『Wii(ウィー)』で快進撃を続ける任天堂/0066号
●ダビデとゴリアテの構図
家電メーカーの巨人といえばソニーですが、そのソニーを任天堂が7月初旬
に株式時価総額で初めて上回ったのです。これは、ソニーの新型ゲーム機「プ
レステーション3」の売れ行きが今ひとつなのに対し、任天堂の「Wii」が
絶好調であることを反映しているといえます。
テレビゲームビジネスの市場規模は、現在300億ドル――約3兆6000
億円に成長していますが、ソニーやマイクロソフトという2大巨人企業に市場
シェアを奪われている現状にあります。その結果、かつてファミコンの生みの
親である任天堂の米国国内におけるゲーム機の売り上げは20年前の半分まで
落ち込んでいたのです。
ソニーやマイクロソフトは、ゲーム機に高性能のグラフィックスチップを搭
載し、高品質な画面表示による迫力ある動作を実現しています。これは、下位
メーカーから見ると大企業による果てしない軍拡競争そのものです。
任天堂はそうした軍拡競争に参戦することなく、可愛く、安価で、今までに
ない新しい技術で、巨人ソニーやマイクロソフトに勝利したことにより、それ
は「ダビデとゴリアテの構図」といわれているのです。
ところで、「ダビテとゴリアテの構図」とは何でしょうか。
古代イスラエル人は、ペリシテ人との戦闘に破れ、その支配下に置かれたこ
とがあるのです。ペリシテ人は鉄の精製に長じ、強力な武器を製造することに
加え、厳しい訓練を施した専門の戦士を養成することによって、強大な軍隊を
持っていたのです。
さて、イスラエルが王政を組織し、ペリシテ人に抵抗するようになる頃、農
民出身の少年ダビデは羊飼いをしていたのです。後のダビデ王です。あるとき
イスラエル領内のユダにまたまたペリシテ人が侵入してきたので、イスラエル
王率いる討伐部隊が出陣したことがあったのです。
ペリシテとイスラエルの両陣営が対峙する中で、ゴリアテという兵士が進み
出て、イスラエル軍に対し、自分と決闘するように挑発したのです。イスラエ
ル兵は皆恐れて、挑戦に応える者がいなかったのです。ダビデ少年は、怒りに
燃え、ゴリアテに自分が立ち向かうと言い出すのです。そこで、イスラエル王
は、ダビデに鎧を着せようとするのですが、鎧も剣も未経験のダビデは、結局
それらの武具を取り外してゴリアテと対決したのです。
身軽になったダビデは、羊飼いとして使い慣れている石投げと滑らかな川石
を持ってゴリアテと戦い、ダビデの投げた石が、ゴリアテの完全防御体制の中
の唯一の穴である眉間に命中し、勝負がついたのです。
●2つの問題点を解決した任天堂の「Wii」
ゲーム機に高性能のグラフィックスチップを搭載し、高品質な画面表示する
のは、まさにペリシテの重武装と同じです。これに正面切って対決しても勝ち
目はない――任天堂は電力をどか食いする高性能チップに対して低電力のチッ
プを使って勝負に出たのです。それもゲーム機本体ではなく、コントローラを
を改革しようと考えたのです。これは、ダビデの使った飛び道具の「石」に匹
敵するものだったといえます。
現在ゲームメーカーの抱えている深刻な悩みには、次の2つがあるといわれ
ます。
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[問題点1]ゲームに興じる年齢には限界があること
[問題点2]高性能化によるゲーム制作費の高騰傾向
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[問題点1]を解決するには、ゲーム人口を広げるしかないのです。そのた
めには、一度もゲームをやったことのない大人の層までゲーム人口を広げる必
要がある――任天堂はこの問題点解決のために携帯ゲーム機「ニンテンドーD
S」を開発します。これが「ブレインエイジ」(大人の能力トレーニング)ソ
フトによって大ヒットし、ゲーム人口の拡大に成功することになります。
[問題点2]はゲームメーカーにとって深刻だったのです。高性能チップを
使うために本体価格が高額になり、販売後に利益率の高いゲームソフトを売る
ことによって損失を穴埋めするしかなかない状況だったのです。
しかし、任天堂は前世代のゲーム機に搭載されていたものと同等のチップを
使って「Wii」のシステムを構築したのです。「Wii」はコントローラを
改革することによって、現実世界でそれを持つの人の動作をゲームの画面に反
映させるというかつてない技術革命を実現したのです。
さらに「Wii」は本体の販売時点で利益が出るよう設計され、そのキラー
アプリである「Wiiスポーツ」を同梱して出荷しているのです。その結果は
上々で、競合他社を上回る売り上げを記録しているのです。
HSBC証券のアナリストであるカルロス・ディマス氏は任天堂について次
のように述べています。
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ゲーム業界ではPER(株価収益率)は平均20倍だが、任天堂株は、現在
2009年3月期のコンセンサス予想利益をベースに30倍超で取引されて
いる。 ――HSBC証券のアナリストのコメント
―――――――――――――――――――――――――――――― 以上
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