ホワイトカラーを直撃するフラット化する世界/0038号
●「フラット化する世界」と3つのグローバリゼーション
『フラット化する世界』とは、ピューリッツァ賞を3度も獲得した「ニュー
ヨークタイムス」のコラムニストとして有名なトーマス・フリードマンという
ジャーナリストが、2005年4月に米国で出版した本のタイトルです。
この本はたちまちベストセラーとなり、世界中で翻訳されるようになるので
すが、フリードマンはこの本の中でITによって変質したグローバリゼーショ
ンの姿を克明に描いています。
グローバリゼーションというのは、これまでの国家や地域などの境界を越え
て、地球規模で複数の社会とその構成要素の間での結びつきが強くなることに
伴う社会の変化やそのプロセスのことをいうのです。この言葉は、1970年
頃から使われはじめたのですが、フリードマンはグローバリゼーションを次の
3つに分類しています。
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1.19世紀型グローバリゼーション/「国家」のグローバリゼーション
・1492年〜1800年
2.20世紀型グローバリゼーション/「企業」のグローバリゼーション
・1800年〜2000年
3.21世紀型グローバリゼーション/「個人」のグローバリゼーション
・2000年〜
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19世紀型グローバリゼーションというのは、国家が武力や蒸気機関などの
物理的な力を使って自分たちと世界のグローバル化を進めたので、主体は国家
であり、これを「国家」のグローバリゼーションというのです。
20世紀型グローバリゼーションというのは、多国籍企業が通信や流通の進
化によって市場と労働力を求めてグローバル化を推し進めるかたちをいうので
す。例えば、車を世界中に輸出するため、工場を外国に移し、その土地の労働
力を使ってグローバル化を進める――主体は企業であり、これを「企業」のグ
ローバリゼーションというのです。
21世紀型グローバリゼーションというのは、ITの進化によって世界中の
個人が結びつき、競い合い、協力することが可能になりつつあり、それが企業
の雇用形態を変えつつある――そういうグローバリゼーションをいいます。
●ホワイトカラーの仕事がなくなる
冷戦の終結によって、世界は今や一つの労働市場の中で動いています。それ
を契機に社会主義国に閉じ込められていた労働人口が開放され、一挙に労働人
口は30億人増えたといわれます。
IT技術の発達によって、これらの労働人口を資本主義国からでも使えるよ
うになってきています。このような時代においては、企業は好むと好まざると
にかかわらず、グローバル化を推し進めざるを得なくなります。企業のグロー
バル化が加速すると、中国などとの競争で労働コストには下押し圧力がかかり
やがて労働コストは世界的に妥当なラインに平準化されます。
こういう世界では、もはや学歴はもとより国籍も問われることはなく、個人
がいかなる能力を持っているかだけが問題になるのです。そして企業は個人の
その能力に見合うコストを支払うようになります。
その結果として、グローバル企業はコアバリューだけを本国に残し、あとは
より安価な労働力を求めて世界中に展開することになります。IT技術によっ
て、ビジネスワークフローをユニットごとに切り出すことが可能になっている
からです。そして、会計士、税理士、ITエンジニア、重役秘書といったホワ
イトカラーの花形とされた仕事まで切り分けられたパーツでしかなくなってし
まうのです。こういう世界を「フラット化する世界」というのです。
フリードマンは、フラット化する世界の民を次のユニークが言葉で呼んでい
るのです。
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1.無敵の民 ・・・ 他人が真似のできぬ非凡な能力を持つ人
2.無名の民 ・・・ 他人が代替できる平均的な能力を持つ人
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無敵の民には、世界中から多数のオファーが多額の報酬とともに舞い込んで
きます。そして世界レベルの競合によって報酬は高騰する一方です。これに対
して無名の民は、ITの力によってその他大勢としてデータベースに組み込ま
れ、データベースが無作為にはじき出した仕事に就くことになります。そして
その報酬は世界レベルの最も低いラインに落ち着くのです。
現在、ホワイトカラーいじめとしてサラリーマンの憤激を買っている労働時
間規制の適用除外制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)も、経営側−−
とくに大企業の経営者が全体としての労働コストの上昇を抑える一方で、無敵
の民に多くの報酬を与えられる柔軟性を人事制度に求めていることが背景にあ
るようです。フラット化する世界を意識しているからでしょうか。
ところが日本は、フリードマンのいう21世紀型グローバリゼーションに明
らかに立ち遅れています。それは、グローバル化を進めるさいに不可欠な言語
のかべを乗り越えられないからです。「個人」のグローバリゼーションはコミ
ュニケーションの世界であり、言語は不可欠だからです。 以上
