いざなぎ景気以来の景気拡大は本物か/0067号
●本当に「いざなぎ景気」を超えたのか
「景気回復を本物にしていかなければいけない。皆さんに実感していただけ
るところまで引っ張っていくのが私の使命だ」(7月31日付朝日新聞)――
これは参院選を通じて安倍首相が国民に訴えていた言葉です。
この安倍首相の主張では「現在の景気回復は本物でない」ということを認め
ていることになります。大企業を中心に既に景気は回復しているが、経済成長
政策を今後も継続させ、国民がそれを実感できるようにするといっているので
す。本当に景気は首相のいうように拡大していくのでしょうか。
以下、『実感なき景気回復に潜む金融恐慌の罠』(ダイヤモンド社)の著者
で文京女子大学院経営学研究科教授、菊池英博氏の主張を基にしてこの問題を
考えてみることにします。
2006年11月22日発表の内閣府月例報告では、現在の経済の状況を次
のように報じています。
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2006年10月時点での日本の経済成長(実質成長)は、2002年1月
から57ヶ月継続しており、「いざなぎ景気」以来の景気拡大である。
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「いざなぎ景気」というのは、1965年11月から1970年7月までの
4年9ヶ月連続して継続した景気上昇期を指しています。しかし、現在の景気
回復は「いざなぎ景気」とは似て非なるものです。内容が大きく異っているか
らです。そこには大きなカラクリがあるように思います。
「いざなぎ景気」では、名目GDP成長率は年平均で17.3%、GDPデ
フレーター(物価の総合的指数)はプラスで5.7%、名目成長率からGDP
デフレーターを引いた実質GDP成長率は11.6%だったのです。つまり、
デフレではなかったし、この間毎年減税をしているのですが、税収は2.4倍
も増加しているのです。これなら景気を実感することができるはずです。
名目GDPというのは、われわれの額面給与と企業の税引き前利益の合計額
にほぼ等しいのです。この名目GDPから物価の変動部分を調整したものが実
質GDPであり、物価の変動部分はGDPデフレーターというものであらわさ
れます。これがマイナスであると、デフレということになります。
このことをアタマに置いて2000年〜2006年の景気状況を見ると、名
目GDP成長率は年平均で0.8%、GDPデフレーターはマイナス7.9%
つまり、デフレなのです。ところが、名目成長率からマイナスのGDPデフレ
ーターを引くと、マイナスとマイナスはプラスですから、実質GDP成長率は
計算上プラスになるのです。先の内閣府月例報告ではこの状態が2002年1
月から57ヶ月続いているといっているに過ぎないのです。
いざなぎ景気のときは、毎年減税してしかも税収は2.4倍増えているのに
現在の景気回復では減税はおろか定率減税の廃止などで実質増税を行い、税収
は2006年度506兆円と2000年度の508兆円のレベルに戻ったに過
ぎないのです。内容が違い過ぎるといえます。
●15兆円減少した可処分所得――日本の国際的評価も急落
「いざなぎ景気以来の景気拡大」といわれる今回の景気回復を家計の実感か
ら見ることにします。内閣府の統計によると、国民の手取り所得である可処分
所得は、2000年度に298兆円あったのです。しかし、2005年度には
283兆円、5年間で15兆円、毎年3兆円ずつ減ったことになります。
これに対して家計の貯蓄額は2000年度に23兆円あったのですが、5年
後の2005年には6兆円になっているのです。5年間で17兆円も減ってい
るのです。毎年3.4兆円減少したことになります。つまり、国民は可処分所
得の減少分を貯金を取り崩して対応したことを示しています。
これに伴い貯蓄率は2000年度に7.6%あったのに、2005年度には
2.3%になり、5.3%も低下しています。ちなみに貯蓄率とは、可処分所
得に対する預貯金の比率のことです。
この状況で景気は回復し、拡大・成長しつつあるといわれても首を傾げざる
を得ないでしょう。デフレの下での実質成長率プラスは、真の意味の景気回復
とはいえないのです。まず、やるべきはデフレの克服であるのに、政府は現在
の経済がデフレであることをぼかして、経済成長・拡大といっているのです。
しかし、2006年も依然としてGDPデフレーターはマイナスであり、デフ
レ下にあるのです。
もうひとつあまり新聞や雑誌などで取り上げない大きな問題があります。そ
れは「一人当たり名目GDPの国際順位」です。1994年度には日本は1位
だったのですが、現在は何位かご存知でしょうか。
まず、橋本財政改革の失敗で7位に転落したのですが、その後の小渕政権の
積極財政で2位に戻しています。それを2001年からの小泉内閣の構造改革
の失敗で、2005年度には14位に急落してしまったのです。これによって
日本の国際的評価も急落しています。
日本経済が現在の状況にあるのは、小泉デフレ政策で民間投資が減少し、デ
フレのときに必要な公共投資を減少させたことにあります。そのため、名目G
DPがまったく増えなかったのが原因です。日本ではなぜか「公共投資=悪」
という図式が出来上がってしまっているのです。 以上
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