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2007年06月11日

世界的に注目を集める/イスラム金融/0059号

●「イスラム金融」とは何か

 原油価格が世界を動かす時代になっています。そのはざまにおいて「イスラ
ム金融」というものが注目を集めています。ところで、「イスラム金融」とは
何でしょうか。
 「イスラム金融」とは、厳格なイスラム教の教義にしたがって行われる金融
取引のことであり、現在、日本を含む世界70ヶ国以上で展開されています。
 「シャリア」というアラビア語があります。シャリアは、預言者マホメット
の残した言葉や行動、聖典コーランの規範をまとめたものです。具体的内容は
豚肉を食べること、お酒を飲むこと、賭博を行うこと、女性が肌を見せること
などを禁止した、教義というよりもイスラム教徒として正しく生きていく生活
規範のようなものです。
 このシャリアの約束を守って資金を融通する仕組みが「イスラム金融」なの
です。何が問題になるのかというと、聖典コーランでは、金貸しによる利子を
不労所得として禁止しているので、利子がとれないのです。アラビア語で「利
子」のことを「リバー」といっています。
 リバーがとれないとすると、それを伴う預金や貸出という金融業務ができな
いことになります。しかし、いくらイスラム教徒でも事業性の運転資金の調達
や将来に備えた資産運用という金融サービスは必要になります。そこでいろい
ろな工夫をこらしてこれらの金融サービスを行っているのです。
 例えば、家を購入する場合、一般的には銀行からお金を借りて売り手に支払
いますが、それでは銀行に利息を払うことになります。イスラム金融では銀行
がいったんその住宅を買い取り、利子ではなく、販売手数料を上乗せして買い
手に転売するのです。買い手は分割して住宅代金を銀行に支払うので、売り手
の銀行は販売手数料として利益を上げることができるのです。
 これをシャリア――イスラム法の教義に抵触しない取引――すなわち、イス
ラム金融といっているのです。イスラム金融は、1970年代後半に登場した
金融取引なのですが、その目的は1973年と1978年に起こった石油危機
で得られた巨額なオイルマネーを運用するためといわれています。
 しかし、その後1990年代の終りまでは、原油価格は1バレル=10ドル
台と低迷しており、それに伴って産油国の国家財政も悪化して、イスラム金融
の必要性が長い間薄れていたのです。
 ところが、2003年3月に開始されたイラク戦争によって原油価格は急激
に高騰し、2003年から2006年までの3年間で実に2.5倍に上昇した
のです。2003年にWTI原油価格(米国標準油種)は1バレル=約30ド
ルだったものが、2006年7月には1バレル=78.40ドルと史上最高値
を記録したのです。

●「アラブのIBM」とは!?

 OPEC(石油輸出国機構)の石油収入は、90年代終わりの1000億ド
ル(約12兆円)から、2006年には7000億ドル(約84兆円)に急激
に増えています。産油国としては、この巨額な現金――オイルマネーを運用す
るため、イスラム金融が再び世界中から注目されるようになったのです。
 中東の産油国には「投資庁」という役所があり、この投資庁によってオイル
マネーの管理・運用が行われているのです。投資庁はロンドン金融市場を通し
て、米国財務省証券や日本国債、日本株なども購入しているのです。日本の金
融機関もイスラム教徒の多い産油国の巨額の資金を取り入れるために、イスラ
ム金融に向けて本格的に動き出しています。原油価格の高騰によってアラブ人
の富裕層――その金融資産合計は約2兆ドル(240兆円)も誕生しており、
金融機関としては本気にならざるを得ないのです。
 政府系金融機関である国際協力銀行は、マレーシアで「スクーク」という債
券の発行を予定しています。「スクーク」というのはイスラム教の教義に則っ
て発行される債券のことであり、イスラム金融のひとつです。
 「ムダーラバ(信託金融)」や「ムシャラカ(出資金融)」などの一種のプ
ロジェクトに資金を出資し、そこから利益が出るとそれを配当として受け取る
欧米でいうプロジェクト・ファイナンスのような仕組みがスクークです。
 どうして、金融業務のようなものまでイスラム教がからんでくるのかという
と、アラブ諸国では宗教と生活が完全に一体化されており、そこから経済観や
経済原理も出てくるからです。
 例えば、中東地域に旅をするとよく聞く言葉に「インシャーラ」というのが
あります。これは「もしも神がお望みになるならば」という意味です。例えば
タクシーに乗って行き先を告げると、イスラム・タクシーの運転手は、「イン
シャーラ」というそうです。そんなことに神を引き合いに出すなんてと考えま
すが、これは隊商を組んで砂漠を旅するさいの危険を避けるために神に祈る昔
からの習慣からきているのです。
 ちなみに「アラブのIBM」といわれる言葉があります。IBMといっても
コンピュータの会社の名前ではなく、Iは上記の「インシャーラ」、Bは「ボ
クラ(明日)」、Mは「マレーシ(気にしない)」という意味なのです。中東
をよく旅する人は誰でも知っている有名な言葉だそうです。イスラム金融――
研究してみる価値があると思います。     ――『月刊アスキー』/07
「STARTUP/世界経済」を参照――              以上

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