10曲聴いてショパンの全体像を掴む(EJ第695号)
この記事は、2001年9月5日から9月7日までの3回にわたってEJのテーマと
して取り上げたものです。コンパクトにまとめられたショパン論です。
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ショパンとモーツァルトというと、その名前を聞いただけで、ある特定のイメージが
浮かんでくる音楽家です。とくにショパンといえばピアノであり、ピアノ好きな人であ
れば、ショパンは避けて通れないでしょう。ショパンの名曲はたくさんあり、1曲も知
らないという人はいないのではないかと思います。
しかし、ショパンの演奏に関わる人は、ショパンを弾くとき、単に音符をひろっただ
けではショパンにならないというのです。つまり、ショパンの音楽は、テクニックだけ
の問題ではなく“深い音楽性”がそこに要求されるのです。
ショパンの音楽が発するメッセージは、なぜか現代に通じるものがあります。けっし
て古めかしい過去の音楽ではないのです。音楽家ラフマニノフは「ショパンはつねに新
しい」という名言を残していますが、それはショパンの音楽が現代に通じる精神という
か、エネルギーを持っていることを意味しています。
小説家のアンドレ・ジイドは、「ショパンの作品を弾くときはそれがすでに出来上が
っているように弾いてはならない。ひとつひとつの音を新しく発見していくように弾く
べきである」といっており、それが新しさを感じさせる秘密だと思います。ジイドは小
説家なのですが、ピアノについては相当のうでを持っており、終生ショパンの音楽を愛
好したといわれています。
今朝はショパンをあまり聴かない人にショパンの素晴らしさを知っていただくための
ガイダンスをやりたいと思っています。いささか乱暴ですが、ショパンの作品を4つに
分けて、その魅力を整理すると次のようになります。
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ノクターン ・・・・ 彼のロマンティックな感性
マズルカ ・・・・・ 彼の嘆きやメランコリー
ポロネーズ ・・・・ 彼の愛国心の表現
ワルツ ・・・・・・ サロン風な彼の貴族趣味
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誰でも知っているショパンの人気ベスト10を選んでみたいと思います。
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1.『子犬のワルツ』作品64−1
2.『ノクターン』作品9−2
3.『雨だれ』作品28−24
4.『マズルカ』作品7−1
5.『別れの曲』作品10−3
6.『幻想即興曲』作品66
7.『英雄ポロネーズ』作品53
8.『バラード』第1番作品23
9.『ピアノソナタ第2番』作品35
10.『ピアノ協奏曲第1番』作品11
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ショパンの「ワルツ」といえば有名な曲がたくさんあるのですが、どういうわけか、
ショパンの作品の中ではマイナーな扱いになっています。ワルツは生前には8曲出版さ
れているのですが、その作曲年代を見るとポツンポツンと作曲され、晩年の作品が多い
のです。『子犬のワルツ』などは最晩年の曲です。なお、ショパンの死後遺作として発
表されたものが11曲あります。
ノクターンは全部で21曲。その言葉には「夜の感覚」「静かな夢想」「詩的な香り
」が含まれます。とくに、「ノクターン」作品9−2は、映画「愛情物語」のテーマ音
楽となっており、最もポピュラーな作品です。
プレリュードは全部で24曲。一曲、一曲が巧みに磨き上げられたショパン音楽の真
髄というべき傑作です。「雨だれ」は15番目に置かれた名曲です。
マズルカは全部で60曲。生涯を通じて書かれており、その点ワルツとは対照的です
。このマズルカの人気作品は作品7−1です。ショパン20歳のときの作品です。とて
も有名な曲です。
続いてエチュード24曲。エチュードとは「練習曲」のことで19歳のときから着手
して6年かけて完成されています。この作品10−3はあの有名な『別れの曲』なので
す。
この24の練習曲に、ショパンは、彼がピアノ奏法の秘密と信ずるものに何かのかた
ちを与えようとしています。短い一曲一曲にバラードの大曲を書く以上の時間をかけて
それこそ真剣に取り組んだのです。
即興曲は4曲の作品があります。中でも有名なのは『幻想即興曲』です。この曲の人
気の秘密は中間部のノクターン風の旋律にあると思います。この中間部をはさむ前後は
、嬰ハ短調のエチュード的な音の奔流のように書かれております。
ポロネーズは全17曲。『英雄ポロネーズ』作品53は、ショパンのポロネーズの手
法がしだいに成熟度を増してきた頃の作品です。輝かしい雄壮な、しかも直裁な音楽は
「英雄」というタイトルにピッタリです。
ソナタは全4曲ですが、1曲はチェロ・ソナタです。有名なのは『ピアノソナタ第2
番』作品35――とくに第3楽章の「葬送行進曲」があまりにも有名です。付点の動き
に詫された悲痛な響きが全編を印象づけています。
最後はピアノ協奏曲全2曲。とくに『ピアノ協奏曲第1番』作品11に人気が集中し
ています。この作品は1830年8月に完成された若きショパンの意欲作です。
ベスト10の10曲が、各ジャンルの代表になるように選曲してあります。ですから
、この10曲を聴くと、ショパンの作品のおおまかな全貌は分かります。好きな曲のみ
偏って聴かないで、ぜひ全般的に聴いていただきたいと思います。
・・・[ショパンはお好きですか/01]