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2007年08月13日

日本の自殺率はなぜ高いのか/0068号

●日本の自殺率の高いのは文化に関係がある

 年間3万人、1日90人、G8(主要8ヶ国)ではロシアに次いで2位、米
国の2倍、英国の3倍――これは日本の自殺者に関する数値です。G8の順位
ではなく、自殺率のベスト10を示すと次のようになります。自殺率は、その
他の死因別死亡率と同様に、人口10万人当たりの死亡者数で比較されること
になっています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
                          人/10万人
    第 1位  リトアニア  ・・・・・・・・・・ 44.7
    第 2位  ロシア    ・・・・・・・・・・ 38.7
    第 3位  ベラルーシ  ・・・・・・・・・・ 33.2
    第 4位  ウクライナ  ・・・・・・・・・・ 29.6
    第 5位  カザフスタン ・・・・・・・・・・ 28.8
    第 6位  ラトビア   ・・・・・・・・・・ 28.6
    第 7位  ハンガリー  ・・・・・・・・・・ 28.0
    第 8位  エストニア  ・・・・・・・・・・ 27.3
    第 9位  スロベニア  ・・・・・・・・・・ 27.1
    第10位  日本     ・・・・・・・・・・ 24.1
         ――WHO/自殺率国際比較より/2004年9月
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 これで見ると明らかなように、日本は国内の混乱が続く体制移行国に次いで
高い自殺率の国ということになります。先進国では、日本に次いで自殺率が高
いのはフランスの19位、ドイツの28位、カナダの40位、米国の46位、
英国の57位、イタリアの59位となっています。したがって、経済大国日本
の10位は、明らかに異常であるといえます。
 なぜ、日本はこのように自殺率が高いのでしょうか。
 日本の自殺率の高さについては、WHO精神保健部のホセ・ベルトロテ博士
は、それは日本の文化に関係があるとして、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 日本では、自殺が文化の一部になっているように見える。直接の原因は過労
 や失業、倒産、いじめなどだが、自殺によって自身の名誉を守る、責任を取
 る、といった倫理規範として自殺がとらえられている。これは他のアジア諸
 国やキューバでもみられる傾向である。    ――ホセ・ベルトロテ博士
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

●国としての自殺対策は緒についたばかり

 日本人の自殺が多くなったのは、1990年代の後半からです。その時期に
おいて日本では、自己責任であるとか、額に汗して努力した人が報われるとい
う考え方――「新自由主義」が浸透し始めていたのです。その考え方を構造改
革として推進したのが小泉政権です。
 規制緩和、社会保障費の切り下げ、公共投資の削減など、今までの遅れを取
り戻そうと一気にやった結果、社会基盤が崩れてしまったのです。これによっ
てもともと弱かった地域社会(地方)は一層弱体化することになります。
 具体的には、企業のリストラや非正規雇用の増大などがあげられます。その
結果、大企業の収益は好調に転じましたが、他方それは多くの失業者を生み、
社会に存在するさまざまなセーフティーネットが十分機能しなくなって、自殺
者を生み出す原因のひとつになったのです。
 このように自殺の増加は社会の問題であり、国としてきちんとした対策を立
てる必要があったのですが、それが大きく遅れたのです。それは、ホセ・ベル
トロテ博士が指摘したように、日本には「世間体」といわれるものがあって、
これが目に見えない規制力として、組織や集団、個人の中に根を張っているの
です。そのため、自殺の問題は社会の問題として解決すべきであるのに、今ま
で個人の問題となってしまっていたというのです。
 「ライフリンク」という自殺問題に取り組むNPOがあります。その代表を
務める清水康之氏はこれに関連して次のようにいっています。清水氏は元NH
Kのディレクターであり、自殺で家族を亡くした遺族を仕事で取材しているう
ちに自殺問題に国や行政が取り組む必要性を痛感して「ライフリンク」を立ち
上げたのだといいます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 自殺者が急増した98年、特に増えたのが中高年男性でした。98年といえ
 ば、大量リストラ時代に入り、企業の連鎖倒産が相次いだ時期。失業や借金
 でつらい目に遭った人がいかに多かったかということです。しかし、問題は
 その後も高止まり状態が続いたのに公的な対策が取られてこなかったこと。
 結局、勝手に死んでいっているんだろうと放置されてきたのです。
             ――『ダカーポ』2007.8.15号/612
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 このライフリンクをはじめとする民間団体の働きかけによって、「自殺対策
基本法」が参議院の超党派議員の議員立法によって成立したのは、2006年
6月のことです。これによって、国としての自殺対策はやっとスタートライン
に立ったばかりです。美しい国は遠いようです。           以上

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