を起こしておらず、安全性においてもトップなのです。
航空会社の安全度を調査しているコンデナスト・トラベラー誌は、同社を世界一安全な
航空会社に位置づけています。サウスウエスト航空の飛行機保安基準とフライト・オペ
レーション基準は連邦航空局(FAA)の要求よりも厳しいそうです。
 このサウスウエスト航空の生みの親は3人います。一人はサンアントニオで小さな航
空会社を経営していたロリン・キングという企業家です。もう一人は、そのキングの航
空会社と取引きしている銀行家であるジョン・パーカーです。彼は、仕事のために、ヒ
ューストン、ダラス、サンアントニオというテキサス州主要都市を行ったり来たりして
いたのですが、不便で金がかかることを痛感しており、大型旅客機を飛ばす航空会社を
作る話をキングに持ちかけたのです。
 そのキングは、予備調査をやったあと、自分の航空会社の法律顧問であり、サンアン
トニオで弁護士事務所を開いているハープ・ケレハーに相談するのです。このようにし
て、サウスウエスト航空の設立構想がはじめられるのですが、1967年の創設から就
航するまでには、テキサス州に拠点を持つブラニフ航空、テキサス・インターナショナ
ル航空、コンチネンタル航空の3社の執拗な妨害訴訟によって4年間の法廷闘争を強い
られるのです。そして、1971年1月にサウスウエスト航空は就航します。
 日本でも旅行会社のエイチ・アイ・エス社が、スカイマークエアラインズ社を立ち上
げるさい、大手航空会社からさまざまな妨害工作があったことが明らかにされているの
ですが、サウスウエスト航空の場合も就航までにはさまざまな曲折があったのです。
                     ・・・ [サウスウエスト航空/01]

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2007年07月31日

サウスウエスト航空の戦略(EJ第268号)

 1990年から1994年にかけて米国の航空業界が出した損失額は、それ以前の6
0年間の損失を上回るといわれています。この間、毎年黒字を記録している航空会社は
サウスウエスト航空だけなのですが、サウスウエスト航空のどこがこの成功をもたらし
たのでしょうか。今朝は、このことについて考えてみます。
 サウスウエスト航空の第1の戦略は、「短距離に徹する」ということです。
 サウスウエスト航空では、その平均飛行時間を約1時間としています。距離にして約
650キロ、東京と大阪間の距離です。ですから、当初は、サンアントニオ、ヒュース
トン、ダラスのテキサス州3都市間を結んだのです。
 こういう短距離の市場には、大手航空会社は参入してこないか参入してきてもその便
数は少ないのです。つまり、大手の手が及ばないニッチ市場であるといえます。
 ですから、そういうニッチ市場に、大手の3倍くらいの便数を持てば、勝てると計算
したのです。顧客にしても待ち時間がほとんどなくて、しかも料金の安い安全な航空会
社があれば、利用するに決まっているからです。
 サウスウエスト航空の第2の戦略は、「使用航空機を絞る」ということです。
 サウスウエスト航空では、その使用航空機をボーイング737型に限定しています。
使用する航空機が限定されていれば、訓練を単純化できます。操縦士、整備士、客室乗
務員は、ボーイング737だけを知り尽くせばよいし、ミスを最小限度に抑えることが
できます。
 航空機を一機種に限定すると、保守部品の種類も最小に抑えるとができ、管理もしや
すくなります。コストも抑える効果があります。また、新たに航空機を購入するさいの
商談も有利に進めることができます。
 しかし、同型機ばかりでは面白くないので、機にさまざまなカラーリングが行われ、
個性的な演出を心がけています。
 サウスウエスト航空の第3の戦略は、「混雑する空港を回避する」ということです。
 サウスウエスト航空が使う空港は、混雑がないことと街の市街地に近いところを意識
して選んでいるといいます。これは、忙しいビジネスマンにとって好都合だからです。
 例を上げると、ダラスにはフォートワース、ヒューストンにはインターコンチネンタ
ル、シカゴにはオヘアという近代的設備の空港がありますが、サウスウエスト航空は、
ダラスではラブフィールド、ヒューストンはホビー、シカゴのミッドウェーという小さ
い空港を使っているのです。
 なぜそんなことをするのかというと、せっかく苦労してシステムの合理化をはかり、
10分で飛行準備ができるようになっても離陸命令をもらうのに40分かかっていたの
では、合理化した意味がないからです。サウスウエスト航空のこの方針は、閉鎖寸前の
小空港の存続にも力を貸す結果となったのです。
 サウスウエスト航空の第4の戦略は、「徹底的に単純化する」ということです。
 サウスウエスト航空では、全路線でチケットを発行しないシステムを導入しています
。というより大手航空会社傘下の近距離航空会社を守るための戦略として、三大予約シ
ステムからサウスウエスト航空は、すべて締め出されてしまったのです。
 ちなみに三大予約システムとは、ユナイテッド航空のアポロ、コンチネンタル航空の
予約システム、デルタ航空のワールドスパンの3つをいいます。それまで事業の約55
%が、これらのコンピュータ予約システムに依存していたのですが、追い出されてしま
ったので、それを機にチケット・レスにしたのです。
 乗客はサウスウエスト航空に電話をかけ予約番号をもらい、フライトの時間までに空
港にくればいいのです。旅行業者を通す場合でも、手続きは同じであり、予約番号をも
らうだけであり、いちいち手書きする必要がないので旅行業者もラクなのです。
 紙のチケットを発行するための直接原価は約7ドルですが、年間4000万枚を発行
するとなると、膨大なコストがかかるのです。サウスウエスト航空の予測では、年間約
1億ドルの節約になっているといいます。
 サウスウエスト航空の第5の戦略は「飛行準備の徹底的な短縮化」ということです。
 飛行準備を10分で行い、地上待機時間を10分まで短縮できれば、運転運賃を25
%削減できるといいます。サウスウエスト航空は、これに全力で取り組んだのです。そ
のためにやるべきことは多くあります。まず荷物の出し入れを合理化すること。私は、
ソルトレイクシテイに途中着陸したとき窓から荷物の出し入れを見ていたのですが、実
にスピーディーなのです。
 飛行機が停止すると、地上要員が一斉に走ってくるのですが、それはまるでF1レー
スでピットインした車を一秒でも早くコースに戻そうと必死になって点検に取り組むピ
ットクルーのようにテキバキと仕事をこなしていました。
 一方機内でも客室乗務員が機内掃除に全力をあげており、すべてを10分以内に仕上
げてしまうのです。そのため、サウスウエスト航空では、機内食を出しておらず、代わ
りにピーナッツなどのスナックをサービスしています。それらも簡単に回収可能な容器
に入っており、機内掃除の手間を省くことが意図されているのです。サウスウエスト航
空の場合、その平均飛行時間は1時間程度であり、食事をサービスする時間がないし、
乗客もそれを望んでいないのです。
 このように、サウスウエスト航空は、数々の奇想天外な戦略を駆使して信じられない
ほどの好業績を上げているのです。その好業績を生み出しているものは既存の観念には
とらわれず、物事を自由に発想し、実行するという社内風土にあるようです。
                       ・・・[サウスウエスト航空/02]

2007年08月01日

ユーモアある人を採用せよ(EJ第269号)

 サウスウエスト航空の最大の売りは「格安運賃」です。一体どの程度安いのでしょう
か。サウスウエスト航空はどの路線においても格安運賃を設定し、自ら「低運賃エアラ
イン」と名乗っているのです。
 サウスウエスト航空の場合、どの市場に参入しても必ず運賃を三分の一から半分に抑
えられるということでそれを実現してきたのです。例えば、ダラス〜ヒューストン間で
はこの低価格戦略によって実に69%のシェアを牛耳る戦果を上げています。
 具体的な例を上げると、かってダラス〜サンアントニオ間でブラニフ航空のエコノミ
ークラスが62ドルだったときに、サウスウエスト航空の運賃はたったの15ドルだっ
たのです。これでは競争相手はお手上げでしょう。
 また、1991年にサクラメント市場に参入したとき、サクラメント〜オンタリオ間
の普通運賃は、他社が440ドルだったのに対して、サウスウエスト航空は118ドル
だつたのです。
 また、オハイオ州のコロンバス〜セントルイス間では、平均的普通往復運賃が672
ドルであったときに、サウスウエスト航空は98ドル。クリーブランドでは、シカゴま
での普通片道運賃が、他社の310ドルに対してサウスウエスト航空では59ドルとい
った具合なのです。
 サウスウエスト航空のこうした格安運賃政策は、米国全土の地方自治体や企業が誘致
キャンペーンを巻き起こしています。ミルウォーキーのミッチェル国際空港にいたって
は、サウスウエスト航空を誘致するために、専用のゲートを設けてペンキを塗り、カー
ペットまで敷く熱の入れようでしたが、サウスウエスト航空はまだ乗り入れてはいない
ようです。
 しかし、どのようにしたら、このような低価格が実現できるのでしょうか。その実現
には、従業員が本当に一生懸命に働くことが基本になります。それでは、サウスウエス
ト航空にはどのような人材がいるのでしょうか。
 サウスウエスト航空には人事部という部署はなく、人材部が設置されています。同社
の従業員採用の基本は「ユーモアのセンスがあること」という変わったものです。その
理由は、ユーモアのセンスのある人は、変化にも素早く対応できるし、プレッシャーの
中でも面白いことを考え出すことができるから、といっているのです。
 現在のサウスウエスト航空のCEOであるハーブ・ケレハーはこういっています。
「サウスウエスト航空にとって従業員は、単なる資源ではない。欲求と感情を持つ生身
の人間であり、この人たちを満足させることこそ最も重要な課題である」と。
 先日、サンデープロジェクトの特集で、リストラせず終身雇用制を貫いている横川電
機(株)が取り上げられていましたが、その横川電機の社長が「当社は『人材』を『人
財』と考えています。職員は材料の『材』ではなく、財産の『財』だと考えています。
ですから当社には定年はないし、リストラをしないということを社是にしております」
といっていましたが、考え方はサウスウエスト航空のケレハーCEOと同じです。
 さて、ケレハーCEOによると、なぜユーモアのセンスが必要であるかというと、仕
事のことはいくらでも教えられるが、どんなに会社が頑張っても教えられないものがあ
る。それは、一人ひとりが持って生まれた資質である。資質は変えられないし、教えら
れるものではない。だからそういう資質を重視するわけです。
 ところで、同社の採用面接では、面白い逸話がたくさんあるのです。あるとき、8人
のパイロット志願者がケレハーの面接を受けたときのことです。そのとき8人全員がダ
ークスーツに黒い靴を履き、礼服用の靴下という服装をしていたのです。普通の会社で
あれば当然の服装ですね。
 ところがケレハーはそれをからかったのです。そしてこういったのです。「そんな面
白くない格好していないで、当社のバミューダショーツに着替えてリラックスしてごら
んなさい」と。これを聞いて8人の応募者のうち2人は憤慨して、そのまま帰ってしま
ったというのです。
 何しろスーツのジャケットにネクタイ、黒靴、靴下にバミューダショーツですから、
見るからに珍妙な格好です。帰った2人はそんなみっともない格好ができるかというこ
とで帰ってしまったのでしょう。その気持はわからないでもありません。どういう格好
かは、添付ファイルをごらんください。
 しかし、残った6人はそういう格好に着替えてもう一度面接を受け、全員採用になっ
たというのです。サウスウエスト航空のパイロットはそういう馬鹿らしいことでも、ユ
ーモアのセンスで受け入れられる人でないと困るというのが、ケレハーCEOの考え方
なのです。
 ここに興味あるデータがあります。1995年にサウスウエスト航空の人材部は、採
用予定者は5473人に対して、外部からの応募者12万4000人を受け付けたので
す。凄い人数です。しかも、同社の人材部では、その中から3万8000人に面接を行
い、5444人を採用しているのです。この数字は、同社がいかに人材を慎重に選ぶ会
社であるかを示していると思います。
 サウスウエスト航空のユーモア6原則をご紹介します。
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       1.おかしいことを考えよ
       2.遊び心に満ちた態度を取れ
       3.最初に笑う人間になれ
       4.あざ笑うのではなく共に笑え
       5.自分自身を笑え
       6.仕事は真剣に、だが自分のことで深刻になるな
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 サウスウエスト航空は、従業員の離職率が一番低いことで知られています。それは仕
事が楽しいからといわれています。そしてもちろん同社は「レイオフはしない」ことを
社是としています。             ・・・[サウスウエスト航空/03]


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2007年08月02日

従業員第一顧客第二の方針(EJ第271号)

 「お客様第一主義」を標榜している企業は多いです。CS(顧客満足)が話題になっ
てから、どこの企業も「お客様第一主義」を掲げるようになりました。しかし、その多
くは見せかけだけのスローガンに終っているところが多いと思います。
 そういう企業が多いなかにあって、サウスウエスト航空は「従業員第一、顧客第二」
を堂々と掲げているのです。これは「リーダース・ダイジェスト」1995年7月号に
次のように紹介されています。
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      『サウスウエスト航空のCEOハープ・ケレハーは、飛行機の
     座席を格安料金で顧客に提供しているが、顧客よりも従業員の方
     を優先するときっぱり言い切る――たとえそのために顧客を失う
     ことがあってもだ。(中略) 顧客の方が間違っていることもあ
     る。われわれはそういう顧客はお断りしている。手紙を書いてこ
     う言うのだ。「よその飛行機に乗ってください。われわれの従業
     員を侮辱しないでほしい」』と。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 サウスウエスト航空には、三つのきまりがあります。第一は、「顧客サービスは生真
面目である必要はない」、第二は「規則に縛られなくてもよい」、第三は「顧客はいつも
正しいとは限らない」、の3つです。しかし、サウスウエスト航空は何度も賞を受賞す
るほど、サービスの良さでは定評があるのです。
 ケレハーCEOは「必要なのは、格安運賃と最も頻度の高い運航、そして遊びが好き
で、温かく、心が広く、快活で、もしなし好きな、航空業界きっての従業員が顧客サー
ビスを行うことだ」といっているのです。
 実は、サウスウエスト航空には、顧客サービスのためのマニュアルのたぐいは一切な
いのです。同社ではその理由を、「サービスは日常生活がそのまま反映されているから
…」としているのです。つまり、サービスの考え方が少し違うのです。
 サウスウエスト航空の従業員たちにとってサービスは、出社したときに始まり、退社
するときに終るものではないということを自覚しています。サービスとは、従業員の現
実生活そのものなのです。ですから、サウスウエスト航空ではそういうことが自然にで
きる人を厳選して採用しているわけです。
 確かにサービスとは、顧客に対してだけ行う口先だけのものであってはならないし、
そういうサービスは顧客に見破られてしまうものです。仕事以外の場所でもつね日頃か
ら温かい気持で人に接している人であれば、それを仕事の場所でも自然に出せばよいと
サウスウエスト航空は考えているのです。
 作家カール・アルブレヒトによると、サービスの精神は「与えるという要素――つま
り、単に仕事をするだけでなく、それに加えて、自分の持っているものを与える度量の
広さである」といっています。こういうものは、家庭でのみ身につくものであり、企業
で身に付けさせることは困難なのです。
 ですから、そういう資質を持った社員を採用することに全力をあげるのです。そして
採用した以上サウスウエスト航空は従業員を愛し、その成果を祝福し、事業の成功を共
に喜び、人間として尊敬するという態度を「従業員第一、顧客第二」という方針にこめ
ているのです。
 サウスウエスト航空のサービスについて、ケレハーCEOは、ダラスのラブ・フィー
ルド空港に勤務する同社の顧客サービス係ジジ・ペリーの次の話をよくするそうです。
 心臓の手術を終えたばかりの70歳の女性は、テキサス州アマリロに行くためサウス
ウエスト航空を利用しようとしたのです。ところが、アマリロには深い霧がかかってい
たため飛行機はその日ダラスを出発できなかったのです。
 足止めされた乗客たちをホテルに運ぶバスが去ってから2時間半ばかりたったころ、
ジジはその女性が空港ターミナルの外の道路に一人で立っているのに気が付き声をか
けます。ジジはその女性をホテルに案内し、一晩中付き添ったというのです。その女性
が一人でいることをとても怖がっていたからです。
 そして、翌朝飛行機が出発してからアマリロに着くまで、ずっとその女性の面倒をみ
たというのです。これは明らかに仕事上の義務を超えた顧客サービスといえます。ケレ
ハーCEOは「われわれの従業員はこのようなことをいつもしている」といい、ジジの
やったこういうサービスは、従業員だけではなくCEOである自分を含めてサウスウエ
スト航空の幹部社員でも同じことをすると胸を張っていうのです。
 サウスウエスト航空について書いた『破天荒!』の著者はある日、CEOであるケレ
ハーに会うためにダラスの空港に行ったとき、驚くべき光景を目にしたというのです。
それは、CEOのケレハーがダラスの地上要員と一緒に荷物や食料の積み込みをしてい
たのです。しかし、このようなことは、サウスウエスト航空では別に珍しいことではな
いのです。サウスウエスト航空の幹部社員は、同業他社の幹部社員が品位を損なうとし
てやらない仕事でも同社の幹部社員は進んで手伝うことを知っているからです。これこ
そ「率先垂範」そのものです。同社の従業員は、幹部のそうした行動を見て、指導者た
ちに対して、人間として敬愛の気持を募らせるのです。
 「お客様第一主義」を掲げる企業が多い中にあって、「従業員第一」を公然と掲げ、
しかも、どこの企業より充実した顧客サービスを実現しているサウスウエスト航空。見
習うべきです。              ・・・[サウスウエスト航空/04]

2007年08月03日

ユーモア精神を大事にする(EJ第272号)

 自然体のサービスが基本という、サウスウエスト航空の方針について昨日はお話しし
ましたが、今朝はそれがどのように実践されているか、お知らせしたいと思います。
 サウスウエスト航空の社内誌「プレーン・テールズ」に面白い記事が掲載されていま
す。1995年版「格好のいいもの、悪いもの」というタイトルです。アルファベット
同士は、それぞれ対応します。
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      ≪格好のよいもの≫
       A.カジュアル・ウェアを着た男性
       B.楽な靴をはいた女性
       C.ハーレーダビットソンにまたがるCEO
       D.職場で汗を流すこと
       E.自由席
       F.抱き合うこと
       G.指導者
       H.柔軟性
      ≪格好の悪いもの≫
       A.スーツを着た男性
       B.ハイヒールをはいた女性
       C.リムジンに乗るCEO
       D.スポーツクラブで汗を流すこと
       E.指定席
       F.しゃちほこばった握手
       G.管理者
       H.厳格な方針
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 どうでしょう。これを見ると、サウスウエスト航空の文化がわかります。それから、
実物を入手できていないのですが、同社には「ピーナツの食べ方による人格判断法」と
いう冊子があるのです。サウスウエスト航空では機内食を出しませんが、飲み物とピー
ナツが配られます。そのピーナツの食べ方によって10種類の人格パターンに分けてい
るのです。これを見て回りの人を観察すると、確かに面白いと思います。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       1.ピーナツをしゃぶる人  6.握り締める人
       2.ピーナツをついばむ人  7.むさぼり食う人
       3.投げ飛ばす人      8.ムシャムシャ食べる人
       4.飲み物にひたす人    9.上に放り投げる人
       5.においを嗅ぐ人    10.少しずつかじる人
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 それから出発前の客室乗務員の乗客に対するアナウンスですがこれもサウスウエスト
航空では、基本的な伝える事項さえ守れば説明者の自由にまかせています。大手の航空
会社では、最近はビデオを見せて乗客が見ようと見まいと無関心です。もちろん誰も見
てはいませんが・・・。
 ところがサウスウエスト航空では、どうやらこの説明が売り物になっているのです。
私が乗ったときは、客室乗務員(男性)が猛烈に速い英語でまくしたて、それに応じて
乗客(外人)がどっと笑っていたのを覚えていますが、何をいっているのか全くわかり
ませんでした。
 サウスウエスト航空を利用する人は、一日に何回も乗る人もおり、マニュアル化され
ている話なら絶対に聞いていないと思うのですが、どうやらスピーチの内容が面白いら
しく、乗るたびに聞くのを楽しみにしている人も多いようです。
 それでは、どんなことをいっているのか、簡単にご紹介したいと思います。
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      「もし、1、2分ご静聴いただけるようでしたら、これから安
     全上の手続きをご説明したいと思います。(中略)
      歌によりますと、恋人と別れる方法は50通りあるそうですが
     この飛行機と別れるには6通りしかありません。2つは前部の出
     口、2つは翼の上の可動式の窓、それに後部の2つの出口です。
     それぞれの出口の位置は、頭上のサインと通路の床に点滅する赤
     と白のディスコライトで示しています。床を見たお客様、ひっか
     かりましたね。(中略)
      喫煙については、当社のフライトはすべて絶対禁煙となってお
     ります。もしお客様が喫煙していらっしゃるのが見つかったらど
     うなるか、ご存知ですね。翼の上に出ていただき、そこで当社の
     とっておきの映画『風と共に去りぬ』をお楽しみいただくことに
     なっております。(中略)
      それではゆっくりくつろいでサンディエゴまでの一時間、宇宙
     で一番の航空会社――サウスウエスト航空のフライトをお楽しみ
     くださいませ。お客様に『破天荒なサービス』を提供できますよ
     う、サウスウエスト航空は日々努めております」。
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 ざっとこんな具合です。このほか機内放送もかなり面白いようですが、乗客をびっく
りさせるために客室乗務員が座席の上の棚に隠れていることもあるのです。乗客が手荷
物を入れようとして棚を開けた瞬間、ご対面というわけです。(添付ファイル)
 サウスウエスト航空には「私の靴で歩いて」という制度があります。この制度は、従
業員の希望により、他の部署の職務を1日体験できるという制度です。
 例えば、空港の顧客サービス係りが客室乗務員を体験したり、その逆があったりしま
す。また、ある従業員は地上支援チームに参加したりすることもあるでしょう。しかし
それを強制していないのがよいですね。他人のやっている仕事はよく見えるものです。
しかし、実際に体験すると、目には見えない大変さがわかったりして、よい経験になる
のです。サウスウエスト航空には、まだまだご紹介したことがあるので、もう少し続けます。                   ・・・[サウスウエスト航空/05]    

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2007年08月06日

SW航空の存在意義を問う(EJ第273号)

 サウスウエスト航空が、低運賃での運行を実施していることは、それを利用する人々
にさまざまな恩恵をもたらしています。例えば、サウスウエスト航空を利用すれば、朝
フェニックスに飛んで会議に出席し、夜にはフェニックスの家に戻って、翌日またフェ
ニックスに飛ぶことが可能になります。その方がホテルに泊まるよりも安くつくからで
す。
 また、デトロイトに住む医学生たちが、毎週水曜日の夕刻にシカゴの大学の講義に出
席できるのもサウスウエスト航空のおかげなのです。その医学生たちから講義に出るの
が15分遅れるという手紙が寄せられてその事実を知ったケレハーCEOは、講義に合
わせてフライト・スケジュールを変更したといいます。他の航空会社がそんなことをす
るでしょうか。
 さらにオースチンに本社を置くメキシコ料理店の店主は、店の拡張を計画中ですが新
しい店を置く都市は、サウスウエスト航空の組織のある都市に限ることにしています。
飛行機にすぐ乗れて、出費が低く抑えられるというサウスウエスト航空の便利さが彼の
拡張計画には不可欠だからです。
 ダラスに住むある主婦は、子供たちが学校に行く年齢になるとオースチンにあるテキ
サス大学法学大学院に入学を申し込み、入学が許可されると、ダラスからサウスウエス
ト航空を利用して毎日通い、弁護士資格を手に入れることができたのです。300キロ
以上離れた学校に通うことができたのは、サウスウエスト航空のフライト・スケジュー
ルと格安運賃のおかげなのです。
 最近日本でもスカイマークエアラインズなど格安運賃の航空会社ができていますが、
価格もまだ高く、便数も非常に少ないので米国人がサウスウエスト航空から受けている
サービスとはほど遠いものがあります。新幹線通勤は最近では珍しくなくなりましたが
サウスウエスト航空のような航空会社が日本にあれば、飛行機通勤も可能になります。
名古屋、大阪、仙台などからの東京への通勤も可能なのです。しかし、それには低運賃
であること、空港が近いこと、便数が多いことなどの難問を解決しなければならないの
です。
 サウスウエスト航空ではこれら3つのことをすべてクリアしています。だからこそ支
持されるのです。サウスウエスト航空の場合、支払われた以上のものを与えることに専
心しています。低運賃でひどいサービスを提供したり、高運賃で良いサービスを提供す
ることなら誰でもできます。しかし、低運賃で良いサービスを提供することが至難のわ
ざであることをサウスウエスト航空は理解しているのです。期待以上のものを提供し、
顧客に敬意を払い感謝する――これこそ同社を成功に導いた大きな要素なのです。
 さて、経費削減にはこういう話があります。
 サウスウエスト航空には、デジタル技術とメカトロニクスの訓練を受けた創造力豊か
な技術チームがあります。同社が、アルバカーキに新設する予約センターに800台の
PCが必要になったとき、購買部長のマイク・ゴールデンは、コストの面から考えて購
入するよりも自分達で作った方がよいと判断したのです。
 技術チームが中心となって、社内からPCの組み立て作業の応募をしたところ、ウデ
に覚えのある多くの従業員が参加して、800台のPCはあっという間に組み立てられ
てしまったといいます。この結果、PC1台について50%、総額100万ドル以上を
節約したのです。
 私は、これはいいアイデアだと思います。とくに日本の場合、専門の情報システム部
門でもPCのエンジニアは少ないのが現状なのです。そういう状況を打開し、社内に一
挙にPCに詳しい社員を養成するために、自社のPCくらい自社で組み立てたらどうか
と考えます。PCを組み立て、OSやアプリケーションソフト自らインストールすれば
PCのことは一挙にわかってしまうからです。
 このようにいうと、PCを組み立てるなんて無理と考える人がいるかも知れませんが
、PCの組み立ては、ドライバー一丁あれば可能であり、プラモデルを組み立てる程度
の難易度でしかないのです。現在のPCは、AT互換機といってすべてを部品にばらす
ことができるので組み立てが可能なのです。なお、AT互換機については、EJ229
〜230号で取り上げています。
 PCを自社で組み立てることのメリットは次の通りです。
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      1.コストを低く抑えることができる。
      2.社内にPCに詳しい人が増加する。
      3.修理などは自社内で対応ができる。
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 サウスウエスト航空では「祝典」に力を入れています。それは祝典が事業の推進力に
なっている価値観を従業員に意識させる重要な手段であるからです。事業に貢献した従
業員たちを会社の英雄として褒賞することで、その企業ではどういう行動が望ましいか
が明確になるからです。
 褒賞制度については、どこの企業でもやっていることであり、それほど珍しいことで
はないと考えるかも知れませんが、サウスウエスト航空の場合、年次受賞パーティー以
外に2ヶ月に1度の「勝利者賞」の授賞式があるのです。おそらくこのような短い頻度
で表彰者を決め、表彰式を開いている企業は、多くないと考えられます。
 勝利者賞は、サウスウエスト航空の価値観と理念を実践している10人程度の従業員
が表彰されるものです。同僚、ときには顧客からの推薦によって9人から成る選考委員
会によって審議され受賞者は本社ビルの役員会議室で行われる授賞式に招かれます。
 この他、不定期に与えられる「ユーモア賞」、「社内で一番元気で賞」、「心の英雄
賞」、「破天荒な顧客サービス賞」など多くあり、年中表彰ばかりやっているのです。
これについては『破天荒』に詳しく書かれており、他企業にとってもヒントになること
が多いので参照されることをお勧めします。  ・・・[サウスウエスト航空/06]

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