構造改革がもたらした負の遺産/0012号
●町から酒屋さんが消えている!?
小泉改革と称して、いろいろな改革なるものが進められています。なかには
新聞などには出てこない細かな規制が緩和ないし撤廃され、それに伴う法律ま
で改正されて、私たちの身のまわりに明らかな変化が起こりつつあります。
それは、消費者にとってはプラスのものも多いことは確かですが、その結果
として、昔からある日本の文化や伝統や技術が次々と壊されつつあるのをご存
知でしょうか。
2005年10月のことですが、零細な酒小売店から預かっていた「酒販年
金」に穴があいて、老後の年金支給に支障をきたすというニュースが伝えられ
たことを覚えておられるでしょうか。
「酒販年金」というのは、「全国小売酒販組合中央会」が主催する年金のこ
とです。なぜ、穴があいたのかというと、同組合は2つの致命的な失敗をして
しまったからです。
第1の失敗は、積立金の運用に失敗したことです。
同組合は、約143億円をクレディスイス銀行に運用委託していたのですが
銀行の勧めによって、バハマのプライベートバンクに再委託をしたのです。と
ころが、2004年にそのプライベートバンクが倒産してしまい、多額の運用
資金が未償還になるという事態に陥ったのです。
第2の失敗は、巨額の使途不明金があることです。
この使途不明金については現在捜査が続けられていますが、どうやら大物政
治家への政治献金に使われたものと考えられています。そして、その政治家か
ら資金の再委託先のプライベートバンクも紹介されたというのです。まさに二
重のショックですが、問題はその背景なのです。
最近町の「酒屋さん」がどんどん姿を消しています。2003年から「酒類
(サプリメント)の自由化措置」が実施され、町の酒屋さんの倒産が相次いで
いるからです。スーパーや大型量販売店が、商店街の酒小売店を駆逐しつつあ
るといえます。お酒を買うライフスタイルが変わりつつあるのです。
1999年の日米両国の規制緩和の進捗度を報告する「共同現状報告」にお
いて「酒類の自由化措置」が決定事項としてスケジュール化されています。こ
れまで酒小売店は共存・共栄を図るため、店舗開店基準が定められていたので
す。それは、人口、酒小売店間の距離などを勘案した規制だったのですが、こ
れが完全に撤廃されることになったのです。
当然のことながら、全国小売酒販組合中央会としては、何とかしてもらおう
として政治家に働きかけたのです。酒小売店にとっては死活問題であり、その
ための巨額献金だったのです。それに積立金の一部が使われたのです。
この米国との規制緩和協議――橋本政権のときからはじまっているのですが
小泉政権になってから「強化されたイニシアチブ」として、一層急ピッチで進
められるようになったのです。それは、国家を揺るがすような大問題ばかりで
はなく、この酒類の自由化措置のようなものまで、米国は細かく要求を出して
きており、日本はそのほとんどを受け入れているのです。
なかには、自動二輪車の高速道路における最高速度規制の緩和などという一
見して何を狙っているのかわからないものまであります。それは、日本の高速
道路で、自動二輪車の2人乗りを認めさせ、80キロの最高速度を100キロ
まで出せるように改正させることによって、ハーレーダビットソンを多く売る
ことが狙いなのです。これを受けて与党議員は「ハーレーダビットソンの会」
を結成し、米国に迎合しているのです。
●耐震偽装問題の原因も規制緩和
こうした性急な規制緩和が現在次々と問題を生じさせています。
「建築基準法」の改正による建築確認・検査手続きの簡素化が耐震偽装問題
を生んでいます。そして、禁止されていた「木造三階建て住宅」が米国政府の
強い圧力でできるようになっています。もちろん耐震性に問題があるのです。
そもそも日本家屋は、良質の木材を使用し、職人は柱に穴を開けて組み上げ
る高い技術を誇っていたのです。しかし、外材が使えるように木材の規格が変
更され、さらにコードレス釘打機を認可させることによって、柱の組み立てを
不必要にし、日本家屋の品質を悪化させることを平気で容認しています。
そして、株の時間外取引の規制緩和措置が放送業界を震撼させたライブドア
のニッポン放送株の大量取得を可能にし、ファンドに関わる規制緩和によって
村上ファンドの問題を生んでいます。
現在、「強化されたイニシアチブ」によって、規制緩和と競争政策に関する
施策を検討する「上級会合」と「専門家会合」が設けられており、上級会合は
専門家会合から上げられてきた案件をレビュー、コメントするスタイルになっ
ているのです。
専門家会合は、電気・通信、住宅、医療、金融サービス、規制緩和の5つの
分野に区分され、このうちの電気・通信、住宅、規制緩和については、米国側
が議長になっているのです。このようにして構造改革の名の下に、日本の伝統
的な技術や文化、生活スタイルが壊されていっています。
ここで述べたのはほんの一部に過ぎないのです。詳しくは、京都大学院教授
本山美彦氏の『売られ続ける日本、買い漁るアメリカ』(ビジネス社刊)を読
んでいただくとその恐るべき実態がわかります。 以上
