死せる火星/死につつある地球(EJ第1522号)
「火星には何があるのか」−−これは非常にロマンのあるテーマです。火星について
、天文学的なアプローチではなく、ちょっと違った角度からいろいろ探ってみたいと思
います。
なお、この記事は、2005年1月31日〜3月18日までの34回にわたってメー
ルマガジンとして配信したものであることをお断りしておきます。
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いま、火星はいろいろな意味で注目されているのです。最近米国をはじめとする世界
各国で宇宙探査がさかんですが、どうしてだかわかりますか。それは、単なる学問的探
求だけでなく、ゆっくりとであるが、確実に迫りつつある、人類にとって深刻にして切
実な問題を解決することを目指して行われているのです。
今年は2005年、京都議定書の第1期である最初の5年間は2008年からスター
トします。京都議定書は気象変動――地球温暖化防止に向けて定められた最初の国際規
則です。京都議定書はまだ発効されていませんが、まもなく発効される見通しになって
います。既に日本をはじめEUなど125カ国・地域が批准しているのに、なぜ、ここ
まで遅れたのか、わかるでしょうか。
京都議定書が発効するためには、批准した先進国の二酸化炭素の排出量が90年時点
の55%以上なければならず、これまで発効できなかったのです。それは、最大の温室
効果ガス排出国である米国とロシアが参加していなかったからです。
しかし、2004年11月に、京都議定書の批准案にプーチン大統領が署名し、ロシ
アが批准したことによって、米国抜きでも二酸化炭素の排出量が61%を超えるため、
ようやく京都議定書が今月中にも発効できる見通しとなったわけです。
それにしても米国のブッシュ政権は、京都議定書を拒否する姿勢を示し、2001年
に離脱しています。しかしながら、その一方において米国は、世界環境研究の分野では
トップレベルにある――米国という国はそういう国なのです。
その米国の火星科学の研究者が書いた次の本があります。
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ブランデンバーグ&バクソン著/藤倉良訳 講談社刊
「沈黙の惑星――火星の死と地球の明日」
―― DEAD MARS.DYNING EARTH ――
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原題が凄い――戦慄的です。そのまま訳せば「死んだ火星、死につつある地球」とな
ります。地球は死につつある――われわれはいま「地球号タイタニック」に乗っている
ようなものだと著者はいっているのです。それは地球温暖化が深くかかわっているので
しょうか。
環境問題の中でも気象変動は目に見えないだけにわかりにくいのです。100年後に
気温が5度〜6度上がるといわれたって、そんな先のことは誰もピンとこないはずです
。それだけに恐ろしいといえるのです。
著者は、海洋に長い間にわたって蓄積された二酸化炭素が何かのはずみで突然大気中
に吹き出す可能性にも言及しています。実際に、湖底の二酸化炭素が噴出して村が全滅
した例があるということから推論しています。本当にそんなことが起こるのかどうかは
わかりませんが、可能性はあるといえます。
著者は、「温暖化の末路は火星を見ればわかる」といっています。火星はなぜ「死の
惑星」になったのか――その原因を究明することによって、地球の危機を救うヒントが
見つかるのではないかと提案しているのです。
確かに、2004年は、明らかに気象は大きく変動していることが誰の目にも明らか
になっています。異常に暑い夏と異常に寒い冬、台風、地震、津波、竜巻、大雪などが
世界レベルで起こっているからです。何かが狂っています。
しかし、「沈黙の惑星――火星の死と地球の明日」の著者による提案は、火星はかつ
て生物が住めるような緑の惑星であったことを前提としているのです。火星は太陽から
遠くて寒いけど、かつては大気中に二酸化炭素と水蒸気があって温暖に保たれていたと
いう前提です。本当でしょうか。果たして、火星には本当に生物がいたのでしょうか。
2004年4月に米国のブッシュ大統領は「2020年までに月と火星の有人探査を
行う」と宣言しており、今後5年間、NASAにはその有人宇宙探査のために年間10
00億円の予算が与えられることになったのです。
地球上に問題が山積しているこの時期に、果たして月と火星の有人探査について米国
民の理解が得られるかどうか――諮問委員会は智恵を絞ったすえにSF作家のレイ・ブ
ラッドベリに次のような質問をしています。
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諮 問委員会:実用的なアメリカ国民に、有人の月と火星の探
査を理解してもらえるだろうか。
ブラッドベリ:新しい自由、地球上の政治と恐怖のテロから離
れる動きを強調すれば、人々はその重要性を認
識するでしょう。
諮 問委員会:地球上に課題が山積しているのに、宇宙探査に
予算を費やしていいのだろうか。
ブラッドベリ:地球上では毎日1000億円ものお金が、戦争
や紛争に費やされているのです。1年のうちの
1日分を宇宙旅行に使うことにすればできるこ
となのです。たとえばコロンブスが大航海に出
なかったら、すべての問題は解決できたでしょ
うか。アメリカも発見されなかったでしょう。
あきらめたら、ダメなのです。
――竹内薫著、『火星地球化計画』より。実業
之日本社刊
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・・・[火星の研究/01]
≪画像および関連情報≫
・地球を構成しているすべての物質は宇宙からやってきた。われ
われの現在の安住の地としての故郷、「天」と「地」は一体で
ある。 ――カール・セーガン