原油価格を押し上げている4つの要因/原油問題③/0095号
●石油の便利さはその「液体」という性質にある
あまり身近にあり過ぎて、その便利さを実感していないもののひとつに石油
があります。石油の利点は何といってもそれが「液体」であるという点にあり
ます。なぜかというと、「液体」であれば輸送に便利であるからです。
同じ炭素と水素の化合物である天然ガスと比較してみればよくわかります。
石油はポリエチレンのタンクに入れて誰でも簡単に持ち運びができますが、天
然ガスは「気体」であって輸送は非常に難しいからです。
発電所の発電機は、原子力をはじめ石炭、天然ガス、風力、水力などさまざ
まなエネルギーの利用が可能です。しかし、現在、人類が持つ技術では自動車
や飛行機などの輸送用機械で使われる燃料は石油だけです。石炭ジェット機や
原子力自動車などというものは、出現していないのです。
日本では戦時中に石油が不足し、木炭を焚いて自動車を走らせましたが、こ
れなどは大変な発明であったといえるでしょう。もっとも最近では、電気自動
車の実用化が進みつつはありますが、何といっても、その便利さにおいて、石
油以上のものはないのです。
その石油製品のひとつであるガソリンは、既に述べたように、原油を蒸留し
たときに、一番上に上昇してくる最も軽い揮発油であり、無色・透明の液体な
のです。しかし、ガソリンは爆発しやすい性質があり、灯油と間違えないよう
にオレンジ色に着色してあるのです。
1886年に、ドイツのゴットフリープ・ダイムラーとカール・ベンツがガ
ソリンエンジンの開発に成功し、さらに1908年にガソリンエンジンを利用
して米国のヘンリー・フォードがT型フォードという安くて頑丈な大衆車の開
発に成功したことによって、世界中にモータリゼーションの波が押し寄せたの
です。それと同時にガソリンの利用価値が一気に上昇することになります。
●原油価格を押し上げている4つの要因
ところで、ガソリンの価格はどのように決まるのでしょうか。
ガソリンは、既に述べたように原油を採取して、それを精製して製造するの
です。したがって、ガソリンの価格は、次の5つの変動費用によって左右され
ることになります。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ガソリン価格=
(原油調達コスト+原油輸送費+精製コスト+物流コスト+販売コスト)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
これによると、現在のように「原油調達コスト」が急上昇すると、ガソリン
価格は高騰することになります。現在、日本のレギュラーガソリンの販売価格
は、1リットル当り150円を超えているのです。
しかし、日本のガソリン価格はもともと高いのです。日本人の感覚では、レ
ギュラーガソリン1リットル当り100〜120円といったところであり、と
くに高いと感じてはいなかったはずです。
現在は違いますが、少し前まで米国のレギュラーガソリン価格は1ガロン当
り1ドル〜2ドルに過ぎないのです。これを日本円に換算すると、1リットル
当り30〜60円――これが米国人のガソリン価格の常識なのです。日本の半
額以下ということです。
とにかく日本は、ガソリンやビールという日常ありふれた製品の価格が米国
に比べて高いのです。政府の調査によると、ガソリンはニューヨークの3倍、
ビールも3倍ということです。それは製品の半分が税金だからです。原油価格
が現在のように高騰していなくても非常に価格は高いのです。
それでは、現在の原油価格を押し上げている要因とは何でしょうか。その要
因には次の4つがあります。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
1.新興経済発展諸国(BRICsなど)による石油需要の増大
2.中東情勢の先行き不透明感に伴う地政学リスクの高まりなど
3.米国最大油田地帯の瓦解――ブルドーベイ油田生産中止など
4.需要増を見込みニューヨーク原油先物市場への投機資金流入
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
もともと有限の資源である石油に対して需要が増大すれば価格が上昇するの
は当然のことです。とくに顕著な経済成長を続ける新興経済発展諸国、なかで
もBRICs――ブラジル、ロシア、インド、中国による石油需要は増大して
いるのです。
ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のWIT原油価格は、
イラン核開発問題、イスラエルによるレバノン空爆などの中東情勢の先行き不
透明感によって高騰していたのです。ここで地政学リスクの地政学とは、19
世紀の欧州におけるパワーポリティックス(権力政治)の概念のことであり、
地理的に隣接している国同士の領土拡大紛争を研究する学問のことです。そう
いう先行き不透明感があると、原油価格は高騰するのです。
このような状況のときに2006年8月に米国最大の油田であるブルドーベ
イ油田が生産中止を発表したのです。これは投機筋に格好の原油先物買いの材
料を与えたかたちとなり、一気にニューヨークの原油先物市場に投資資金を投
入してきたのです。これらの4つが原油高騰の要因なのです。 以上
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