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2007年08月27日

新しい世紀のもの造りの原理/ウィキノミクス/0070号

●話題となりつつある「ウィキノミクス」

 セカンドライフが徐々に姿をあらわしていることと平行して、最近「ウィキ
ノミクス」という言葉をよく聞くようになってきています。この「ウィキノミ
クス」――次の話題の新刊書の題名なのです。
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    ドンタプスコット/アンソニー・D・ウィリアムズ著/井口耕二訳
  『ウィキノミクス/マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ』
                          ――日経BP社刊
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 セカンドライフのような世界がリアルの世界に根づくには、いわゆるWeb
2.0が完全に定着する必要があります。なぜなら、セカンドライフは明らか
にWeb3.0的世界の象徴であるからです。しかし、本書は、単なるWeb
2.0の解説本ではなく、Web2.0化が進む社会において企業の開発・生
産に、いまどのような変化が起きつつあるのかについて、多くの事例をあげて
解説しています。これは、オープンソース、コミュニティ、情報の共有などが
もはやネットの世界だけの話ではないことを示しているのです。
 著者は、ウィキノミクスがどういうものであるかについて説明する前に、あ
る鉱山会社、ゴールドコープの社の話からはじめるのです。
 カナダのトロントにある倒産寸前の鉱山会社であるゴールドコープ社は、普
通であれば門外不出の、自分たちでは掘り当てられない金鉱の全地質データを
ネット上で全部公開したのです。
 そうすると、驚くなかれ、世界中15ヶ国1000人以上から110ヶ所の
鉱脈予測(存在の示唆)が寄せられたのです。その情報にしたがって同社が実
際に発掘してみたところ、44ヶ所で約250トンの金が発見されたのです。
 これは、「ゴールドコープ・チャレンジ」として、21世紀初頭のウソのよ
うな本当の話なのですが、これはWebを通じた全地球レベルの無数の人たち
との協業――コラボレーションの重要性を教える話として、リナックス開発の
話と一緒に覚えておいて損はない事例です。「ウィキノミクス」とはそういう
大規模なコラボレーションのことをいうのです。
 ちなみに「ウィキノミクス」という新語は、本書ではそういう説明はないも
のの、次のように推測している人がいるので紹介しておきます。
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       「Wiki+economics」・・・「ウィキ経済学」
       「Wiki+nomics」  ・・・「ウィキ秩 序」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 「ノモス」はギリシア語であり、ノモスの語感をそのまま訳せば「ウィキ秩
序」となります。「Wiki」は2007年5月14日の「INTEC FORUM」 第55
号を参照してください。

●「ウィキノミクス」の4つの基本原理

 「ウィキノミクス」には、次の4つの基本原理があります。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
    1.オープン性 ・・・・・・ 情報のオープンソース化
    2.ピアリング ・・・・・・ 階層構造を持たない組織
    3.共有 ・・・・・・・・・ 知財を公共のものにする
    4.グローバルな行動 ・・・ 組織の内外との協調姿勢
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 現在起きている現象は、従来の静的なサイト(ホームページ)は廃れ、ブログ
やSNSをはじめとする参加型のコミュニティに取って代わられようとしてい
るのです。経済活動も、自分の庭(ウェブサイト)を造ってコンテンツを囲い
込み、それを守ろうとする従来のスタイルは忌避され、企業は大きく変わろう
としています。
 本書では、多くの有名企業の事例がていねいな取材によって紹介されていま
す。P&Gを例にとると、同社は巨大な研究・開発陣を抱えているものの、も
はやすべての製品の開発を社内で賄うことは困難になっているといいます。
 そこで同社は製品・開発のオープン市場「アイディアゴラ」を活用し、社外
からイノベーションを調達できるようになったといいます。アイデアゴラは、
優秀な人材がプールされている人材市場のことで、米国企業がこうした優秀な
人材の世界的プールを活用している様子が本書で紹介されているのです。
 具体的には、P&Gでは、新製品のうち社外調達率は2000年の15%か
ら、現在35%までに拡大しており、製品開発構想の実に45%が社外のアイ
ディアを基にしたものであるといいます。
 ボーイングは、新型機787を部品の開発まで思いきってサプライヤーに任
せることで、きわめて短期間で同機を市場に送ることができています。もはや
何もかもすべて自社でやる時代ではないのです。
 経営者にとって最大の教訓となるのは、一体型で閉鎖的、社内にばかり目を
向ける企業は死にゆく運命にあるということです。どのような業界であれ、ま
た、大企業であれ、小企業であれ、社内の能力と小規模なパートナーシップだ
けでは、もう、成長と革新に対する市場の要求に応えることは不可能な時代と
なったということが本書を読むとよくわかります。          以上

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