1バレル=100ドルになった理由/原油問題④/0096号
●世界三大指標原油というものがある
原油の価格はどのように決まるのでしょうか。
一般論としては、原油供給量が不足すると、原油価格が上がることになりま
す。原油供給量の遅れは、産油国の新規油田への投資の遅れが原因で起こりま
すが、OPEC(石油輸出国機構)による原油生産は今のところ順調です。
しかし、原油の需給関係をマクロで見た場合、必ずしも需給は逼迫していな
いのです。石油が余っているかどうかを見るには、各国の原油在庫を調べてみ
ればわかります。
米国の原油在庫は、2007年4月時点において、3億4000万バレルと
かなり拡張しています。OECD(経済協力開発機構)諸国の原油在庫水準は
2007年4月時点で、石油製品を含めた原油の在庫量は27億バレルであり
この水準は、原油価格が1バレル10ドル台で低迷した1990年後半に匹敵
するものです。このように、現状における原油の需給関係は、むしろ供給過剰
なのです。
それでは、原油が供給過剰なのに、なぜ原油価格は高騰しているのでしょう
か。そこが原油の価格決定のメカニズムの複雑なところであり、簡単にいうな
ら、国際石油市場という名の「原油の価格を上げるカラクリ」が働いているか
らなのです。
世界の原油市況の代表的な銘柄には、次の3つがあります。これらは、世界
三大指標原油といわれています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
1.NYMEXで取引されているWTI原油
2.ロンドンのICEで取引されている北海ブレント原油
3.TOCOMで取引されているドバイ原油
注:NYMEX ・・ ニューヨーク・マーカンタイル取引所
ICE ・・・・ アイス先物取引所、旧IPE
TOCOM ・・ 東京工業品取引所
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
つまり、これら3つの原油先物価格が北米、欧州、アジア各市場において、
原油先物価格のベンチマークになっているのです。なかでもWTI原油が現在
マーカーオイル(指標原油)として、北米市場だけでなく、世界の原油先物価
格のベンチマークとなっているのです。
原油価格は、各国の市場が開く時間と原油の性質によって影響を受けます。
まず、NYMEXで決定した原油価格が東京工業品取引所で扱っているドバイ
原油価格に影響し、さらにロンドンICE取引所での北海ブレント原油価格に
影響する――そういう仕組みが働いているのです。
これに加えてWTI原油は、原油の性質の価値が高いため、原油先物価格の
世界標準となっているのです。原油の性質の価値が高いとは、硫黄分が少なく
ガソリンなどが多く取れる軽質であることを意味します。WTI原油は、北海
ブレント原油やドバイ原油に比べて軽質なのです。
●なぜ、1バレル=100ドルになったのか
このように世界の指標原油となっているWTI原油の生産量は日量30万バ
レル程度であり、世界の石油消費量の日量約8500万バレルのうち、わずか
0.4%を占めるに過ぎないのです。
なぜ、そんな少量の原油が世界の原油価格を動かしているのでしょうか。
それは、NYMEXには世界中の投機家や投資家が集まり、WTI原油先物
の一日の取引高が平均して3億バレル――一日の石油実需の3倍以上に達して
いるからです。つまり、実際に取引されるWTI原油は日量30万バレルであ
っても、ゆうにその900倍以上の先物取引によって、世界の原油価格形成に
大きな影響を与えているのです。
ところで、2007年には先物取引量は1日当たり4億8000万バレルに
達したのですが、この動きが今年に入ってからの1バレル=100ドルという
原油価格の高騰につながってきているのです。
それは、年金ファンドなどの中長期の巨額の運用資金が原油市場では小さな
シェアの銘柄――WTI原油に対して投資されたことが主要な原因なのです。
こういうことは今までなかったことなのです。
WTI原油先物市場の時価総額は、現在の原油水準で約14兆円〜15兆円
――時価総額が400兆円〜500兆円の東証と比べるとごくわずかです。し
たがって、そこに年金ファンドのような中長期資金が1兆円〜2兆円入っただ
けでもマーケットは大きく変動してしまうわけです。
それでは、どうして年金ファンドのような巨額な投資資金が原油に投資され
るようになったのでしょうか。
それは、生産量が頭打ちになっているのではないかとされる原油は、今後価
格が上がることはあっても、下がる要素が少ないからです。つまり、儲かる可
能性が高いのです。そうなると、儲かる投資先を探している世界中のさまざま
な投機資金は原油先物市場にどっと流れ込み、原油価格を押し上げ、そのまま
高止まりしてしまうことになります。原油高騰について、「これはバブルであ
り、いずれはじける」という見方がありますが、必ずしもそうはならないので
す。石油のテーマは次回まで続きます。 以上
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