ビジョナリー・カンパニーを解明する/その4/0109号
●社員の着想を大きく育てる社風
ジェームズ・コリンズとジェリー・ポラスがビジョナリー・カンパニーの社
史を調べていったとき、各社で成功した動きのほとんどが戦略的計画に基づく
ものでなく、実験、試行錯誤、臨機応変によるものであり、なかには偶然の産
物そのものであることを発見して驚いています。
そのひとつの例がジョンソン&ジョンソンにあります。1890年、当時ジ
ョンソン&ジョンソンは消毒ガーゼと絆創膏が主力商品の会社だったのです。
あるとき、薬用絆創膏のいくつかで、患者の皮膚が炎症を起こしたという抗議
の手紙をある医師から受け取ったのです。
フレッド・キルマーという研究開発担当の役員は、直ちにイタリア風のスキ
ン・パウダーをこの医師に送ってクレーム処理を行ったのです。そのとき、他
の絆創膏でも同じ症状が起こる可能性があると考えて、そのパウダーを小さな
缶に入れて絆創膏と同封したらどうかと会社に提案したところOKが出たので
それを実行に移したのです。
そうしたところ意外なことに顧客から「パウダーを売ってくれ」という注文
が相次いだのです。そこで、ジョンソン&ジョンソンはパウダーを独立商品と
して売ったところ、好調な売れ行きを示し、世界中の地域で家庭用の常備薬と
して有名になったというのです。
ジョンソン&ジョンソンにはもうひとつ有名な話があります。1920年の
こと、同社の社員アール・ディクソンの妻が何度も包丁で指を傷つけるので、
ディクソンは外科用のテープに小さなガーゼを貼りつけ、特製のカバーをつけ
て傷にくっつかない特製の絆創膏を作ったのです。
この話を聞いた同社のマーケティング部門がその製品を市場で試してみるこ
とにしたのです。はじめは良い結果は出ず、製品に何回も改良を加えて辛抱強
く実験を重ねた結果、世界中で売れるヒット製品になったのです。今やどこの
家庭にもある「バンドエイド」はこうして生まれたのです。
●実験・研究・試行錯誤して多角化を目指す企業文化
ジェームズ・コリンズとジェリー・ポラスがヒューレッド・パッカードのビ
ル・ヒューレッドとインタビューしたとき、彼に「とくに尊敬し、手本にして
いる企業があるか」と質問したところ、次の答えが返ってきたのです。
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3Mだ。これは断言できる。3Mが次にどう動くか、だれにもわからない。
本当にすごいのは、3M自身、次にどう動くのかが、たぶんわかっていない
ことだ。しかし、次の動きを正確に予想できなくても、同社が今後も成功を
続けていくことは、確実だといえる。 ――ビル・ヒューレッド
ジェームズ・C・コリンズ/ジェリー・I・ポラス著/山岡洋一訳
『ビジョナリー・カンパニー』/日経BP出版センター刊
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3M――ミネソタ・マイニング&マニュファクチャリングは、設立早々に事
業に失敗しています。設立のさいの事業目的は「研磨材原料の採掘」なのです
が、採掘した研磨材原料の品質が悪く、大失敗に終わり、ほとんど致命的な打
撃を受けたのです。
そこで何でもいいから会社が生き残れる事業はないかと、役員と従業員たち
は、必死になって解決策を話し合ったのです。その結果、ある投資家の意見を
入れて、鉱業をあきらめ、研磨材の製造――具体的にはサンドペーパー事業に
変更することを決断したのです。1904年のことです。
1914年にウィリアム・マックナイトという30歳にもならない若者が3
Mの総支配人になってから3Mは変化を始めるのです。彼は、会計士から営業
マンに転じた変わり者であり、研究熱心な若者だったのです。
彼は会社の倉庫を利用して研究室を作り、500ドルを投資して接着剤用の
水槽を購入し、さまざまな実験と試験を行いはじめたのです。そのひとつの成
果として、研磨布「スリー・エム・アイト」を発表したのです。この新製品は
大ヒットし、75年経った現在でも同社の製品リストに名を連ねています。こ
の製品の成功で同社は設立以来はじめて配当を払えるようになったのです。
そして3Mの名前を世界的に有名にするヒット商品――スコッチ・セロファ
ン・テープが誕生したのですが、これはマックナイトの作った3Mの企業文化
が花開いた結果なのです。
ジョンソン&ジョンソンにしても3Mにしても変化に対する企業の対応は、
実にフレキシブルであるといえます。それは経営者が役員や従業員のアイデア
に真摯に耳を傾け、少しでも可能性のあるものについては、研究と実験を積み
重ねて辛抱強くその実現を目指すというところから来ています。
その結果、進出できる分野にはチャンスがあれば積極的に乗り出し、タマゴ
を一つのカゴに入れて企業を危なくさせることを避けようとしています。そう
いうものをビジョナリー・カンパニーは持っているのです。
「独創的なアイデアを持っている人の意見に耳を傾けよう。そのアイデアが
はじめは、どんなにばかげていると思えたとしても。激励しよう。ケチをつけ
るな。アイデアを出すよう、皆に激励しよう」――これは、3Mのマックナイ
トの考え方を具現した同社のスローガンです。ビジョナリー・カンパニーは何
らかのかたちで、いずれもこれに近い理念を持っているのです。 以上
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