INTEC JAPAN/BLOG

このフォーラムは、異文化研修の教育機関(株)インテック・ジャパンの情報発信用です。
最新のニュースを毎週月曜日にお届けします。

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● 2006年10月 記事 ●

2006年10月02日

動画版ブログ/ユーチューブ/0025号

●「ユーチューブ/YouTube」を知っていますか

 「ユーチューブ」がにわかに話題になっていますが、一体何のことかおわか
りになりますか。
 「日経ビジネス」2006年9月25日号は、グーグルを特集していますが
そのなかで「ユーチューブ」について詳しくレポートしています。ご覧になっ
た方もあると思いますが、インテック・フォーラムではこれをもっとわかりや
すく解説することにします。
 「ユーチューブ/YouTube」とは何でしょうか。
 ごく大雑把にいうと、「ユーチューブ」は動画のブログです。ブログはテキ
ストの記事を投稿しますが、ユーチューブは動画を投稿するのです。誰が投稿
するって・・・もちろん一般ユーザがです。しかし、動画は約10分以内と限
られています。投稿された動画は誰でも見ることができます。もちろん、投稿
するのも見るのも無料です。
 何はともあれ、こういうものは体験してみることです。次のURLをクリッ
クしてみてください。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
         http://www.youtube.com/
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 英文サイトが表示されます。日本語サイトはまだできていないのです。しか
し、日本人ユーザは多いのです。今年の5月にはUSENが運営する国内最大
の動画サイト「ギャオ」を抜き、日本でもトップに立っているからです。
 画面の右上のところに「Search for」と書いてあるマドがありますね。そこ
にキーワードを入れてください。英語ではなく日本語でです。例えば「亀田」
と入れてみましょう。そして「Search」ボタンを押します。そうすると、亀田
一家のボクシングの試合の動画で全部出てきます。もちろん、あの疑惑の判定
の試合も見ることができます。
 もちろん、ボクシングだけではありません。思いつくキーワードを何でも入
れてみてください。動画を見るのに登録は不要ですし、動画の登録も難しくは
ありません。動画を見た視聴者は映像を格付けし、掲示板で議論を交わし、良
いと思った映像は友人に紹介する――アクセス数が集中する映像は、自動的に
ランキングの上位にランクされるようになっているのです。

●不特定多数無限大のパワーを信ずるか

 ユーチューブのサービスは、2005年に開始されたばかりですが、今年の
春に、グーグル、ヤフー、マイクロソフトという名だたる強豪をあっさりと抜
き去り、ユーザー数でトップに立ったのです。そして、日本語サイトがないに
もかかわらず、日本でも「ギャオ」を抜いてトップに躍り出ています。
 ユーチューブから詳しい数字の公表はありませんが、一日に約1億回以上の
アクセスがあり、これまでに4000万本以上の動画が投稿され、毎日3万5
000本以上のペースで増えているというのです。
 動画を制作し投稿するのは、ほとんどが素人のネットユーザーですが、なか
にはテレビの映像や映画のそれも多く含まれるのです。亀田興毅の世界タイト
ルマッチの映像のようにテレビで報道されたものもたくさんあるのです。
 もちろん米国や日本のメディアは、著作権の侵害であるとしてユーチューブ
側に映像の削除を申し入れ、ユーチューブ側はそのつど削除に応じているので
すが、人気のある映像は何人もの人が次々とコピーするので完全なイタチごっ
こに陥っているそうです。
 それは、『ウェブ進化論』(ちくき新書)の著者、梅田望夫氏のいう「不特定
多数無限大」のパワーであり、誰にも止められないのです。まるで、コンテン
ツを手放さないテレビ局に民衆が束になって襲いかかっているようです。そう
こうしているうちに米大手放送局のNBCは、2006年6月にユーチューブ
と提携し、番組の宣伝広告を開始したのです。一日1億回のページビューの魅
力は計り知れないものがあるのです。
 NBCの判断は、なかなか決着のつかない著作権違反で争うよりも提携した
方がメリットがあると踏んだのです。このNBCの意思決定の影響は大きかっ
たのです。ユーチューブとNBCの提携のわずか一週間後に、米大手レコード
会社ワーナー・ミュージック・グループは、ユーチューブと提携し、同社がか
かえる歌手のパリス・ヒルトンの専用ページを設置し、映像を提供することの
対価として、広告料をユーチューブに支払うことにしたのです。
 もちろん、著作物をコピーするのは許されることではありませんが、現在の
ビジネスは、梅田氏のいう不特定多数無限大のパワーを信ずるかどうかの判断
が経営者の意思決定に委ねられているのです。米国のテレビ業界は少しずつそ
れがわかってきており、ユーチューブのようなグーグル型の新興企業との提携
を模索しつつあります。
 しかし、日本のテレビ会社は既得権にしがみついて、不特定多数無限大のパ
ワーをあまり信じようとはしません。著作権にこだわり過ぎているのです。し
かし、音楽CDのコピーコントロールにしても、デジタルテレビのコピーアッ
トワンスにしても、いずれも廃止されるか、大幅に緩和されようとしているの
です。そういう意味で米国のメディア業界の方は、ウェブ2.0の本質がよく
わかっており、それに対応しようとしてきているように思います。   以上

2006年10月10日

テレビCMから撤退してコカ・コーラを抜いたペプシコ社/0026号

●コカ・コーラを超えたペプシ・コーラ

 コカ・コーラとペプシ・コーラといえば、世界を代表する清涼飲料水である
とともに、マクドナルドと並んでアメリカ合衆国を象徴する存在であるといえ
ます。われわれ日本人の印象では、王者はあくまでコカ・コーラ(ザ・コカ・
コーラカンパニー)であって、ペプシ・コーラ(ペプシコ社)は2番手の存在
であると考えています。
 しかし、2005年12月に両社の時価総額は逆転し、ペプシコ社が首位に
立っているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 【ライブドア・ニュース 2005年12月14日】――【ライブドア・ニ
 ュース 14日 東京】
  AP通信によると、米清涼飲料大手ペプシコが株式の時価総額で、ライバ
 ルのコカ・コーラを上回った。これはコカ・コーラが1919年に上場して
 以来、初めてのことだ。
  12日のNYSE(ニューヨーク証券取引所)での終値で、コカ・コーラは
 前週末比36セント高の41.15ドルで引け、24億株の株式の時価総額
 は約987億ドル(約11兆8260億円)となった。一方、ペブシコの終
 値は同31セント高の59.31ドルで、17億株の株式の時価総額は、約
 1108億ドル(約13兆2760億円)となった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 かつてコカ・コーラは「帝王」といわれ、ペプシ・コーラなど眼中になかっ
たはずですが、今やペプシ・コーラがコカ・コーラを引っ張るかたちで市場を
二分するようになってきているのです。
 なぜ、そうなったのでしょうか。
 それは、多様化した消費者とつながるために、ペプシ・コーラは新しいアプ
ローチのマーケティングを展開しているのに対し、コカ・コーラは古いマーケ
ティングを使い続けているからです。

●動き始めたマーケティング2.0

 コカ・コーラの広告といえば、テレビCM――いわゆるマス・メディアを徹
底的に使うものであり、それによって首位を独走してきたのです。「スカッと
爽やか・コカ・コーラ」というCMソングを聞いたことのない人は、おそらく
いないと思われます。
 しかし、ペプシコ社は同じテレビCMでもコカ・コーラのそれとは一味違う
広告キャンペーンにに挑戦してきたのです。その特徴的なものを上げると、次
のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
  1.比較広告(対コカ・コーラ)
    http://www.youtube.com/watch?v=wAP2yVsgI6c
  2.ペプシ・チャレンジ
  3.ペプシ・ジェネレーション
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 「比較広告」については説明するより、ペプシのCMを見てもらった方が早
いです。URLをクリックしてみてください。そうすると、「YouTube」 のサ
イトが表示されるので、そこにあるペプシのCMをクリックしてください。か
なり露骨ですが、笑ってしまいます。
 「ペプシ・チャレンジ」とは、ペプシとコーラの名前を隠して一般の人に飲
んでもらい、どちらがおいしいかを判定してもらうという公開実験を中心とし
た広告キャンペーンのことです。1974年に始まり、1983年には米国の
ほとんどの都市で開催されるようになり、実験の様子をテレビCMで流したの
です。この実験の結果、ほとんどの地域で、「ペプシの方がおいしい」と判定
した人の数がコカコーラよりも多かったというのです。
 「ペプシ・ジェネレーション」とは、1960年代のアメリカで、ペプシが
行った広告キャンペーンのことです。このキャンペーンでは、「コカコーラは
古い、中年の飲み物、ペプシは若者の飲み物」――ペプシ世代――をイメージ
させることを目的としたのです。
 つまり、ペプシを飲んでいる人はかっこいいというブランド・イメージを作
ろうとしたのです。その結果、キャンペーン以前は「ペプシは安物、コカコー
ラの偽者」というイメージであったものが、キャンペーン後は、「若く、洗練
された、エネルギッシュなソフトドリンク」というイメージへと大転換させる
ことに成功したのです。
 こうしたマーケティング戦略に加えて、ペプシコ社は2005年からさらな
る新しい戦略を打ち出したのです。それは、テレビCMから撤退し、イベント
やインターネットやトレーディングカードを使う新しいマーケティング・ツー
ルを駆使するキャンペーンに転換しているのです。
 こうしたペプシの広告戦略を取り上げた新刊書『テレビCM崩壊/マス広告
の終焉と動き始めたマーケティング2.0』(翔泳社刊)の著者、ジョセフ・
ジャフィ氏は、「多くのマーケター達はいまだに大衆に効率良く到達できる方
法(テレビCM)ばかりを追い求めている」といっています。広告という概念
が大きく変わってきているのです。このテーマは次回も取り上げます。 以上

2006年10月16日

マス・メディアの崩壊で広告の概念が変化している/0027号

●ラジオ・メディアを抜いたネット広告

 今まで広告の世界では、マスコミ4媒体――テレビ、新聞、雑誌、ラジオが
圧倒的な地位と影響力を持ち続けてきました。したがって、広告とは、こうし
たマスコミ媒体(マス・メディア)を使って行うものとされていたのです。
 しかし、マス・メディアを使って行う広告には相当多額の資金がかかり、広
告はかなり資金的なゆとりのある企業しか行うことができないというイメージ
が定着しています。
 そういう広告の世界にいま異変が生じつつあるのです。2004年の日本の
広告費において、インターネット広告が、マスコミ媒体のひとつであるラジオ
を抜いたのです。
 日本のメディアに投下された2004年の広告費はテレビ・ラジオ・新聞・
雑誌・インターネットで合計3兆8574億円(電通調べ)――そのうちネッ
トは1,814億円、ラジオは1,795億円で、シェアはともに4.7%です
が、金額ベースではインターネットがラジオを抜いたのです。
 折れ線グラフで見ると、テレビや新聞が突出しているだけにネットの上昇率
は目立ちませんが、これは大変な変化なのです。ネット広告は登場してから、
10年経っていないからです。
 このままで行くと、あとわずかの年数でネット広告が雑誌メディアを抜く日
がやってきます。既に米国では、ネット広告のシェアが15%に達しており、
日本でもそのシェアに達するのは時間の問題だからです。そうなるとネット広
告は、金額にして5800億円ほどの規模に拡大し、約4000億円規模の雑
誌メディアを抜いてしまうことになります。

●マス・メディア広告崩壊の3つの原因

 なぜ、マス・メディアの広告が効果がなくなりつつあるのでしょうか。それ
には、次の3つの原因が考えられるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
    1.お客の嗜好が多様化して商品の数が増えている
    2.商品が多様化すると口コミ効果が効かなくなる
    3.大勢の集まる媒体に広告を出す効果の減少傾向
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 昔、コカ・コーラといえば大衆商品でしたが、最近、大衆をターゲットとし
た代表的な商品が激減しています。それはお客の嗜好が多様化したからです。
それを反映して、現在、コカ・コーラには、ダイエット・コーラ、クラシック
・コーラ、チェリー・コーラ、バニラ・コーラといった種類が存在します。こ
のように商品数が増えると、マス広告は効かなくなります。これが第1の原因
――「お客の嗜好が多様化して商品の数が増えている」です。
 米国では、明らかにテレビ離れが起こっています。前回ご紹介したコンサル
タント、ジョセフ・ジャフィ氏は、その著書で次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ニールセン社の調査によると、1998年に7600万人が人気コメディ番
 組「Seinfeld」の最終回を観た。これは総視聴者数の58%にあたる。確か
 に高い視聴率である。しかし、1983年のコメディ番組「MASH」の最終回
 は、実に1億500万人、総視聴者の77%が観ていたのである。
 ――ジョセフ・ジャフィ著、『テレビCM崩壊/マス広告の終焉と動き始め
                たマーケティング2.0』より。翔泳社刊
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ジョセフ・ジャフィ氏によると、もし、視聴者全員が同じ番組を観たと仮定
すると、翌日、近所のスターバックスのテーブルを囲んだりして、その番組の
内容について友達としゃべったりするはずである――といっています。そして
その番組の合間に流れたCMの話も話題にのぼる可能性があります。こういう
ときに口コミ効果が生まれるのです。
 しかし、消費者のテレビ離れが進み、さらにテレビのデジタル化でチャンネ
ルが増えたり、ケーブル・テレビの普及などによって、メディアの細部化が起
こると、口コミ効果は生まれにくくなるのです。
 それに加えてテレビCMを流す商品自体が増えると、そのための口コミ効果
は減り、それに伴い、翌日のCM想起率は減少するはずです。これが第2の原
因――「商品が多様化すると口コミ効果が効かなくなる」です。
 マス・メディアを使って広告をするということは、大勢の人の集まる媒体に
広告をすれば、その商品やサービスを必要とする人も見るに違いないという前
提に立っています。初期のネット広告でも、この前提に立って多くのアクセス
が集中するサイト――ヤフー!やMSNなどのポータル・サイト−−そういう
サイトにバナー広告などを出したのです。しかし、こういう旧来型の広告では
その効果に疑問符が付くのです。それに成果測定にも限界があります。
 現在は、関心のある人が見るサイトに関心のある商品やサービスの広告を打
つ――しかも従来の広告では考えられないほど詳細な効果測定ができる、そう
いう広告が求められているのです。それが検索連動広告です。これなら、巨額
な広告費がかからないので、どういう企業でも個人の営業パーソンでも広告が
打てるようになります。これが第3の原因――「大勢の集まる媒体に広告を出
す効果の減少傾向」です。                     以上

2006年10月23日

番号ポータビリティ制のもたらす波紋/0028号

●明日から始まる「番号ポータビリティ制」

 電話番号を変えずに、携帯電話会社を乗り換えられる「番号ポータビリティ
制」が2006年10月24日――すなわち、明日から始まります。これまで
携帯電話会社を変更したいと思っても、電話番号が変わることによる手間が大
変なので逡巡していた人が一斉に動き出すと思われます。
 現在、携帯電話は全国9000万台を超えており、番号ポータビリティ制の
開始によって、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルによ
る一大顧客争奪戦が始まります。ところで、あなたはどうされますか。
 民間調査会社MM総研の調査によると、番号ポータビリティ制が始まったら
11%の人がこの制度を利用するといっています。そうすると、1000万人
近い人が携帯電話会社を変更する可能性があるのです。
 この制度は既に20ヶ国以上の国が導入していますが、それぞれ興味ある結
果が出ているのです。香港では上位1位と2位の企業がシェアダウンしている
のに対して、フィンランドでは逆にトップ企業がシェアをさらに伸ばしたとい
います。日本はどうなるでしょうか。
 日本の場合、番号ポータビリティ制の開始による関心事は、圧倒的シェアを
持つNTTドコモが、auやソフトバンクにどれだけシェアを奪われるかとい
う点にあります。ケータイを使う場合、まず、気になるのは料金ですが、てい
ねいに料金を比較してみると、あまり差はないのです。しかし、印象としては
auが安いと感じている人が多いのです。それは、auがこれまで先手を打っ
て実施してきたマーケティング戦略が効いているからなのです。
 最近ぼんやりとテレビを見ているたけでも次のCMのメッセージが耳に残っ
ていないでしょうか。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
     パケ割          パケ・ホーダイ
     ダブル定額        ダブル定額ライト
     ドコモダケ        EZフラット
     auバイKDDI     仲間由紀恵withダウンローズ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 これらはいずれもケータイに関しての、それもほとんど料金に関してのCM
メッセージなのです。

●NTTドコモとKDDI(au)のシェア争い

 電車の中でよくケータイの画面を見ている若者が多いですが、それはゲーム
をやっているか、音楽をダウンロードして聴いているのです。そのためには大
量のデータを端末にダウンロードしなければならず、四六時中やっていると、
パケット料金が高額になってしまうのです。
 若者用語で「パケ死」という言葉があります。これは高額のパケット料金で
ケータイの料金が支払えなくなるという意味なのです。そこでauが始めたの
が「パケ割」や月額4410円の「EZフラット」なのです。
 王者NTTドコモとしては、auのこの動きにうかうかと乗るわけにはいか
なかったのです。というのは、携帯電話会社としては電話を使わずにパケット
だけを使われたのでは、商売にならないからです。したがって、NTTドコモ
は当初、auの挑発にはあまり乗らなかったのです。
 これに乗じてauはパケット定額制で明らかにユーザを増やすことに成功し
NTTドコモは新規契約者をauに取られるという結果を生んだのです。そこ
で、NTTドコモは月額4095円の定額制でパケットを使い放題にする「パ
ケ・ホーダイ」を打ち出してauに対抗します。しかし、このサービスは当初
音声電話で基本使用料6982円以上の高額プランの契約者だけに限定して、
サービスを始めたのです。
 これに対抗してauが始めたのが「ダブル定額」です。これは月額4410
円という上限はそのままで、もうひとつ月額2100円という定額を設け、2
段階の定額制になっているので、「ダブル定額」というのです。
 これによって、あまり使わない月は2100円で済み、それを超えた分はプ
ラスアルファが加算され、大量にデータを受信したときでも月額4410円は
超えないことになります。しかし、たとえ2100円でも、メールとニュース
や乗換案内程度しか使わないユーザには高いと思われる恐れがあるので、月額
1050円から始められる「ダブル定額ライト」を打ち出したのです。これな
ら、あまり使わない月は1050円で済むわけです。
 明らかにauはケータイを単なる「電話」とは考えず、電話にもなるPDA
――Personal Digital Assistant と捉えており、これまでケータイで動画や
音楽を購入したことのないユーザを取り込み、コンテンツの楽しさを訴えるこ
とでパケット通信料金を増やそうとしているのです。
 そこでauは、CMキャラクターとして 「仲間由紀恵 withダウンローズ」
を投入したのです。それにはライトユーザにはなじみの薄い「ダウンロード」
という言葉を定着させようとしたのです。この事態になって、NTTドコモも
低コストでデータを通信できるシステムの導入によって、「パケ・ホーダイ」
をすべての音声プランの契約者に開放したのです。しかし、NTTドコモの場
合は、auが1050円から始められるのに対して、使っても使わなくても、
4095円が必要になります。このテーマは次回にも取り上げます。  以上

2006年10月30日

音声通話の定額制をめぐる仕掛けと駆け引き/0029号

●「予想外割」で価格破壊を仕掛けるソフトバンク

 2006年5月18日のことです。東京・汐留において、ソフトバンクの携
帯電話事業におけるブランド名披露記者会見が行われていたのです。孫社長が
巧みなスピーチでプレゼンテーションを進めるなかで、30分が経過するころ
から多くの記者が中座して会場を去って行ったのです。
 おそらく孫社長は複雑な思いで中座する記者の背中を見ていたに違いありま
せん。ソフト・バンクの主催する過去の記者会見において、そういうことはか
つてなかったことだからです。一体彼らはどこに行ったのでしょうか。
 記者たちの向かった先はあの六本木ヒルズ――同じ日の午後2時30分から
au(KDDI)によるグーグルとの業務提携記者会見が行われる予定になっ
ていたのです。会場には大勢の記者が詰めかけており、立ち見が出るほどの盛
況だったのです。記者たちにとっては、ウェブ2.0ブームの中において、業
績好調なauとグーグルが何をやろうとしているのかについて、大きな関心が
あったに違いないのです。
 その孫社長が「番号ポータビリティ制」がスタートする前日の23日、急遽
記者会見を行い、「予想外割」なる仰天サービスを発表したのです。「予想外
割」とは、基本料金を払えば、ソフトバンク加入者間の通話や250字以内の
ショートメールは無料とする――そういう内容だったのです。やっぱりソフ
トバンクは、ケータイにおいても価格破壊を仕掛けてきたのです。
 おそらく孫社長は、5月18日の記者会見のときから、10月23日にそう
いう発表をするつもりで、構想を暖めてきたものと思われます。ソフトバンク
はボーダフォンを1兆7500億円で買収したことから、ケータイの価格破壊
を一挙に仕掛けてこないだろうというのが大方の見方であり、ソフトバンク自
体もそういうポーズをとってきただけに大きな反響を呼んだのです。

●独自の存在としてウィルコムがある

 ソフトバンクの「予想外割」で留意すべきことがあります。それは、ソフト
バンク加入者間の音声通話が無料になるという点です。もちろん、これには、
午後9時から午前1時までの時間帯は月200分までという条件がついていま
すが、それ以外の時間帯は同じソフトバンクの加入者同士であれば、時間を気
にしないでゆっくり話せるのです。
 ケータイは定額時代といわれますが、それはデータ通信――パケット定額制
のことであり、音声通話の定額制ではないのです。そのため、この音声通話の
定額制が今後ケータイ各社の競争の焦点になってくると思われます。
 もともとソフトバンクには「LOVE定額」というサービスがあります。こ
れは恋人など特定のひとりの相手と話す場合に定額になるというもの、今度の
場合は同じソフトバンクの加入者間はすべて定額(基本料金のみ)になるとい
うのですから、大きな変化であるといえます。
 NTTドコモにも「カケ・ホーダイ」というサービスがあります。これは5
人と会話ができますが、トランシーバーのように片通話しかできないので、使
い勝手はお世辞にも良いとはいえません。
 ところが、かなり満足のいく音声通話定額サービスを既にやっている企業が
あります。その企業の名前はウィルコム――同社の「ウィルコム定額プラン」
がいま、大変な話題を呼んでいるのです。音声通話定額の始祖なのです。
 どういうサービスかというと、月額2900円でウィルコム間のユーザ同士
であれば、無料で音声通話ができるというものであり、制限などは一切ないの
です。毎日、いくら話しても無料ですから、カップルや女子高校生を中心に利
用が広がっており、最近では法人も使い始めているのです。
 ところでこのウィルコムという企業をご存知でしょうか。
 ウィルコムは、もともとKDDI系のDDIポケットというPHS最大手企
業だったのです。しかし、業績は芳しくなく、2004年10月に外資が入っ
て資本構成が変わり、2005年1月に現在の八剣洋一郎氏が社長に就任して
から業績は急速に伸びはじめたのです。
 ウィルコムの特徴はあくまでPHSであることです。かつてPHSは「つな
がりにくい」という問題点があったのですが、ウィルコムは10年の年月をか
けて、基地局を16万局に増やし、つながりにくいという評価を「どこでもつ
ながる」という評価に変えてしまったのです。
 この基地局16万という数は、NTTドコモのFOMAの基地局が約4万局
であることを考えるとき、いかに多いかわかると思います。さらにウィルコム
は、それまではNTTの回線を借りて実現させていたバックボーン(通信事業
者間を結ぶ大容量の基幹通信回線)を独自のIP網を構築して進化させ、安定
した通信を実現させているのです。
 もともとPHSはデータ通信に強く、音質はクリアで、電磁波の影響が少な
いなどの多くの特色があります。データ通信に強いところからその端末もケー
タイというよりもPDAか小型PCという印象が強いのです。最新の端末W−
ZERO3「es」には「ウインドウズ・モバイル5.0」が搭載されており
PC的な使い方ができるからです。
 このようにウィルコムは注目のマトですが、途中で資本構成が変わった経緯
から、今回の「番号ポータビリティ制」の対象外になっています。既に400
万人以上のユーザがおり、総務省の対応が注目されるところです。   以上

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