INTEC JAPAN/BLOG

このフォーラムは、異文化研修の教育機関(株)インテック・ジャパンの情報発信用です。
最新のニュースを毎週月曜日にお届けします。

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● 2006年08月 記事 ●

2006年08月04日

新しいタイプの帝国/拡大EU/0017号

●EUは新しい型のローマ帝国である

 欧州連合(EU)が拡大化を加速させています。2004年5月1日を機に
いわゆる拡大EUがスタートしたからです。中・東欧8ヶ国と地中海2ヶ国の
計10ヶ国が加わり、全25ヶ国、約4億5000万人、約10兆ドル市場と
いう空前の規模を誇っています。
 さらに2007年にはルーマニアとブルガリアが加盟予定となっています。
このうちブルガリアについては、汚職や組織犯罪流入の懸念があり、必ずしも
すべてのEU加盟国が賛成というわけではないのですが、ブルガリアが加盟し
ないと、バルカン半島が安定しないとして、イタリアが強力にバックアップし
ており、加盟は承認される見通しです。
 さらに、2013年から15年にかけて、西バルカン5〜6ヶ国、イスラム
の大国トルコが加盟予定であり、この動きは加速して、ノルウェー、スイス、
アイスランドも加盟する可能性があるのです。したがって、加盟国が30ヶ国
を超えるのは時間の問題といわれます。
 一方北大西洋条約機構(NATO)についても2004年3月末には7ヶ国
の最終加盟が決定され、26ヶ国体制が既にスタートしています。NATOに
はルーマニア、ブルガリアも加盟し、旧東ヨーロッパでは旧ユーゴスラヴィア
を除くすべてがヨーロッパに回帰し、欧米の安保体制に組み込まれたのです。
 最近このEU/NATOの拡大についてローマ帝国に類似しているとよくい
われます。確かに2004年以降のEU/NATOの拡大は、歴史上最大のヨ
ーロッパの領土を、戦争によらず、平和的に、かつ各国の自由意志に基づいて
同一の構造の下に統合する――そういう壮大な作業であり、大きな歴史的意義
を有しているといえます。
 中央に強い求心力を持ち、そのパワーで周辺国を引き込み、安定化を図ると
いう発想は、ローマ帝国の拡大戦略と同じ発想であるといえます。ベルギー国
際関係王立研究所のドスクーテート氏と筑波大学の鈴木一人助教授は、EUに
ついてそれぞれ次のようにいっています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ・EUとローマ帝国はともに周辺国への拡大を原動力とし、共通の法体系で
  地域統合を進める点で共通している。      ――ドスクーテート氏
 ・EUは経済のグローバル化に伴う新しい型の帝国である。武力の代わりに
  規制を使って周辺地域に影響力を行使するのである。――鈴木一人助教授
                2006年8月1日付、日本経済新聞より
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

●もはや英独仏がヨーロッパではない

 「EUの拡大」は、「ヨーロッパ」の概念の問い直しにつながります。どこ
までがヨーロッパなのか、ヨーロッパとは何かという命題です。近代以降、一
般的に「ヨーロッパ」といえば、西ヨーロッパに代表される地域のことです。
 ヨーロッパの復興と統合は冷戦のはじまりとともにヨーロッパの西半分の先
進国が統合し、ソ連を敵としてはじめられたのです。そのため、1947年か
ら開始された米国によるマーシャルプラン――ヨーロッパ復興援助計画は、当
初は多くの戦争犠牲者を出し、ヨーロッパにおいて最も経済支援を求めていた
戦勝国ソ連や中・東欧諸国を含むものだったのに対し、ドイツを戦略的に西側
に取り込む必要性から、敗戦国ドイツを取り込み、戦勝国ソ連および社会主義
陣営を排除するというかたちで行わざるをえなかったのです。
 つまり、戦後のヨーロッパ復興という計画は、自由主義陣営の経済的再編と
いうかたちで行われたのです。一方NATOに関しては、1949年に12ヶ
国によってはじめられた後、1952年にギリシャとトルコ、1955年には
西ドイツ、1982年にはスペインが参加して、西側の軍事機構が完成してい
るのです。
 そして1989年の米ソ冷戦の終結宣言――これを契機にEUは拡大化に向
けて一気に動き出したのです。その求心力の源泉になったのは、何といっても
フランスとドイツの協調と連携の強化です。これがあるからこそ、EUの拡大
化が現実化したのです。この強固な絆はあのイラク戦争反対においても一致し
て反対の姿勢を押し通したことでも確認されています。
 もともとドイツとフランスは、それぞれの政治、行政、社会において大きな
相違点があります。とくにフランスは、戦勝国としてドイツに対して優位な立
場に立ち、あのド・ゴール大統領にいたっては、ドイツと対等の立場に置かれ
ることを極端に嫌っていたのです。フランスが核武装をしたのも、ドイツとの
違いを鮮明にしたかったというのが動機であったといわれます。
 そのフランスとドイツがニクソンショックのあたりから過去の恩讐を捨てて
手を結び、それが現在の拡大EUにつながったのです。しかし、経済格差の大
きい中・東欧諸国がEUに加盟することによっていろいろな問題が起こること
は確かです。ましてトルコまで加盟するとなると、またしても「ヨーロッパと
は何か」が改めて問い直さなければならなくなるはずです。
 もはやヨーロッパは英独仏ではないのです。EUとアジアの地域協力におい
て、日本はどのような役割を果たすべきか――中国が経済力とともに軍事力を
含めて台頭しつつある中で、日本は政治面、安全保障面、文化面でグローバル
時代の独自のビションを示す必要があります。            以上

2006年08月14日

EUにとってイラク戦争とは何だっのか/0018号

●イラク戦争をめぐる新旧ヨーロッパの相克

 次の3つの言葉の違いがお分かりになりますか。主として、国家間の外交に
おいて使う言葉です。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
           1.ユ ニラテラリズム
           2.バ イラテラリズム
           3.マルチラテラリズム
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 「ユニラテラリズム」というのは、国際的な国家同士の外交に対し、一方の
国が独断的に専行する行為のことであり、かつて米ソ軍縮のときに、一方的に
軍縮を発表したことから登場した言葉です。例えば、米英軍によるイラクへの
先制攻撃は「ユニラテラリズム」といえるでしょう。
 「バイラテラリズム」というのは、政治・経済分野の国際問題において、2
国間だけでこれを解決しようとする、2国間交渉主義の考え方のことをいいま
す。北朝鮮が米国に対し、しきりと2国間交渉を求めていますが、これは「バ
イラテラリズム」ということになります。
 「マルチラテラリズム」というのは、政治・経済分野の国際問題において、
多国間で懸案を調整・処理しようとする考え方のことであり、多国間主義、多
角的交渉主義ともいいます。北朝鮮問題を解決するための「6ヶ国協議」は、
明らかに「マルチラテラリズム」です。
 2003年3月20日、米英軍によるイラク戦争が勃発し、4月10日には
イラクのフセイン政権は崩壊しています。この戦争に対する対応をめぐり、米
国と新旧ヨーロッパの間でさまざまな確執があったのです。
 フランスとドイツ――英国をのぞく旧ヨーロッパの大国は、米ブッシュ政権
のユニラテラリズムを批判し、あくまでマルチラテラリズムによる解決を主張
したのです。イラクの大量破壊兵器隠蔽疑惑やアルカイダとの関係に対しては
国連による査察を継続し、戦争を行う場合は国連の多数の支持を得るべきであ
るとして、多国間協調、国連重視、非軍事解決を訴えたのです。
 しかし、2004年に拡大EUということでEU・NATOに加盟すること
が決まっていた新ヨーロッパともいえる中・東欧8ヶ国は、2003年1月と
2月の二度にわたって、米国の同盟国の英国やスペインなどとともに米国支持
を表明したのです。新旧ヨーロッパの相克といえます。

●中・東欧諸国はなぜ米国支持にまわったのか

 中・東欧8ヶ国はフランスとドイツが強く批判するなかで、なぜ米国支持を
表明したのでしょうか。ちなみに中・東欧8ヶ国とは次の8ヶ国です。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
        1.ハンガリー    5.ラトヴィア
        2.チェコ      6.リトアニア
        3.ポーランド    7.スロヴァキア
        4.エストニア    8.スロヴェニア
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 中・東欧8ヶ国の中でもポーランドの積極性は突出していたのです。ポーラ
ンドはイラク戦争に参戦し、戦後は兵士約2400人をイラクに駐留させて、
中南部地域の治安部隊を指揮し米国を支えたのです。
 そのため、ポーランド軍はイラク駐留の20ヶ国の多国籍軍を統括するポジ
ションに就いています。さらに、ポーランドはNATO事務総長補佐官という
地位を手に入れています。この地位はポーランドが国際機関で得た最も高い地
位であるといわれます。米国の後押しがあったからなのです。
 もともと中・東欧政府は、イラク戦争直前までは戦争には批判的だったはず
です。それがなぜ、一転して米国支持となったのかというと、それが自国の安
全保障の確実な維持に寄与し、国益にかなうからです。
 中・東欧諸国――とくにチェコ(当時はチェコスロヴァキア)にとってドイ
ツやフランスは歴史的にみて不信感が拭えない国なのです。それは1938年
9月29〜30日に行われたミュンヘン会議にあります。その会議は英国、フ
ランス、ドイツ、イタリアの4ヶ国で行われたのですが、会議はドイツのヒッ
トラー総統のいいなりになり、チェコの解体が決まったのです。チェコは19
39年にドイツ領となり、いったん地図上から消滅したのです。
 それに、もうひとつの歴史的潜在的脅威としてはロシアがあります。中・東
欧諸国は歴史的にドイツ、ロシアのいずれかの大国の拡大・膨張によって、蹂
躙されてきたのです。そのうちドイツについてはEU・NATOという機構が
機能している現在では現実的な脅威はなくなっています。しかし、ロシアに関
してはバルト3国についてはいまだに脅威は存在するのです。したがって、こ
の東の脅威に対する安全保障としてNATOに加盟したのです。
 この点米国は中・東欧諸国にとって近隣国でない超大国であり、米国と友好
関係を保つことは安全保障上も支援を引き出せるうえでも国益にかなうと考え
ても不思議はないのです。実際に米ブッシュ政権は、中・東欧諸国の支持を勝
ち取るため、繰り返し勧誘を重ね、中・東欧全体で30億ドルという資金が支
援金として支払われているのです。このようにEUは拡大するにつれて難しい
問題を多く抱え込みつつあるといえます。              以上

2006年08月21日

第四の波がやってくる/コンセプチュアル社会/0019号

●「一億総中流社会」から「M型社会」へ

 かつて日本は「一億総中流社会」といわれてきました。平均的な国民のほと
んどは、そこそこの収入があり、自宅にはカラーテレビをはじめとする電化製
品を揃え、自家用車を持つ家庭も少なくない――それが一億総中流社会として
の日本であったのです。
 ところが最近の日本は、明らかにそうでなくなってきています。所得格差が
顕著に広がって、人口分布に中低所得層と高所得層という2つのピークがある
社会――これを「M型社会」というのです。つまり、真ん中の層がだんだん薄
くなってきている社会です。
 今や大量のものを作る仕事は中国ということで相場が決まっています。何し
ろ労働者層の月給が10万円以下であり、他国が対抗不能なほど人件費が安い
からです。そのため、中国は世界の工場になりつつあるのです。
 それから、プログラミングなどのITの仕事はインドでやるということは常
識化しつつあります。インド人はIT技能がきわめて優れており、コストが安
いので、ソフトウェアの構築はインド人に限るのです。
 このように、産業というものは、どうしても人件費の安い地域にもっていか
れてしまうものです。しかし、ものづくりについては日本には他国には真似の
できない伝統的な技術があり、まだまだ世界に対抗できますが、プログラミン
グなどのIT技能については、単にコストの問題だけではなく、時間が経過す
るにつれて日本はそういう技術そのものをもてなくる恐れがあります。これで
は国として国際競争力を失ってしまいます。
 大前研一氏は、M型社会になった日本が今後発展するために、次の3つのこ
とを守るべきであるといっています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
     1.よその国、とくに途上国にできることは避ける
     2.コンピュータやロボットにできることは避ける
     3.反復性のあるルーチンな仕事には手を出さない
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 それでは、どうすればよいのかというと、これからは、創造性があって反復
性がないこと、すなわち、イノベーションであるとか、クリエイティブ、プロ
デュースといったキーワードに代表される能力を持つ人を育てることが急務に
なってくるのです。しかし、日本人にそれができるでしょうか。

●「第四の波」が襲ってくる

 大前研一氏は、これからの日本人がかつてのように、21世紀に「まともな
給料をもらって良い生活をしようと思ったとき何が必要か、何をしなければな
らないか」を考えるなら、次の本を読むべきであるといっています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
    ダニエル・ピンク著/大前研一訳/三笠書房刊
    『ハイコンセプト/「新しいこと」を考え出す人の時代』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 アルビン・トフラーの世界的なベストセラーに『第三の波』(日本放送出版
協会)というのがあります。「第一の波」の農耕社会、「第二の波」の産業社
会が終焉して、「第三の波」として情報社会がやってくることを予告した、今
から25年前に書かれた名著です。
 「第一の波」である農耕社会は、アルゼンチンやオーストラリアが圧倒的で
あり、日本のように農作物の輸入規制をやっていても、いずれは行き詰ること
は目に見えているといえます。
 「第二の波」である産業社会は、完全に世界の工場――生産基地である中国
のものであり、介護用のロボットのようなものまで、現在では中国で作られる
ようになってきているのです。
 「第三の波」である情報社会は、インドが中心。インドだけでなく、中欧、
アイルランド、オランダ、フィリピン、モーリシャス、マレーシアなどの国々
も、実はITに強い国家です。
 その情報社会も最終段階に入っており、「第四の波」が襲ってくるというこ
とを告げた本が、上記ダニエル・ピンクの本であると大前研一氏はいいます。
そしてこれからやってくる社会は、「コンセプチュアル社会」であるというの
です。「コンセプチュアル社会」とは何でしょうか。これについて大前研一氏
は、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 「第四の波」というのは、ピンクによれば、要するに「情報社会」から「コ
 ンセプチュアル社会」、つまり、既成概念にとらわれずに新しい視点から物
 事をとらえ、新しい意味づけを与えていくという流れだ。
            ――ダニエル・ピンク著/大前研一訳の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 どうすれば、コンセプチュアル社会で成功できるかというと、ピンクによる
と、頭を右脳主体に鍛えること――そうすると、反復性のないことを「発想」
でき、誰も思いつかないことを考え出せるようになって、この社会に適応でき
るといいます。21世紀は「突出した個人」が富を支配する世の中であるとい
われますが、そのために頭を右脳主体に鍛えることが必要なのです。  以上

2006年08月31日

頭を右脳主体に鍛える方法/0020号

●デジタルの左脳/アナログの右脳

 ダニエル・ピンクによると、現代人は「頭を右脳主体に鍛える」ことが大切
であり、そうしないと第四の波を乗り越えるのは難しいといっています。とこ
ろで右脳、左脳とは何でしょうか。
 ちょうどリンゴを半分に切るように、大脳を二つに割ると、右半分と左半分
に分かれます。これは単に脳が左右に分かれているだけではなく、それぞれの
機能が異なるので、右脳、左脳と呼んでいるのです。
 このことが分かったのはそんなに前のことではなく、1950年代のことな
のです。ノーベル賞を受賞した米国の大脳生理学者ロジャー・W・スペリーが
右脳と左脳の機能の違いについて研究発表を行ったのです。右脳と左脳の機能
を整理すると、次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
       ≪左脳≫          ≪右脳≫
        言語 ・・・・・・・・・・ 画像
        論理的 ・・・・・・・・・ 直感的
        デジタル ・・・・・・・・ アナログ
        情報処理が遅い ・・・・・ 情報処理速い
        意 識 ・・・・・・・・・ 無意識
        数学 ・・・・・・・・・・ 音楽
        計算処理 ・・・・・・・・ 画像処理
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ブルガリアのある学者が、映画館に入る人の流れについて実験を行ったので
す。合計870人の来館者にそれぞれ好きな場所に座ってもらったところ、ほ
とんどの人がスクリーンに向かって右側の席に座ったそうです。正確にいうと
右側に座ったのは、右利きの88%、左利きの58%、両利きの67%だった
のです。どうしてこのような結果になったのでしょうか。
 それは画像処理を行うのが右脳だからです。画像処理を担当する右脳は左側
のものを先にとらえようとするので、無意識のうちにそうしやすい右側の席に
座ろうとするのです。左脳に入った情報は左右の脳をつないでいる脳梁を通っ
て情報を送るので、右脳に直接入った情報よりも処理が遅れるのです。そのた
め、脳は無意識のうちに左側の画像情報を早く得ようとするわけです。

●モーツァルトの音楽を聴く効果

 「頭を右脳主体に鍛える」には、いろいろな方法がありますが、なかでも効
果的なのは音楽を聴くこと――とくにモーツァルトの曲を聴くことです。どう
してモーツァルトの曲を聴くと右脳が鍛えられるのでしょうか。
 人間の背骨はちょうどピアノの鍵盤のように並んでいて、頭頂から脊髄の一
番下の尾椎まで、それぞれがある周波数に対応して反響するようになっている
のです。反響する部分は音の高さによって変わってきます。高い音ほど頭に響
き、低い音ほど腹に響きます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
  首の上の延髄から頭頂部 ・・・・・・・・・・ 4000ヘルツ以上
  首(頚椎) ・・・・・・・・・・・・・ 2000〜3000ヘルツ
  胃の部分 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1000ヘルツ
  胸椎と腰椎の間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 500ヘルツ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 モーツァルトの曲は3000ヘルツ帯域以上のものが多く、それが右脳を刺
激し、首から上に反響を起こすのです。右脳の感度がよくなるということは、
とっさに判断する力が強くなるということであり、結果として頭がよくなるこ
とに大きく貢献するのです。
 モーツァルトは、妻に本を読ませながら、作曲したといわれます。音読する
妻の声で自分の左脳を占領させ、右脳に浮かぶ音をそのまま楽譜に書き取った
といいます。つまり、考えようとする左脳を極力抑制して、右脳で発想してい
たことになります。これが「頭を右脳主体に鍛える」ことにつながるのです。
したがって、そのようにして作られたモーツァルトの曲を聴くと、自然に右脳
が刺激されるのです。
 また、モーツァルトの曲の中には、人の自律神経に働きかけて、創造性を高
めたり、痛みを緩和する要素が含まれているそうです。これは1957年にフ
ランスのアルフレッド・トマティスという人という学者が唱えたもので、「ト
マティスの理論」というのです。
 埼玉医科大学の和合治久教授は、音が空気の振動として人間の耳に入ってき
たときに、体の中で何が起こるかについてさまざまな実験をしています。例え
ば、モーツァルトの「ヴァイオリン協奏曲−−K218」の第3楽章を聴くと
すぐに舌下腺から唾液が出てくる――ヘッドフォンをつけて聴くとほぼ100
%の人はそうなると和合教授はいっています。唾液が出るということは、ウイ
ルスを撃退する免疫物質の量が増えるなので、身体にはとても良いのです。
 これからのコンセプチュアル社会に対応する人というのは、右脳からアイデ
アを出させて、左脳で評価できる人である――このようにダニエル・ピンクは
いっています。そのためにモーツァルトの音楽を聴くのは有効な手段であるこ
とは大脳生理学上もいえることです。                以上

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