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2008年06月16日

ビジョナリー・カンパニーを解明する/その6/最終回/0111号

●ビジョナリー・カンパニーは決して満足しない

 ビジョナリー・カンパニーになって、その地位を維持し向上させて行くには
何が必要でしょうか。ビジョナリー・カンパニーにとって一番大切なものは、
次の問いであるというのです。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
      明日にはどうすれば、今日よりうまくやれるか
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ビジョナリー・カンパニーが他の企業に比べて飛び抜けた地位を保っている
のは、将来を見通す力に優れているためでも、成功のための特別な秘密がある
わけでもなく、「自分自身に対する要求がきわめて高い」というきわめて単純
な事実によるのです。つまり、決して満足しないという精神です。
 『ビジョナリー・カンパニー』の著者、コリンズ/ポラスはビジョナリー・
カンパニーには「不断の改善」が根付いているとして、次のように述べている
のです。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ビジョナリー・カンパニーでは、不断の改善がしっかりとした仕組みに基づ
 いて、日々の行動に一本筋を通す習慣として組織のすみずみにまで染み込ん
 でおり、現状をいつも不十分と感じるようにする具体的な仕組みによって、
 それを強化している。(中略)要するに、明日には今日よりも自社が強くな
 るように、可能なかぎり、すべてのことを行っているのである。
     ジェームズ・C・コリンズ/ジェリー・I・ポラス著/山岡洋一訳
         『ビジョナリー・カンパニー』/日経BP出版センター刊
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 企業経営は、その企業が他よりも一頭地抜ける存在になり、それが誰の目に
も明らかになったときが一番危険であるといわれます。幹部や従業員が安心し
て贅肉がつき、自己満足に陥る可能性があるからです。
 P&G(プロクター&ギャンブル)のCEOであるリチャード・デブリーは
その危険をつねに感じていたのです。そういうときに、マーケティング・マネ
ジャーのニール・マッケルロイが斬新な提案を持ってきたのです。その提案は
デブリーCEOの意に沿うものであったので、それに賛成し、早速実施に移し
たのです。1931年のことです。
 それは「P&Gのブランド同士が直接競争する」という提案だったのです。
P&Gは最高の人材を抱え、最高の製品を持ち、最高のマーケティング組織を
持っている――だったら、P&Gの最高のもの同士を戦わさせればいいじゃな
いかという提案なのです。
 そのようなことは既にどこでもやっているというかも知れませんが、P&G
がそれをやったのは1930年代であることを考慮する必要があります。この
時期において、既にそのことに気付いていたというのは凄いことなのです。
 このようにビジョナリー・カンパニーは、何からのかたちで「現状を不十分
と感じるようにする仕組み」を持っているのです。この精神は、「勝ちて驕ら
ず」の精神に通じるものがあります。

●社内に不安と緊張をつくり出す諸制度がある

 「ワークアウト」――ゼネラル・エレクトリック(GE)でやっている集会
の名称です。従業員がグループごとに集会を開き、改善の提案を話し合って、
具体的な提案をまとめます。管理職は議論に加わることはできず、全員の前で
提案について回答を要求されます。
 管理職は、逃げることも、隠れることも、回答をのばすことはできず、その
場で回答が求められるのです。
 ボーイングでは事業計画策定に当って、「敵の視点」という方法を編み出し
ています。この方法では、何人かの管理職に、競争相手の立場に立って、ボー
イングを壊滅させる戦略を立案する任務を与えるのです。ボーイングの弱点は
どこにあるか、どのように攻めるか、どの市場なら簡単に進出できるか――敵
の視点から徹底的にボーイングを壊滅させる戦略を考えさせるのです。
 ラジオを製造・販売するノードストロームでは、SPH(一時間当たりの売
り上げ)のランキングを発表しています。このランキングは同僚との比較で自
己の評価を図るものになっています。SPHには、どの金額に達すればよいと
いう基準がないので、上位にランクされても安心はできないのです。
 ヒューレッド・パッカード(HP)でも社員をランク付けする伝統を持って
いるのです。管理職が集まって会議を開き、部門ごとのランキングを決めるの
です。これによって、部門ごとに最上位から最下位までのランキングが公表さ
れるのです。
 これらはいずれも社内に安心感が広がるのを抑え、緊張感を醸成するイベン
トであり、制度です。ビジョナリー・カンパニーのように企業規模が大きくな
り、歴史のある伝統的な会社になると、どうしても社員は「ウチの会社は大丈
夫だ」との安心感が起こり、緊張感が失われ、それが業績に影響してくるもの
です。それを何とかして防ぐというのがこれらの方法なのです。
 ビョナリー・カンパニーについて6回にわたりご紹介しましたが、精読する
方のある本であると考えます。                   以上

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