なぜ、日本人の英語は通じないのか/その2/0102号
●英語は「発声技巧的言語」/日本語は「推測言語」
日本は世界一英会話学校の多い国だそうです。これは、裏返すと、日本人は
英語が上手でない国民であることを意味しています。どうして、日本人は英語
がうまくないのでしょうか。
前回ご紹介した脳科学者の池谷裕二氏によると、それは日本語と英語の根本
的な違いからくるもので、ある程度は仕方がないものといっています。池谷氏
は、日本語と英語には次の2つの根本的な違いがあるといっています。
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1.英語は発音数の多い言語であり、日本語は発音数の少ない言語である
2.英語は「発声技巧言語」であるが、日本語は「推測言語」であること
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英語は豊富な発音数を誇る言語なのです。最も有名な例は「L」と「R」と
いう子音です。日本語には「L」も「R」も存在しないので、この発音のでき
る日本人は少ないといわれます。それに「La」と「Ra」をあらわす日本語とし
ては「ラ」しか存在しないのです。
こういう例は他にもたくさんあります。例えば、英語には3種類の発音があ
るのに、日本語には1種類しかないという例です。
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「Si」「Shi」「Thi」 ・・・ 「シ」
「Di」「Ji」 「Zi」 ・・・ 「ジ」
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英米人による英語のスピーチを聞くと、喉から出す「有声音」以外に舌や唇
や鼻を使った次のような乾燥した音を頻繁に出していることがわかります。
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「shシュ」「chチッ」「tsツッ」
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これらは、日本人にとっては単なる雑音にしか聞こえないのですが、彼らは
それらを利用して言葉を見事に使い分けているのです。したがって、英語とは
「発声技巧言語」であるといえるのです。無数にある子音の組み合わせを巧み
に発音するからです。しかし、そういう言葉が日本語に存在しないため、日本
人の英語学習にとって大きな壁になるのです。
これに対して日本語は同じ発音で別の意味をあらわす言葉が非常に多いので
す。例を上げてみましょう。
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加工、下降、書こう、河口、仮構、掻こう、花香、囲う
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これらはすべて「かこう」と発音しますが、それぞれがどれに対応している
のかを逐一判断しながら、会話をしているのです。「隅田川のかこうまでかこ
うした」というのであれば、最初の「かこう」は「河口」、次は「下降」であ
ると判断するのです。したがって、日本語は「推測言語」といえます。
●9歳まで英語環境で生活するのは意義がある
「可塑性(かそせい)」という言葉があります。可塑性とは「臨機応変に能力
が変わりうる」という意味です。自転車に乗るには、脳の中に自転車を操縦す
るための神経回路ができる必要があります。これは何度も練習すれば自然にそ
ういう神経回路が作られます。これが可塑性です。
運動制御系の可塑性には年齢の制限はないのですが、言語を習得するための
可塑性は年齢とともに衰えることがわかっています。一般に言語を覚える能力
は「8歳まで」といわれているのです。教育の現場では「9歳の壁」と呼ばれ
る有名な脳の変化です。
日本語を聞いて育った子供は、脳の中に5種類の母音「アイウエオ」を聞き
分ける専門回路ができますが、これは9歳以降にほとんど変わることはないの
です。こうなってしまうと、日本語の3倍の発音数を持つ英語を処理すること
は困難化します。これについて、池谷氏は次のようにいっています。
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皆さんが幼いころ、日本語しか聞いてこなかったとしたら、英語力をネイテ
ィブ並みに高めようという期待はおそらく叶わないでしょう。脳生理の観点
から提言すれば、それは不可能です。 ――池谷裕二著
『怖いくらい通じるカタカナ英語の法則』より/BLUE BACKS−B1574
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しかし、努力によって発声の能力は高めることができます。なぜなら、声は
喉と舌と唇の協調した動きによって作れられますが、これも運動系であるから
です。ところがこの練習がやっかいなのは、いかに正しく発声しても自分の耳
ではネイティブには聞こえないことです。脳の中に日本語を聞き取る専門回路
ができ上がってしまっているからです。つまり、発音練習の成果を自分の耳で
は確かめられないので、英米人に繰り返し聞いてもらってその進捗度合いを確
かめるしかないのです。だから、日本人にとって英語の習得は困難である――
このように池谷氏はいうのです。
次回は最終回として、池谷氏のネイティブ風に聞こえるカタカナ英語の原則
についてご紹介します。 以上
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